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巻き戻された時間 r+1348

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電話が昔から苦手だ。

その理由は、おそらく子供の頃に夜中かかってきた親戚の訃報の電話だと思う。呼び出し音が聞こえるたび、毎回嫌な予感に襲われる。まるでまた悪い知らせが舞い込むんじゃないかと、身体が勝手に反応してしまうんだ。

ある日のことだ。俺は休日で、昼飯を食べたあと録画していた映画をぼんやりと眺めていた。ちょっと眠気が差してきた頃、電話が鳴った。例の嫌な予感が胸をよぎりつつ、仕方なく受話器を取った。

「はい、もしもし、カトウです」

半分眠りかけてたのを邪魔されて、多分少し不機嫌だったと思う。時計を見ると午後2時25分。電話の相手は男の声で、内容は「近くまで来たのでこれから伺ってもいいですか?」という宅配便の連絡だった。そういえば先日、荷物を受け取り損ねて再配達を頼んでいたのを思い出し、「ええ、大丈夫です」と答えた。

電話を切ったあと、ふと玄関のベルが鳴った。タイミングが妙に早い。俺の家はマンションの7階にあって、下の車から電話をかけたとしても、ここまで来るには1分はかかるはずだ。嫌な予感がさらに強まった。とはいえ、霊感なんてないし、死んだらそれで終わりだろうと思っている。でも、オカルト話には興味があるほうで、「ついに俺にも何か体験がくるか?」なんて、妙に冷静な気持ちもあった。

ソファにかけてあったジーンズを履いてインターホンを取ると、さっきの男の声で「宅配です」と言われた。「あ、はい。今出ます」と返事をしつつ、もし強盗だったら嫌だと思って玄関のゴルフクラブの位置を確認。ドアの覗き穴から外を覗くと、アマゾンの段ボールを持った制服姿の配達員がいた。拍子抜けしながら鍵を開け、荷物を受け取って判子を押した。いつも通りのやりとりだった。

荷物をソファに放り投げ、鍵とチェーンをかけたあと、映画の続きを見ようとリモコンに目をやると、受話器がない。そういえば、さっき受話器を戻そうとしたとき玄関のベルが鳴って、そのままだったのかもしれない。玄関から電話の呼び出し音が聞こえてきて、妙に不安になりながら戻ると、靴箱の上で受話器がピロピロ鳴っていた。手に取って外線ボタンを押し、「もしもし」と耳に当てると、聞こえてきたのは俺自身の声だった。

「はい、もしもし、カトウです」

「は?」と思った瞬間、電話の中からさっきの会話がそのまま流れてきた。「ええ、大丈夫です」「今家にいますんで、はい、来てください」。同時に映画の音が電話越しに聞こえている。目の前のモニターとは違うセリフが流れ、背中に寒気が走った。

そのとき、また玄関のベルが鳴った。電話を耳から外しモニターを確認すると、電話で聞いていたのと同じ映画のシーンが映っていた。インターホンに出ると、さっきと同じく「宅配です」と男の声が聞こえる。部屋を見渡すと、置いたはずの段ボール箱がどこにもない。わけがわからないまま、玄関に行って再び荷物を受け取った。

時計を見ると午後2時27分だった。たった2分の間に何が起きたのか、全く理解できなかった。

ソファに戻り、受話器を置いて映画を巻き戻し、時間を逆算してみた。最初の電話から荷物を受け取り、ソファに戻るまで約2分半。そこから再び荷物を受け取りソファに戻るまでが2分15秒。段ボールを開けると、中には確かに自分が注文したスリッパが入っていた。

結局、それがなんだったのかは今も分からないままだ――。

(了)

[出典:573 :本当にあった怖い名無し:2014/01/30(木) 05:23:35.16 ID:4EiqMZNt0]

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