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短編 r+ 怪談

真夜中のチャイム r+1222

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これは、大学時代の知人から聞いた話だ。

彼はその出来事を振り返り、「あれは本当に洒落にならない体験だった」と何度も繰り返していた。

大学一年の夏、彼はちょうどアルバイトをクビになり、毎日だらだらと寝て過ごしていたそうだ。特にその日は、異常な蒸し暑さが肌にまとわりつき、布団の中ですら安らげないほどだったという。夜になると不快な熱気がさらに増し、ようやく浅い眠りに落ちたとき、不思議な夢を見た。

自分の部屋の中に立っている。ただじっと立ち尽くしているだけの夢だ。そのとき、不意に玄関のチャイムが鳴った。「ピンポーン」と耳に残る音。その音に促されるように玄関を開けると、そこに立っていたのは、白い服が真っ赤に染まった女。血に濡れたその姿で、じっとこちらを見ながら笑っていた。

驚愕して目を覚ますと、全身が汗でびしょびしょになっていた。心臓はまるで警報のように鳴り響き、外の雨音が重苦しい空気を増幅させている。時計を見ると深夜の3時を少し回ったところだった。嫌な時間に目が覚めてしまった、と彼は思った。

夢の後味が悪くて仕方がない。寝付ける気がせず、布団に潜り込んでぼんやりと雨音を聞いていた。そのとき、また聞こえたのだ。

「ピンポーン。」

鼓動が一瞬で止まるような感覚に襲われたという。夢で見たあのチャイムの音が、現実でも鳴り響いた。部屋の中でひとり、全身が冷たくなるのを感じながら、必死に「幻聴だ」と自分に言い聞かせた。だが、心の奥では「まさか」と思う気持ちが消えない。

レオパレス特有のモニター付きドアホン。部屋のロフトから身を乗り出し、恐る恐る覗き込むと、信じがたいことにそのモニターが光っていた。誰かがチャイムを押さなければ反応しないはずのそれが、映像を映し出している。

「なんで光ってるんだよ……」

そのとき、再び鳴るチャイム。「ピンポーン」。勇気を振り絞ってモニターを覗き込むと、そこには何も映っていない。空っぽの玄関先。ただの悪戯だろうか。それとも……?

その疑問に突き動かされるように、彼は玄関のドアを開けることにした。チェーンを外し、ゆっくりと扉を開ける。雨の匂いが湿気とともに流れ込む中、左右を確認したが、誰もいない。ただの静まり返った夜。

「なんだよ、誰もいないじゃないか。」

そう思ってドアを閉めようとした瞬間、何かの気配を感じて視線を上げた。すると、そこにいたのだ。

少し離れた小道の向こう、夢で見たあの女が、血まみれの白い服を纏い、こちらをじっと見ていた。そして笑っていたのだ。夢の中で見たあの不気味な笑顔と全く同じ表情で。

全身が凍りついた。声を出そうとしても出ない。ただ必死に扉を閉め、チェーンだけでは足りないと鍵をかけた。その後は、イヤホンで爆音の音楽を流し、朝が来るのをただ待つしかなかった。

夜が明けてみれば、その女が実在した証拠は何もなかった。だが、それ以来、時折彼の住むアパートの前で猫の死骸が見つかるようになったそうだ。不気味に思い管理会社に通報することもあったが、直接的な被害はそれ以上なかったという。

友人にこの話をすると、こう言われたそうだ。「お前、気づいてないだけでさ、あいつまだいるんじゃねえの?」

彼はその言葉に言い返すことなく、ただ曖昧に笑ったという。だが、その笑顔の裏には確かに震えがあった。彼が最後に言った言葉が今も耳に残っている。

「それ以来、夢の中にあいつが出ることはないけど、たまに夜中に、ふと外から視線を感じる気がするんだよ。」

(了)

[出典:58 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/02/26(日) 22:31:30.68 ID:o/eaGjCH0]

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