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長編 定番・名作怖い話

コンビニ店員シリーズ【全話コンプリート】

更新日:

■変な高校生

俺コンビニで早朝バイトしてる20代なんだが、7時45分から8時15分くらいまで高校生ピークなわけよ、すぐ近くに高校あるしさ。

その時間になるともう戦場で、学生服でごった返し、他の常連客なら、毎回買うもんとか性別やら体格で顔覚えられるから、「いらっしゃいませ」のほかにも軽く会話とかすんだけど、さすがに高校生は無理。

せいぜい「おはようございます」とか、条件反射で付け加えちゃうくらい。

当然高校生無視。俺ちょっと寂しかったり(←女子相手)ムカついたり(←男子相手)するわけで(笑)

顔可愛い女子とか、やたら印象的な奴は覚えたりもするがね。

それが、9月くらいからかな、自分から挨拶する男子高校生が来てさ、感心したりビックリしたりしてたんだけど、別な曜日に入ってる同僚に話しても、

「挨拶された事ねえなあ」とか言われて、なんだよ、もしかして俺が忘れてるだけで知り合いかよって焦った訳だ。

まあ近くにある高校ってのがかなり偏差値高いから、知り合いなんていねえと思うけどな、なんてノリで。

で、それからもやっぱ挨拶してきて、でもどう見ても他では見たこと無い顔だし、よく考えれば、毎日来てるとは限んないし、たまたま俺のシフトと被ってて、ちょっと礼儀いいだけの高校生かななんて考えたわけよ。

あと可能性としては、妹が二人いるんで、その辺の知り合いかななんて思って妹に聞いても、その高校に知り合いはいないっつーし、特徴言っても知らんっていわれる。

挨拶されるだけで、アンタ誰?俺と知り合いだったっけ?なんて聞くのもあれだろ、ほら、失礼だろ。

しゃーないから聞かないまましばらく放置だったんだけど、10月入ってから、挨拶以外に話し掛けてくるようになったんだよ。

あたりさわりの無い会話で「雨強いっすねー」とか言われたら、「そうですね」とか返すくらいで。

ある時、「日曜日まで早起きとかマジ大変ですね」なんて言われて、ハア?ってなった。

俺のシフトは月火水金土で、木曜日と日曜日は休み。

ああこいつ自分が休みの日も俺が働いてるとか思ってんだろうなあとか内心笑いながら、「そうですね」って返しておいた。

それが、その週の土曜日の夜中に店長から電話あって、明日の朝出てくれとか言われてさ、よくあることだし、あんま気にしないで出たんだよ。

職場ついてから、そういやあの高校生に言われたっけって思い出すくらいで。

そしたらさ、来たんだよ高校生。しかも何か部活っぽい。

部活ったらあれだろ、毎週来るだろ?じゃあ何であいつ日曜日まで早起きとか言ったんだ。

言い間違いか?

休日と日曜日を言い間違えたのか?

とか思いながら、なんかの練習試合のせいで馬鹿混みになってるレジを、神業的スピードでこなしてたら、列の最後にあの高校生が並んでさ、笑いながら頭下げてくるもんだから、こっちも頭下げてやったよ、忙しかったけど。

そんで最後尾だったこともあって、そいつのレジ打ちは普通の速さでやりながら、やっぱり会話。

けど、この日は俺からだった。

「なんかの試合でもあるんすか?」←あんま高校生で混んでると、店長が聞けって言うから聞いた。

「ああ、練習試合っす。バスケの」って軽く返されて会話終了。

かと思いきや、そいつお釣りを渡そうとしても、手を出さないで立ってんの。

うわこいつ超邪魔なんて思っても、当然口には出さない店員の鑑な俺。

「すみません」とか、この辺うろ覚えだけど言って差し出したら、そいつ真顔で「気をつけてください」っつーのよ。

電波?!ヤバコイツ電波だった!?って焦って、他に仕事もあるし、カウンタにお釣り置いて「ありがとうござました」って早口に言って、一旦レジ離れた。

その後はそいつも帰ったし、特に問題なく仕事から家に帰った。

俺実家暮らしの夜間学校生で、その日は家族みんな出かけてて、俺も学校あったんだけど、学校まで時間あるし、誰も居ないちょい広い家で課題とかやるべって思った。

その日、家に帰ったら鍵開いてんの。

今までもたまにあったし、俺がすぐ帰ってくるからだと思って気にせずにいたら、鍵の隠し場所(持ち歩かない家だから、家族のみ分かる場所に隠してある)に鍵があるんだよ。
おかしいなあなんて思って、まあそんなボケかます家族もいるさって勝手に納得して家に入った。

