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中編 洒落にならない怖い話

ツナガリ【ゆっくり朗読】2900

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近所に家族ぐるみで懇意にしてもらってる、神職の一家がある。

13 本当にあった怖い名無し:2010/03/25(木) 00:04:28 ID:DPDXOqQS0

その一家は、ある神社の神職一家の分家にあたり、本家とは別の神社を代々受け継いでいる。

ウチも住んでいる辺りでは、かなりの歴史がある旧家の分家で、そこの神職一家が、非常に気さくで人当たりの良い人達ばかりということもあって、その神職一家と非常に仲良くさせてもらってる。

最近そこの次男清助さん(三十代半ば)に聞いた話。

なお、よくわかんなかった言葉とかは、後でググったりして補足してる。

最近新車を買って、そこの神社で交通安全祈願をしてもらった時のこと。

その後に、社務所で事務仕事してた清助さんに声をかけて、世間話をしていた。

「清助さんって、今は事務方メインの仕事されてますけど、昔は祭事とかお祓いとかされてたんでしょ?もの凄い悪霊を祓ったことがあるみたいな感じの、怖い話とかってないですか?」

「確かにお祓いもしてたけど、まず何かに憑かれてる人が来ること自体がないからね」

「どういうことです?」

「普通は今日の君みたいに、悪いことが起きませんように、ってことで厄除けに来るんだよ。何かに憑かれてるようだから祓って欲しい、と言って来る人自体がすごく稀だし、しかもそう言ってる人も、大体が思い込みの場合が多いからね。知ってる限りでは、そういう人が来たことは一度も無いよ。本家には極稀に来るらしいけど」

「思い込みですか……じゃあ、怖い話ってそうそうあるわけじゃないんですね」

「お祓いじゃないけど、ホントに怖い体験をしたのは一回だけだね」

「え?あるんですか。どんな幽霊だったんです?」

「いやいや、所謂幽霊なんぞだったら大して怖くないよ。天神様や大魔縁とも呼ばれた、崇徳天皇首塚で有名な将門公みたいに、神格化までされてるような例外はあるけど」

「それじゃあ、一体何が相手だったんですか?」

「ここではちょっとあれだから、場所を変えようか」

そう言って清助さんは、神社の境内から少し外れた、山際のベンチまで俺を連れてきた。

「これは社務所でペラペラ話すのには、ちょっと抵抗がある話でね」

そう言って清助さんは、その時の事を話してくれた。

十年以上前に清助さんが二十代で、まだ神職の資格を取ったばかりの頃の話。

その頃の清助さんは今みたいに穏やかでなく、本家の人達をあまりよく思っていなかったらしい。

俺の住んでる辺りは田舎だから、本家と分家の間に封建時代の主従のような、絶対的な力関係があるのかと思いきや、そうではなく、本家と分家の当主同士が気軽に飲みに行くなんていう、普通に仲の良い親戚関係だそうだ。

旧家にありがちな、政治権力とも距離を置いている一族なので、金や権力についてのもめごとが無いのも一因だろう、と清助さんの談。

本家の持つ特権は、あくまでも本家が祀る神社の祭祀に限られているとの事。

じゃあなんでその頃の清助さんは、本家の人達をよく思っていなかったのか?

分家と言うだけで、根拠の無い劣等感があり、若さゆえに反発せずにはいられなかったこともあるが、清助さん達分家の人達と、その本家の人達の間にある差が、原因にあったという。

清助さん達分家も本家も、長い歴史を持つ神職の一族で、余所から嫁または婿に来た人以外は、全員昔からの巫覡の体質を受け継いでおり、成り行き、この世のものならざるものが視えるそうだ。

本家に至っては、記録にある部分だけでも千三百年以上続いてる家系。

某国風土記の平安期写本にも、本家に関連する記載があるらしい。

そこで分家と本家の差の話が出てくるんだが、本家の人達は、本家が祀る神社の神様からの加護を受けており、当主と次期当主に至っては、特に強力に護られているらしく、身の回りに霊とかその他のよくないモノが全く近づけないため、まったく目にしなくなる程だそうだ。

それ故、子供の頃からそういうもの時々に目にしており、苦労して対処を身につけた清助さんからすれば、生まれた家が本家と言うだけで、無条件に守られていることに納得がいかなかったらしい。

