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祀られない神 rw+2,974-0211

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霊なんて、子どもの遊びか都市伝説だと思っていた時期がある。

今は違う。断言はできないが、否定もできない。きっかけは、幼い頃に体験した、家に伝わる妙な風習だった。

父方の家系には代々続く「顔見せ」という儀式がある。意味は知らされない。ただ、小学校に上がる前のある日、父の兄が経営するホテルに一族が集められ、私は連れて行かれた。祖霊に顔を見せるためだとだけ聞かされた。

和式の宴会場に座布団が並び、香の匂いが漂っていた。天井の灯りが、なぜか赤く滲んで見えた。
現れたのは陰陽師と紹介された男だった。長い袴に奇妙な模様の羽織。視線は合っているようで、どこか焦点が定まらない。

呪文めいた言葉を唱えたあと、男は私を見た。

「この子には、祀られていない神がついている」

空気が微かに揺れた。
山中の忘れられた社に、巨体の神がいるという。社は朽ち、草に覆われ、誰にも顧みられない。力は強いが、頼れば頼るほど運を吸い取る。守る代わりに、何かを奪う。だから極力関わるな。そう言われた。

そこで話は終わり、宴会が始まった。
酒が進み、父たちは冗談半分に「他に何か視えないのか」と陰陽師を煽った。男は笑い、姉の足に黒い影が見えると言った。
数年後、姉はかかとの骨が異常に伸びていると診断され、手術を受けた。家族は言った。「あの陰陽師、本物だったな」と。

私は成長し、社会に出た。霊体験らしいものは特にない。
ただ、事故が異様に多かった。十年足らずで八件の交通事故。そのうち七件は完全な貰い事故だった。落石が車を直撃したこともある。
親族は祖父母の家に集まるたび、「また守ってくれたな」「次の災厄も近いな」と、当たり前のように口にした。

そんな頃、古い友人夫婦から連絡が来た。A夫とB子だ。
ラップ音、悪夢、庭に現れる人影。霊障に悩まされているという。相談を受け、地元の神社を転々とした末、別の神社で原因が見つかった。
A夫がフリマで買った、竹製の奇妙なタペストリー。それが呪具だった。

お祓いの際、「抑えの人間が必要だ」と神主に言われた。
呼ばれたのが私だった。

正直、嬉しかった。頼られたこと。特にB子には、かつて淡い想いを抱いていた。二つ返事で引き受けた。
山奥の神社へ向かう途中、ナビは役に立たなくなった。森が深まり、空が狭くなる。鳥の声が消えた。

神社は小さいが、異様な清潔感があった。装飾はなく、無骨な建物が点在している。
本殿ではなく、道場のような建物に通された。

祈祷が始まった。
二人は酒を飲まされ、草のついた枝で打たれた。巻物を首にかけられたA夫は、途中から意識が落ちかけた。私は言われた通り、肩を掴んで揺さぶった。

「寝かせていいッ!」

神主の怒声が響いた。

儀式は終わり、出前の寿司をつまみながら雑談になった。
呪具は外国由来で、魚の骨を焼いた灰が塗られていたこと。悪い気を吸う性質があり、普通ではないこと。
話題が守護霊に及んだとき、神主は私を見た。

「君の後ろに、祀られない神がいる」

山奥、苔むした社。大きな顔、裂けた口。だが瞳がない。
力はあるが、必ず代償を取る。本人か、周囲から何かを。
だから、あまり頼るな。念を押すように言われた。

一年が経った。
夫婦に霊障は起きていない。A夫は肥え、B子も元気だ。私が守ったのか、あの神が守ったのかはわからない。

ただ、あの日から、眠るたびに同じ夢を見る。
山奥の社。巨体がこちらを向く。眼のない顔が、ゆっくりと口を開ける。
草の匂いと、血のような鉄臭さが鼻を刺す。

そして、囁く。

「つぎは……おまえの番だ」

[出典:612 :本当にあった怖い名無し:2021/10/16(土) 22:59:16.35 ID:pi/CkkOs0.net]

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