そしたらすげー寒いの。マジ寒いの。10月始めにしては寒すぎなの。しかもうちクーラーとかないし。

まあこんな日もあるさなんて自分に言い聞かせて、色ゲの歌口ずさみながら家の中へ。

朝のアニメ観て、洗い物したり洗濯物やったりしてても、なんか家の中にいる気がして、ちょ、俺自意識過剰、なんて笑い飛ばしながら、色画像でも見ようと思ってパソコンつけても中々立ち上がらない。

何だよウィルスかよオイオイ。

も一回つけてもやっぱダメで諦めかけたら、背後からシャーって音がすんの。

ビビって振り返ったら、うちで飼ってる猫でさ。

なんだよ脅かすなよーって一瞬微笑ましくなって直後に冷や汗。

アンタ何に威嚇してんの?
俺には超なついてるし、猫と俺の間には何もいない(と俺は思ってる)。

猫が嫌うような匂いもしないし、俺も別に尻尾をふんだりとかしてない。

数匹飼っているが、そういや帰ってきてから見たのこれが初めてだ。

皆どこ行ったんだ。寝てるにしても長時間すぎるだろ!

そもそも、俺が帰ってきたら皆寄ってくるのに、その日に限ってこなかったし。

そこで思い出す。

『気をつけてください』

いやいやいや、何を電波高校生の言う事を真に受けてるんだ。

猫を宥めて再びパソコンに向き直る俺。

目に入る女の顔。

んん?
まだ色ゲサイトに繋いでねえぞ?
っつーか、まだパソコンついてねえぞ?

で、目、こすったら消えて、気味悪かったんで家から出て、早かったけど学校に向かった。

その間もずっと寒くて、学校ついてからも寒かったんだけど、友人は「むしろ今日は暑い」とか言ってて腹が立った。

帰りの電車で腹痛に襲われて、途中で何度も電車を降りてトイレに駆け込んだ。

食中毒になるようなもの食べてないし、特別腹が弱いわけでもないし、風邪ひいたかもしれないと思って、その日は早く寝た。布団いっぱいかけて。でも寒かった。

金欠だったからバイト休むわけに行かなくて、下痢による脱力感と共に出勤。

店長と年上の女の先輩に心配してもらいながら、仕事終了までなんとか頑張って、終わってみれば、今日高校生に会ってない。

っつーか、高校生ラッシュ自体無かった。店長に聞いたらなんか祝日だった。

で、帰ろうとしたら、チャリ置き場に居るんだよ。そいつが。しかも俺のチャリの所に。

コンビニ店員って私服になると気付かれにくいし、たまたま俺のチャリの傍にいるだけだと思って、挨拶もしないでチャリに鍵さそうとしたら、「おはようございます」って言われてマジビビる俺。

でもそこは一応年上として平静を装い、「おはようございます」って明るく返してやった。

そのまま帰ろうとしたら、「大丈夫ですか」って聞いてくるもんだから、俺もいい加減「はあ?」って口に出して言ったよ。

私服だし勤務時間外だし。ここは年上としてスパっと言ってやらなきゃいかんな、なんて思ってさ。

「何が?別に君と俺知り合いじゃないし、気をつけてとか大丈夫とか意味わかんないよね?」

腹の痛みもあってかなり不機嫌だった俺は、トゲトゲした口調で言った。

でも全然動じない高校生。

「いやでも、見えちゃうから」

うわ電波だ!やっぱり電波だった!

今すぐ逃げ出したいという思いと、聞きたくない聞いちゃいけないという気持ちを抑えて、「何が?」と聞く俺。

そしたら高校生黙りやがるの。

何だコラ、ここまで来て焦らしプレイか、やるなら女子高生とがええわ……なんて内心で思ってたら、突然「電車だと思う」とか言い出す。

もう意味ワカンネ。逃げよ。シカト決定した俺は、チャリに跨って走り出そうとして、止まった。

その数日前に人身事故で電車が止まったのと、ディスプレイに映った女の顔が、やけに崩れていた事を同時に思い出したからだ。

「電車……」

呟いて振り返ると、いきなり顔に塩ぶつけられた。

「タツヤは他人だし、たまたまその電車に乗ってただけだから、このくらいで落とせるよ」

年上に塩ぶちまけて、いきなり呼び捨てでタメ語かよ!って突っ込むのも忘れて唖然。

コイツはヤバイと本能が呼びかけてきたので、何を思い出してももう振り返らない!と心に決めて愛車(チャリ)で猛ダッシュ。

しかし、その後腹痛は治まり、猫も威嚇せず、体感温度も元に戻った。

次の日も高校生は来た。

しかも、「良くなっただろ」とか言ってくる。

根拠も無いのに礼を言うのが嫌だったし、店内だったので適当に挨拶して放置。

まあこれからは気をつけて、言われたら塩でも撒こうとか簡単に考えていたが、そいつ最近俺に、「タツヤ、今不安定な時期だから憑かれやすい」とか言いやがって、頭から離れない。

