短編 洒落にならない怖い話

道を教えてください【ゆっくり朗読】3080

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「道を教えてください」

夕方の路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女だった。

足が異様に細くバランスが取れないのかぷるぷると震えている。

同じように手も木の枝のように細く、真っ赤なハンドバッグをぶら下げている。

はあはぁと何度もため息なのか呼吸なのか分からない息を吐き、僕に聞いているはずなのに視線はまったく違う方向を向いている。

「あ…あの。どちらへ……?」

やばい人っぽい。

僕は早く答えて立ち去ろうと思った。

「●●●町1-19-4-201」

「………」

そこは僕のアパートの住所だった。

部屋番号までぴったりと合っていた。

「し、知りません」

僕は関わり合いたくないと本気で思い、そう答えた。

すると女はゴキッと腰が折れ曲がるほどにおじぎをして、またふらふらと路地の奥へと消えていった。

「超こぇえ……」

僕はわざわざ遠回りをしてアパートに戻ってきた。

部屋のカギが掛かっているのを確認し、さっさと開ける。

「道を教えてください」

真っ暗な部屋の中から声がした……

(了)

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