本家の本家たる所以は、本家が祀る神様との関係にある。

本家はある神社(X神社とする)を管理しており、分家も神社(Y神社とする)を管理する立場にあるが、X神社とY神社とは別にもう一つ神社(Z神社とする)が存在する。

Z神社は過去に一度失われ、大正期に再建されたという歴史があり、そのZ神社こそが本家が代々祀ってきた神社で、その祭祀を取り仕切る事こそが本家の役割。

そんな時、本家の当主と次代当主だけで代々行ってきた、当主継承に関わる祭祀を、十歳になる長女が失敗するという事件が起こった。

本家は血統を存続させることに重きを置いているので、昔から男女の区別なく長子が家を継いでおり、女性神職が許されなかった時代は、婿を取ってX神社の建前上の神職として据え、本家が代々祀るZ神社の祭祀は、女性当主が行っていたらしい。

長い本家の歴史上、次代当主候補が神様にそっぽを向かれたことはほとんど起こったことはなく、急遽、本家と分家の神職を一同に集めて、追加で祭祀が行われることになったそうだ。

その時清助さんはチャンスだと思った。

長女が失敗すれば、次は長男の順となるが、次代当主確定の祭祀は、当主の子息が十歳になった時に行われるので、長男が十歳となる来年までは、次期当主候補は不在となる。

この隙に、自分を神様に認めさせることがが出来るのではないかと、厨二病全開なことを考えた。

Z神社で祭祀を行う際に読み上げられる祝詞には、本家と分家に伝わるZ神社の主祭神のみに奉上するための、独自の定型化された長い祝詞がある。

祝詞の内容自体は分家の人間も知らされてはいるが、本家の当主と次期当主以外は、当主が許可した時以外はその祝詞を読み上げることは禁じられている。

ここに本家が特別に神様に守られている秘密があるのではないか、と考えた清助さんは、それを追加の祭祀の際に、読み上げて神様の気を惹こうと考えた。

しかし、当時の清助さんは冷静さを失っており、

「祝詞自体は知っておく必要があるが、当主との許可なしに読み上げてはならない」

という習わしの意味することを、良く考えていなかった。

そして追加祭祀の当日、一般的な祝詞の奉上が終わり、例の祝詞を当主が読み上げ始めたのにあわせて、こっそりと小さな声で、祝詞を読み上げ始めた。

それから暫くしたころ、突然視界が一瞬グニャリと歪んで、意識が遠のくのを感じ、薄暗い拝殿の鏡の上に、幻のように黒い直径1メートル程の球体上のものが、浮かんでいるのが見えた。

その球体には、人工衛星の周回軌道のように、幾重もの注連縄が巻かれている。

物凄い怖気を全身に感じながらも、「ほう、これが本家の祀ってる神様の御姿か」などと清助さんが思っていると、球体の注連縄の隙間から、黒い液体のようなものが漏れ出し、それが影のように延びてきて、取りすがろうと当主に近づき始めた。

その影は、当主から一定の距離のところでまで近づいたところで、まるでそこに見えない壁があるかのように、全く近づけないようになった。

 

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その時、清助さんは気付いてしまった。

あれが何故当主に近づくことが出来ないのか?当主には邪なものは近づけない……

つまり、あれは神様などではない。

そのことに気付いた時、我が身に感じていた怖気が急に強くなった気がした。

全身の毛が逆立つかのような悪寒が体を駆け抜ける。

「見つかった!」

清助さんが確信したと同時に、影のようなモノがゆるゆるとこちらに向かって動き始めた。

それはゆっくりとだが、確実にこちらに近づいて来る。

しばらくして、その影が膝先にまでに到達した瞬間、目の前が真っ暗になった。

それと同時に、両目、両耳、鼻に激痛が走った。

赤熱するまで熱した鉄の棒を、両目、両耳、鼻の穴に突き刺したらかくや、というほどの痛みだった。

多分、あまりの激痛に絶叫していた。

その激痛のさなか、ほかの感覚など消し飛んでいるはずが、触覚などないはずの脳を、直接手でまさぐられるかのような感覚があり、それと呼応するかのように、引きつけでも起こしたように、体が痙攣しているのを感じたという。

激痛に苛まれ、徐々に薄らぐ意識の中で、声が聞こえた。

「イッポン……ツナガッタ」

次に清助さんが気付いた時には夜は明けており、右腕にギプスをされ病院のベッドにいた。

医者からは、石段から足を踏み外して転んで右腕を骨折し、その拍子に頭も打ったらしいので、一応CTを撮ったが、問題ないようなので退院しても大丈夫だ、と言われたので、清助さんは仕事が終る時間を見計らって、本家の当主の下に顛末を聞きにいった。

その時に聞いた話をかいつまんで書くと、以下のようなものだった。

・第三者から見たとき、自分の身に何が起こっていたのか?