明日何を言われるのか不安になる。

■無性に塩分が摂りたい

10月中旬にちょっとした事があって、高校生(以下シゲオ)と少し親しくなった俺。

まあそのちょっとした事はおいといて、11月初旬、つい最近に、精神的にも肉体的にもちょいショッキングな事があったんでこっちを。

10月末から同僚(こっちは男/同い年)がやたら遅刻や無断欠勤をするようになって、そんな日は一人で早朝勤務をこなすようになった。

教習所に通い始めたのもあって疲れが溜まるし、遅刻しても謝らん同僚にイライラする俺。

シゲオはその頃から、俺に「つかれてんな」言うようになってた。

どっちの意味かは知りたくも無かったので放置。っつーか敬語使え。

そんで、無性に塩分が摂りたくなっていた。

ほら、突然ポテチとかカップ麺食いたくなることあんだろ?
あんな感じをもっと強くしたもんだと思ってくれればいいかも。

最初はポテチやらカップ麺食ってたんだが、物足りなくて、アタリメやらつまみのイカそうめんをかなりの量食ってた。

そのうちそれでも足りなくなって、マヨネーズとか醤油とか塩を、家族の目を盗んでは口にしだして、ストレスから来る偏食かと不安になった。

シゲオは「つかれてんな」としか言わないし。

11月入って、初めて塩のみで過ごした次の日

いつものようにパックジュース一つでレジに並んできたシゲオが、急に真顔になって言った。

「タクヤさ、最後に水飲んだのいつ?」

まあ当然ハア?ってなって、そんな事聞かれたってとっさに出てこない。

というか思い出せない。一昨日の晩ご飯のように出てこない。

倒れはしなかったものの、レジ続行は不可能だと判断し、呼び出しボタン連打でバックルームに居る店長を召喚して、

「吐きそうなんですマジやばいんです」っつってトイレに駆け込む俺。

頃合を見計らって早退し病院に直行。

即点滴。脱水症状起こしていたらしい。

医者にも水分いつとったか聞かれて首を捻る俺。

「マジわかんねーし」っつったら怒られた。

食生活はさすがに全部は言えんかったが、それでも怒られて帰宅。

帰宅後もやたら塩が欲しくなって、PCのスイッチ入れた直後にフラフラ台所へ。

そんで塩舐めてたら、PCのフリメにシゲオからメールが(携帯教えるのが嫌だった)。

いつもはメールを滅多にしない上に、してきても長文で怖い話ばっか送ってくるシゲオがたった一行

『窓開けんな』

意味分からんが、前回で学習した俺は、窓を開けずに色サイト巡りでもするかな、なんて呑気に構えていたその時だった。

ドン

窓に何かがぶつかる音。

ヤバイヤバイなんかキター?!と思って、おっかなびっくり振り返ると、愛猫が外から帰ってきた模様。

しかし、開けるなというシゲオからのメール。

どちらをとるべきか悩んで、とりあえずシゲオにメールを返信。

内容は、『猫入れるんもダメか?』とか、そんなだったと思う。

数分猫と見つめあってるうちに、シゲオから返信。

『ドアから入れたらいかんのか』

お前頭いいなーっつか、ドアはいいんかい。

猫を入れて身体を拭いてやり、課題を始めて数十分。

学校に向かう時間になったので、洗濯物を取り込んで……って、窓開けないといかんがな。

入れ忘れたことにして妹にメールで頼むかな、と思ってたら嫌な音が。

雨だ。しかもかなり大粒。迷っている暇はない!
近所に聞こえても構っていられるかと、色ゲソングを大声で口ずさみ、思い切って窓を開けて洗濯物を入れ込む。

家族が多い分、量があるので時間がかかり、入れ終わる頃にふと気付いた。

雨が降っていない。

大粒の雨の音がいくつかしたはずなのに、道路にも屋根にもその跡すら見当たらない。

気のせいさ!そうだそうだ!気のせいだ!早く学校に行こう!
と笑顔を引きつらせながら室内に入ろうとしたが、無茶苦茶冷気を感じて入れない。

こりゃーもうベランダから飛び降りるしかないかな!とか思ったけど、ベランダから下は、隣とうちの間にある塀かコンクリのドブなので、下手したら大怪我。

びくびくしながら室内を窺うが、何も見えないようなので、ダッシュで入って窓を閉めて、財布と携帯だけ持って家の外へ。

そんで前回同様、早いけどまあいい!学校行こう!とチャリに乗ったが動かない。

あれ、俺鍵抜いたっけ?ボケてんな。と思ってポケットを探すが見当たらない。

抜いたら大体ポケットに入れてるんだが……

家の中か?入りたくねえなあと思いながらも、恐る恐るドアを開く。

で、閉じた。

ななななな何かいる!

