短編 洒落にならない怖い話

山奥の廃墟【ゆっくり朗読】3793-0101

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俺が今まで生きてきて一番怖かった体験を話したいと思います。

実際起こった出来事なんだけど、現実の話ってこうやって文にしてみると大して怖くねーなって思ったよ。

……まあ俺の文章力が無いだけか。

でも書く。

1994年頃の出来事になるが、当時俺は都内で学生をやっていた。

地元はとある田舎なんだけど、地元には気心知れた友人が何人かいて、休みになると地元に帰っては朝まで飲んだり、ナンパしたりコンパしたり、楽しい時間を過ごしていた。

そんな夏休み……

いつものように友達と夜遊んでて、引っ掛けた女とカラオケやって盛り上がってたんだけど、女達はカラオケが終わると、次の日バイトがあるとかで帰ってしまった。

暇になった俺達は、誰とも無く「じゃあ、肝試しでもやんねー?」って話になって、山の上にある廃墟と化した別荘に行こう、という話になった。

今だったら絶対に行かないけどね。男だけで肝試しって何が楽しいやら。

でも当時は免許も取り立てだったし、何をやるにも楽しかったんだ。

その別荘は今は取り壊されてしまったけど、地元じゃかなり有名な所らしく、誰それが其処で殺されただとか、夜中窓から女が覗いてるだとか、何か色んな噂が流れてくる場所だった。

まあ俺は特にそこで何があったのかとか全然知らなかったし、一緒に行く友達が四人もいたので、かなり余裕ぶっこいてた訳です。

初めて行く場所だったし、怖さよりウキウキ感のほうが強かったんだろうね。

カラオケで大分時間を過ごしていたので、其処に到着したのはもう深夜零時を回ってた。

着いてびっくり!

なんでこんな山奥に別荘があんの?って感じで、周りには何も無いし。

試しに車のヘッドライト消してみたら本当に真っ暗で、暗黒って言うのはこういうことを言うんだろうな~とか思ったよ。

かなりびびってたんだけど、まあ仲間もいるし、廃墟の中に入ってみるべって事になり、
バリゲードをぶち壊し中に入りました。

中は埃とカビ臭く、割れたガラス等が散乱していて、雰囲気を醸し出してたね。

珍走も来るらしく、誰々参上とかそう言うのもスプレーで書いてあり、そっちでもかなりビビったね。

まあでも、俺はからっきしだけど、友達の中に格闘技とかやってる奴とかいて、性格もイケイケだったんで、かなり大人数じゃない限り襲われても平気かな、みたいな感じもあったかな。

幸い珍走も来ず、しばらく廃屋の中で探検や何かを物色したり壊したりと色々やって遊んでたんだけど、しばらくすると飽きてしまい、俺達は車に戻った。

んで車に戻る際、たまたま運転手がドアを閉め、そん時に肘がドアロックに当たって、全ドアにカギが掛かったんだよね。

俺は助手席だったんでそれを見てたんだけど、本当にたまたまカギが掛かっちゃったんだ。

その後、その場から離れずエンジンをかけ車内でCDを聞いたり、会話を楽しんでました。

しばらくすると、山頂付近から光が見える。それもどうやら車らしい。

こんな夜中に山から下りてくる車って何だよ?って俺らにもちょっとした緊張が走る。

今まで散々不法侵入して遊び倒してるんだから、逃げようかとも思ったんだけど、何かその時の車の中の雰囲気が、友達同士舐められたくねえ、みたいな感じで、何故か誰も逃げようとか言わなかったんだ。

んで、あれよあれよと言う間に車が目の前までやってきた。

まあ一本道だし当たり前なんだけど、何故かその車はタクシー。

今の時間に山頂で何を?こんな山奥に何故タクシー?って俺達は思った。

んで、そのタクシーは何故か俺らの車の数十メートル後ろで停車し、後部座席から二人を降ろし、そのまま俺らの車を追い抜き行ってしまった。

人が降りたので、「やべ、ここの別荘の持ち主か?」と思ってたら、そいつらしばらくこっちを見てたんだけど、気が付くとゆっくりこっちに向かってくる。

しかも一人は女らしい。真っ赤なワンピースを着てる。

もう一人は明らかに男でスーツ姿だった。

年齢は全く分からないが、多分40前後と感じた。

顔も暗くて良く見えない。

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俺らは微妙に非現実的な出来事に、あっけに取られていたと思う。

あっけに取られた俺らをよそに、彼らはすぐ車の近くまで近付き、男性が運転席側、女性が助手席側に回りこみ、いきなりドアノブを引っ張り、物凄い勢いで車の中に進入しようとすんの。

「!」

ぎゃー。もう髪の毛総立ち。ヤバイ。

さっきも言った通り、偶然カギが掛かっていたためドアは開かない。

でも彼らはそんなのもお構いなしに、ドアノブを半端無いくらいガチャガチャやってる。

ビビる俺達。

車もすげー勢いで揺れてんの。

正気に戻った誰かが「逃げろ!」と叫んで、運転手もすかさず車を発進させました。

「うぉー怖えーーー!」

車の中は大騒ぎ。

気が付くと皆恐怖のあまり泣いていました。

近くのファミレスに車を止め、皆で「なんだったんだアレ?」みたいな事をギャーギャー話した。

友達がバカで明るい奴らで助かったと思った。

「一番涙目になってた奴は誰だ?」みたいな話しもした。

「俺じゃねーよ!」とか、「お前が一番涙目だった」とか言い合った。

俺はさほど涙目にならなかったお陰で、大して言われずにすんだ。

大分落ち着いてから、格闘技経験者でイケイケの友人に、何でお前出て行かなかったのと聞いてみた。

こいつはかなりイク奴なので、皆不思議がったのだ。

ちなみにこいつは運転手。

そいつはドリンクバーを飲みながら一言。

「多分俺じゃ勝てないから」

「ぉお?何時も自信マンマンなのに、今回はえらく殊勝だねえ」

誰かが茶化す。

すると運転手のそいつはムキになって、

「だって、俺の車1トン以上あるんだよ?ドアノブ上げるだけで、何であんなに車が揺れるんだよ。あいつら力、ハンパねーよ。

……つか、お前ら、あいつらの顔みてねーのかよ?

目がな、ヤバ過ぎてとても出て行けねーって。

だって黒目しかねーんだもん。アレ絶対人じゃないよ」

男女の顔を良く見ていない俺達は、その言葉にガツーンと落とされた。

彼は嘘を言うタイプじゃないから。

そして、ファミレスで朝まで過ごした。

時効だから書くけど、俺は涙は出なかったけどおしっこがちょっと出た。

人間本当の恐怖を味わうと小便を漏らすのを、その時初めて知った。

(了)

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