清助が突然絶叫して、正座した姿勢のまま痙攣をはじめ、暫くして右腕を上げたかと思ったら、右腕だけを無茶苦茶に振り回し始めた。

その後、右腕の動きがピタリと止んだと思ったら、関節の可動する反対方向に腕が捻じ曲がって、嫌な音を立ててへし折れ、また全身痙攣を始めた。

その間、当主は祝詞を読みあげ続けており、祝詞を読み終わると同時に清助の痙攣は止まった。

その後、清助さんの父に抱えられるように病院に運ばれた。

 

・黒い球体のようなものは何だったのか?

本家が代々封じ続けているもの。

正体はわからないが、それは非常に力を持っており、その力の一端に触れた者は、治癒不可能な心身喪失状態に陥る。

それは祟り神などと違って対象は無差別で、ただそこに存在するというだけで人を狂わせる。

影響範囲は広範で、少なくともZ神社がある町を中心に、その周囲の町にも及ぶ。

 

・いつからそれを封じているのか?

少なくとも千五百年以上前から封じている。

元々、人の住めない呪われた土地とされていたが、良質の鉱山があることがわかり、時の朝廷は土地開発を進めようとしたが、例の被害が多発した。

そこで、中央から力を持った一柱の神と巫覡(ふげき)の一族を遣わし、それを封じることにした。

そんな土地さっさと放棄して、別の鉱山を探せば良いのにと思うかもしれないが、その当時、製銅、製鉄というものは、国力を左右するほど重要で、しかもその土地は、とある理由で好立地だったため、放棄するにはあまりに惜しかったからだ、と聞いている。

封を担った巫覡の一族は、その土地に腰を落ち着け、代々その封を司るようになった。

時は流れて、Z神社は戦乱で消失し、その後長きに渡って本家が封じるための儀式だけは行っていたが、長らく神社が無かったことの影響か、大正期に被害が出るようになった。

そこZ神社を再建して封を強化して、今に至っている。

 

・それは完全に封印は出来るか?

わからないが、儀式をした際に、黒い球状のものに巻かれた注連縄が増えることがある。
その注連縄が完全に球を覆い隠した時に、封印は完全なものになるかも知れない。

 

・ここ以外にもそういう土地はあるのか?

極少数だろうが、存在すると思われる。

次代が國學院に通ってた頃、自分と似たように、強力に加護を受けていると思しき生徒がいたそうだ。

多分もその生徒の一族も、何か厄介なものを封じるために、そのような加護を受けているのではないか?

 

・何故自分は、心身喪失状態にならずに済んだのか?

分家とは言え、一族の血を引いていることによるものか、それとも百年以上ぶりに触れた人間ということで、人について何かを探ろうとして、壊れないように細心の注意を払って扱ってくれただけなのか、わからない。

運が良かったとしか言えない。

清助さんは一通り話し終えてから、

「とまぁ、こんな眉唾な話だから、信じる必要はないけど、ただそれのせいで知っての通り、私の右腕は今も動かないままなんだ。骨折自体はとうの昔に完治して、未だにリハビリを続けてるが、全く動く気配がない。思うにアレが『イッポン……ツナガッタ』って言ったのは、腕一本繋がったって言う意味だったんだろうと思う。だから、この右腕を動かすことができるのはアレだけで、もし仮に、封が弱まることがあれば、私の意志とは無関係に動きだすんじゃないかと思ってる。本家の人たちが封を強化してるから、私が生きてる間には、間違ってもそんなことは起きないと思うけどね」

と笑いながら話していた。

この話を聞いて、自分には完全に眉唾とも思えない心当たりがあったりする。

例の本家の人間なんだが、一族皆人格者ばかりだからというのもあるんだろうが、地元では物凄く信頼されており、「何があっても失礼をしてはいけない」と、婆さんから良く聞かされていた。

小学校の時、それぞれ別の友人グループだったんで接点はなかったが、本家の長男、要一(仮名)と同級生だった。

六年生の時、余所から転校してきたヤツ、茂(仮名)がいたんだが、そいつがことあるごとに要一に突っかかるようになったらしい。

要一は性格が良くて周りからの人気があったから、(顔がイケメンの部類だったのもあるかも知れないが)それが気に食わなかったのかも知れない。

ある時、茂の家に雷が落ちて全焼し、両親は無事だったが、茂が亡くなったと全校集会で校長から聞かされた。

後で知ったんだが、その前日、茂は要一を痛めつけようとして、階段から突き落としたらしいんだな。

武道の心得もあってか、幸い要一は軽い捻挫程度で済んだらしい。

その茂が住んでいた借家の場所は、ウチからチャリで三分程度の近所なんだが、そこの地主の爺さんが雷の話を聞いてビビったらしく、駐車場とかにもせず今も更地のままなんだ。

この要一の話を思い出した時、心底寒気がした。

雷は偶然だと思いたいが……

(了)

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