ハッキリ見えんが(見たくない)、確実に俺が出る前に居なかったものが居る。

一瞬で閉じたので、見えたのはせいぜい、黒くて、サッカーとかバレーのボールくらいの大きさって事しかわからなくて、人間の頭ってあれくらいだっけとか、嫌な想像が浮かんでくる。

過去に妹が乗っていた、ちょいちっちゃいチャリで行くしかねえと俺は決めた。

駅に着くまでも、目の端にチラチラ黒い丸いものが入ってきたが、とにかく無視。

神社の鳥居の上、電信柱の陰、民家の塀の中、郵便局の屋根の上、信号の上、所々に現れては消える。

しかもものすげえ嫌な感じ。

うまく表現できないけど、見てるだけでオエってしそう。

ついでに言うと、まだ塩分が摂りたいのは変わらなくて、途中でバイト先ではないコンビニで、塩のポテチを買って食ったが足りなかった。

駅に着いたのは夕方で、丁度高校生の帰宅ラッシュ。

ああ居るなと思ったシゲオはやっぱり居て、俺の顔を見るなり、

「開けるなって言ったのに馬鹿だな」なんて言いやがった。

「もっと分かりやすく言え!」と怒ると、いきなり俺の背後を指差した。予想はついた。

“アレ”が居るんだろう。最早生首決定していた俺は、絶対振り向かねえと断固拒否。

しかしシゲオは、「いいからいいから」っつって、振り向かせようとする。

見たくないんだよ、馬鹿かこの高校生。

何を言っても聞く気はないらしく、とにかく振り向けの一点張り。

振り向けば直るのかと聞いても答えない。

しかし、ここで押し問答をするわけにも行かないし、駅前で言い争って交番に呼ばれたくも無い。

大人な俺は(周りに人が大勢いたのもあって)振り返ってやった。

俺の目の前1メートル前後にあった黒い塊は、生首ではなく大量の虫だった。

とにかく虫、虫、虫。

種類なんか判別できんほど、びっちりびっちり虫がくっつきあって、ひしめきあって、バレーボール大くらいの大きさになっている。

俺は虫苦手じゃないが、さすがに飛びのいた。

咄嗟に「殺虫剤とか効くのか」とシゲオに聞くが、シゲオは笑って「効くわけないじゃん馬鹿だな」と言う。

シゲオが宙に浮いたままの塊をしっしっと手で払うと、一瞬でバラけて何もなかったかのように消えた。

何だったのかと聞いてもシゲオは答えない。

猫が狩ってきた虫か?とか、今まで殺した蚊か?とか聞いても、「馬鹿だな」と言うだけで肯定はしない。

ただ、「あれと塩は関係あるのか?」と聞いたら、「しお?」と聞き返して、少し悩んでから「ああ、塩ね。あるよ」と肯定した。

簡単な説明してもらって駅で別れて、電車に乗ってから数分後に、ものすごい喉の渇きに襲われて下車。

売店で水を二本買っていっき飲み。

治った事を実感しつつ、そういや3回馬鹿って言われた事を思い出して頭に来た。

シゲオの説明は分かりにくかったが、つまり虫の幽霊(生霊?)みたいなものらしい。

それの一部体の中に入ると、とにかく何か偏ったものが摂りたくなるとか。

ドアからは入らないが、窓からは本体?みたいなモノが狙っていて危ないとか、胡散臭い説明だった。

「本体に接触したらどうなるんだ」と聞いたら、「明日は会えなかったなあ」とか、意味不明な事を遠い目で呟くので、それ以上は聞かなかった。

「説明がよくわからん」と文句を言うと、「まあアレは、世の中にあるうちのほんの一部だから」と、自分の説明下手を誤魔化しやがった。

というか、あんなんが世界中にうじゃうじゃ居たら困るわ。

そう言うとシゲオは、「人間も虫も大差ねえよ」と笑った。

つまりそれは、人間にもあんなのがいるって事だろうか。

そしたらそれは、サッカーボールとかの比じゃねえのか。

とはさすがに聞けなかった。

■目を見るな

11月は塩事件からは何も無く、今のところ数日間は無事に過ごしている。

ので10月中旬にあった洒落にならん話を。

正確には出来事は去年で、当時は気に止めてなかったんだが、シゲオに話したら洒落にならん話にされた。

俺があるマイナー漫画雑誌を探しに電車で出かけていたら、同じ車両にシゲオが学校帰りらしい格好で居た。

スルーしようとしたがあえなく掴まり、ダラダラ会話する事に。

しかし、そこで思わぬ事態に。

なんと俺が買いに行こうとしていたマイナー雑誌を、シゲオも買いに行くと言うではないか!

何い!お前もか!

思わず手を差し出しそうになったが、それは気が早い。

その雑誌の中でも何を読んでいるかが重要なので……

とまあこの辺りは置いといて、意気投合する俺とシゲオ。

しかし、俺はシゲオの電波っぷりにやや距離をとっている。

そのうち、この間の塩事件もあって、会話が恐怖系に入ってきて、生き生きするシゲオ。キモイ

ただ安心したのは、そう滅多に家に入ることはないって言われた事だ。
この直後に塩事件があったわけだが(笑)

シゲオ曰く、「家ってのはそれだけで結界みたいなモンだから」らしい。

つまりあれか……原因は俺か(笑)
なんて(冷ややかに)笑っていると、「そう」と肯定された。ギャフン

その後、唐突に「目を見るな」っつーから咄嗟にシゲオから目をそらしたら、「俺のじゃねえよ」と何故か怒られた。

「じゃあ誰のだよ」って聞いたら、

「そっち系の」とか言いやがるから、そっち系ってなんだ、あれか、ヤーさんとかウホとかかとオブラードに包んで聞いたら、「馬鹿か」と返される。

会話の流れから、つまりアレ。幽霊とかそういうモンだと理解。

「でもよ、幽霊の目なんて見えないだろがよ」
当然俺はそう思った。

俺が初めて幽霊経験をしたのは、シゲオの気をつけて言われた後だし、それ以降も見ていない。

「見えるよ」

シゲオは俺の常識をサックリ切り捨てた。

はあ?となる俺に、シゲオが淡々と続ける。

こないだ知ったんだが、シゲオは霊とかを『あの子』って言う。

「あの子達の中にも種類があって、こっちにアピる子とアピらん子がいる。そんで、そのアピる子の大半は目を見てくる。勿論、目なんかないようなグチャな子もいるけど」

そこまで言ってシゲオは、自分の目を指さした。

「目ってのは脳の一部だろ。元々動物ってのは脳が重要なわけだが、死んじまえば脳だけになるようなもんなんだ」

ホホウそれは初耳だ。と感心しつつも、やっぱり電波っぷりにちょい右から左ぎみだったわけよ。

しかし、突然シゲオの話が変わった。

「今まで見覚えの無い人間に、やたらマジマジ見られた事あんじゃね?」

うん?見覚えの無い人間に「気をつけろ」言われた事はあっても、そんな体験は……
あったっつーか、それくらい誰にでもあるもんじゃないのか。

それは去年の冬。学校帰りにラッシュに遭って座る事も出来ず、もみくちゃになっていた時の話だ。

いきなり手を握られた。

オワア痴女か?!痴女なのか?!と少し期待する俺。

しかし、苦しい車内の中で俺の手を握れる位置にいる女性は、明らかに手が塞がっている。

大体の位置を予想して顔を見ると男……

人違いされとる?!俺の前にいる可愛いOLさんと勘違いしとる?キモ!

とか思って手を振り払おうとするが、狭くて上手くいかない。

しかも、2度目に顔を上げると、かなりの至近距離。

間に可愛いOLさん/かなり小柄で超凝視してくる。

ウホか!ウホなのか!と焦りつつも、必死に自分に、最近髪切ってねえし、もしかしたらゴツい女だと思ってるのかもしれんしな、人の好みは人それぞれだし、なんて言い聞かせた。

そのまま下車駅までがっちり手を掴まれていたんだが、それよりも視線が不気味だった。

あんな至近距離(推定30センチくらい?)で、他人に凝視されるなんて体験した事が無かった。

世の中にはそんな人もいるさと、心の広い俺は家に帰って妹に話したりして笑い飛ばし、その日まで忘れていた。

「いやー見られるくらい誰だってあんだろうよ。知り合いに似てたり」
とか言い返している時に、マイナー雑誌の置いてある書店の最寄駅に到着。

「あんまり間近で見られてたら気をつけたほうがいいかもな。2回目は洒落にならんぜ」
とか満面の笑みで言ってきやがった。

「ぅおい!俺これからその線に乗って学校に行くんだけど?!」

なんて問い詰めても、シゲオはニマニマ笑うだけで答えない。

気付かずに1年使ってたんだから大丈夫だとは思うが…

これからは何があっても、満員電車で目の前の人間の顔を見ないようにしよう…と心に決める俺。

そういや握られてた手が、満員電車だったのにやたら冷えていたなとか、思い出さなくていいことまで思い出してしまった。

ついでに、俺が心に決めている間に、某雑誌最後の一冊はシゲオに買われましたとさ。

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■非通知着信

塩事件の後、俺はシゲオからのメールは無視していた。

心霊現象とか俺は関わりたくなかったのが本音だし、正直チキンなので、自分から心霊現象に近寄る事もせんし、せいぜい洒落怖スレで、友人と話しをするネタを探しながらガクブルする程度だった。

塩事件の後、この先は何もねえだろうと高をくくっていたのかもしれん。

7日の夜、俺が家に帰ると、妹(学生)が帰っておらず、不機嫌な親に聞くと、バイト先の男先輩3人と、心霊スポットに出かけたという。

幽霊より狼に気をつけろと思いつつ、一応親とも面識のある男性陣なので、そっち方面の心配はなかった。

妹はバイト終わって10時過ぎに出たらしく、テレビで取り上げられた心霊スポットのT山?とか、そんなところに行っていた。

一応心配だったので何度か電話をするが出ない。

まあそんな事もあるさ…と兄の感慨にふけながら、母に言われて妹が帰ってくるまで起きて待つことに。

俺の電話をシカトした妹は、高校生のほうの妹にメールで連絡してきて、帰りが2時過ぎになるとのこと。

そんくらいの時間なら普通に起きてるし余裕余裕。

風呂入ってモニタ画面に向かった。

そこで携帯に着信。出ようとしたところで切れた。

妹からかと思ったが、非通知だったのでイタズラか間違いだと判断して、もう一度パソコン画面へ。

12時半過ぎてたんで、この時点でマナーモードにする。

巡回サイト行ったりしているうちに深夜1時。

おっと携帯が点滅してるぜと履歴を見ると、なんと着信11件。

……おお?!バイト先か?!妹か?!

焦って確認すると全部非通知。

さすがに気味悪くなって、非通知番号を拒否る事にした。

操作中にメールが入り、見るとバイト先の女先輩。シフト交換の件だった。

それに返信している最中に、丁度非通知から電話。

おうおう出てやろうじゃねぇか。可愛い声で「ごめんなさぁい」って言わない限りは許さないからな!

しかし、俺が通話ボタンを押すのと同時に電話は切れた。

畜生!ちょっと期待してたのに!

イライラした俺は、その怒りをスケベ心に切り替え、モニタの美少女にぶつける事決定。

1時半回った頃に、バイブの音にビビって軽く悲鳴をあげた。

だだだだ誰だ!宇宙人か?!未来人か?!超能力者か?!

うろたえつつ画面を見ると妹。驚かすなよ!もう!

少し2時過ぎるとか言われて、ああそうと返して電話終了。

電源ボタンを押してぎょっとする俺。

着信23件。全部非通知。

そこで画面で更にビックリすることが。

俺、バイブにしてたのに、妹からの電話以外の全て気付かなかった。

おかしい。どう考えてもおかしい。

とにかく非通知拒否設定をする俺。

もしか妹が何か連れて帰ってきたりすんじゃね?とアワワした俺は、シゲオにメールで助けを求める事にした。

他に頼れる人も居ないからだ。

深夜1時過ぎていたこともあって、返信こなかったらどうしようかと焦っていた俺の心配は気優に終わり、5分で返信。

キモ!まあその時点ではキモ!て思う余裕もなかったわけだが。

『塩でも撒いとけば?』なんて呑気な返信が。

オイオイオイオイ!いつもの思わせぶりなヒントはねぇのかよ!とか返したら、

『見ないとワカンネ。実際タクヤに憑いてるの見たほうが俺は面白いし』とか抜かしやがる。

俺は微塵も面白かねえぇぇぇ!お前もう一人で廃病院とか行って来い!とはツッコマずに、あくまで平静を装い、妹を案ずる兄的に対処法を聞き出そうとする俺。

とりあえず塩、それから玄関の電気は絶対に消すなだそうで。

車で出かけたって事を話すと、『じゃあ多分タクヤの家は平気じゃん』と言われる。

俺の家はって何だ、と思っているところに妹帰宅。

塩を撒いたら殴られた。心も痛い。

妹の最後の電話以降は、携帯を見ずに朝まで過ごしバイトへ。

バイト先でよやく携帯を開いて、な、なんだってー!!とバックルームで叫びそうになる。

着信アリっつーか、最早着信アリアリアリ状態。

不在着信が112件。それも非通知から。拒否したはずが解除されてる。

一人でアワアワしていると、夜勤(前シフト)の人に「友達来てるよ」と呼ばれる。

ああシゲオだなと勤務前なので私服で店内に出ると、予想通りシゲオだった。

珍しくマフラーを巻いていて、更に珍しく女の子と一緒。

俺が出て行くと、女の子は頭を下げて雑誌のあたりに行ってしまった。

ちょ、女子高生(笑)とか思ったけど、ふ~んな表情で大人な俺。

それは置いといて、時間もないし携帯をシゲオに見せる。

しばらくそれを見て、急に笑い出すシゲオ。

え?何?コワレタ?!電波だと思っていたがここまでとは!

人目を気にして止めると、携帯を返された。

買い換えろとか言われるのかと予想したが、特にそういうのは無く、ただ「大丈夫大丈夫今日中…いやバイト終わる頃にはなくなるよ」と言われる。

ちなみに、妹についてこなかったってのは確認できた。

なんでも、そういう場所から灯りをつけたまま帰るとついてくるらしいんだが、妹はバイト先の人の車で行った訳だから、その車の電気についていった可能性が高いらしい。

つまり、運転手の家が一番危ないとか。

電話は妹がその車内に居る際に、『その子』がかけてきたらしい。

今はどこからかけてるかはわからんが、憑きやすい人間に近寄りたくてやっているとか。
そんなこんなで、シゲオと女子高生は仲良く去っていった。

帰り際も頭を下げる女子高生。礼儀良い。

バイトが終わって携帯を確認すると、何と着信が13件。

直ってねーじゃん嘘つき。と思いながら確認すると、非通知が途中から普通の携帯番号に変わっている。

お…?誰だこれ?見知らぬ美少女から普通に用事か?

なんて思ってかけ直すが出ない。呼び出し音はするものの、アウお留守番サービスに繋がれてしまう。

メッセージ残すの苦手な俺はそのまま放置、しようとしたら電話が繋がった。

ザワメキとか学校のチャイムっぽいのが聞こえて、「はいはい」

お前何やってんの?!

「さっき携帯借りた時番号見てじゃん馬鹿だな」ってイヤイヤイヤそうじゃなくて!

と取り乱していると、店長の視線が割と痛くなってきたので、店の外でかけ直して聞いた所、シゲオが授業中に大量に俺に着信を残したのは、俺の携帯からシゲオの携帯に、例の『子』の興味を移すためだったらしい。

一瞬でもシゲオの方に行けばシゲオがなんとかできるらしく、対処は終わったそうな。

俺の携帯のままじゃ無理なんかと聞いたら、「無理ってこた無いが多分壊れるよ」とか言われた。

『携帯が』という主語をわざと入れなかったようにも聞こえたが華麗にスルー

なんでお前の携帯は無事で…とか、そこから無駄に長時間突っ込んだが、途中で授業が始まったらしく切られる。

今度礼でもしたほうがいいのかと思いつつ、チャリで走りながら、そういえばあいつに携帯番号握られたと、別な意味で洒落にならないことをしたと気付いたりした。

予想通り翌日、バイト時間を狙って留守録に入れられていた怪談。

即消去。

■無邪気な子供

本日土曜日、バイト先コンビニの女子高生と映画を見に行くことになった。

当然浮かれてんのは俺だけで、あっちはたまたま漫画が原作の映画を見に行く相手がいなかったってだけ。

生粋の漫画ヲタな俺は、たまにその子とジャソプの話題で盛り上がったり、漫画貸してあげたり借りたりとかあったわけ。

俺はもともと寂しく一人で行く気だっただけにウハウハだった。

漫画の会話(のみ)なら気まずい雰囲気にもならんしね。

映画館に着いてエレベーターを降りた俺は、速攻で閉めるボタンを押しかけた。

目の前に並んでいるカップルが、シゲオとこないだの女子高生だったからだ。

ま、こんな事もあるさ、バイト先の常連さんと他所で会うなんて地元じゃよくあると、やっぱり冷静な大人な俺。

世話にもなってるし、そこまで避けなくてもよかろうと話し掛けると、同じ映画を見に来てる事が判明。

チイッ!話し掛けるんじゃなかった!

女子高生同士意気投合してしまって会話に混ざれなくなるし、シゲオはなんか
「わざわざ自分から行く事もないだろ馬鹿だな」とか言ってる。不吉な事言うな!

もうチケット買っちゃったんだよ!

やや混みだったが、座席はなんとか横一列に四人。

俺、バイト先女子高生、女子高生、シゲオの順で座る。俺通路側。

情け程度に時々話し掛けてくれる女子高生に返事をしているうちに上映時間に。

照明が落ちて無駄に長いCM。

客席には土曜日だけあって、子供から大人まで大勢だった。

子供がCMにナイスリアクションを繰り出しているが、不快になるほど煩くはない。

これなら安心して見れるな、と思った頃だった。

4、5歳の子供が数人、場内を走り回りだした。オイオイオイ親何やってんだよ。

CMくらいで飽きちゃう子供ならDVDまで待ってろよとか思いつつ、子供を気にするが、俺以外の人はあんま気にしてないようなので、俺も華麗にスルー。

本編が始まっても、子供の笑い声と走る声は止まらない。

いい加減誰か怒れよと思いながらも、自分は黙って画面を見ていた。

そのうち、はしゃいだ子供等が、画面の前にまで出てくるようになりやがった。

さすがにこれは聴講室の係員が注意に来るだろうと内心笑ったが、その気配は無い。

サボってんじゃねえぞと舌打ちしかけて、自分の目を疑った。

スクリーン前に子供が立っても、映像に影が出来ないのだ。

子供は確かに、映像と光の間で飛んだり跳ねたりしているのに。

あれ?これもしかしてアレですか?

暖房で熱いほどになっているはずの場内で、一人寒気を伴う汗びっしょりになる俺。

隣のバイト先女子高生は画面に釘付け(勿論映画本編に)で、好きな役が出るたびに、隣のシゲオの連れ女子高生に「可愛いですよねー」なんて言っている。

見えてないのは確実だ。

シゲオの連れのほうも相槌を打ったりしてるくらいで、やっぱり本編に夢中。

シゲオも見えない上に、ここで怖いからって助けを求めたら俺かっこ悪い。

子供だし!そうだよ、例え他の人に見えて無くても、映画館で騒ぐ子供くらいいるさ!

そう言い聞かせて前に向き直った俺は、情けなくも悲鳴をあげそうになった。というかチビりそうになった。

前の席の客席に座る人の丁度間に、子供が乗り上げて俺の目の前に顔を乗り出していた。

その顔は憎しみに満ちたような顔ではなくて、どこにでもいる普通の笑い顔の子供。

動けなくなっている俺を見た子供は、「ふふふ」とか笑って更に近付いてくる。

このままだと得体のしれないマウストゥーマウスジャマイカ!とか思ってる場合じゃない。

咄嗟に顔を通路に背けると、通路にも子供が可愛らしいポーズで立っている。しかもこっちも割と近い。

いい加減洒落にならなくなってきた俺は、顔を下に向けたがこれがいけなかった。

椅子と椅子の間に、体育座りした子供がニヤニヤ笑いながら見上げてくるではないか。

気を失うかと思ったが、意外にもそれはなく、映画が終わるまで、子供の笑い声と時々身体に触れる小さい手の感触に耐えて、とにかくずっと目を閉じていた。

映画の内容ほぼ音だけで把握。

気になるとこだけ薄目で見ようとかすると、目の前の子供が「ばあ!」とかやってきて泣きそうになる。

女子高生が隣にいなかったら多分漏らしてたね(笑)

照明が点いて周りの客が動き出してから、ようやく子供の声も姿も見えなくなり、映画見た疲労感の50倍以上に疲れている俺。

女子高生達はなにやら映画の内容で盛り上がっているが、俺はそれを聞いて「へーそんな事もあったのか」と、ふらふらしながらついていくのが精一杯。

シゲオは珍しく(女子が居るからか)気を利かせて全員の飲み物を買ってきたりして紳士(笑)だった。

シゲオに話し掛けるタイミングを見計らっていると、連れの方の女子高生が「タクヤさん凄かったですね」と話し掛けてきた。

うん?映画の話じゃないの?と思いながら聞き返す。

「え?映画?」

「違いますよ、タクヤさんの周りに集まってたじゃないですか」

……ハア?

この女子高生も電波か!いや、さすがにここまで来たらそうは思わなかったが。

この後、駅まで歩きながら聞いた話では、シゲオとその女子高生は別に付き合っているわけではなく、単に心霊とかオカルト好きなので一緒にいるらしい。

この間の朝も、別な学校の女子高生が来れる時間に合わせて来たので、時間が早かったとか。

彼女にはシゲオみたいな妙な力はないらしいが、『それ』が居る事と大体の位置がわかるとシゲオが説明した。

女子高生二人はちょっと前を歩きながら、やっぱり映画の話に戻っていた。

その辺で、流されて相槌しか打てなかった俺もようやく落ち着いてきて、

「っつか今日のアレなんとかできなかったのかよ」と聞くと、

「は?何言ってんの?映画よりよっぽど面白いもん見れるのに、わざわざ止めるわけないじゃん馬鹿だな」

その言葉が聞こえていたのか、シゲオの連れのほうの女子高生が振り返って「シゲオ!」と怒る。

「今日のだったら映画の方が面白いよ!」

ちなみに、地縛霊っぽいのだったらしく、憑いてきてはいないそうな。

映画はレンタル出たら借りようと心に決めた。

■油

11月中旬、まあつまりこないだあったことなんだが、 俺もだが、マック店員も洒落にならんかったと思う話。

シゲオがなんか忙しいからと言ってあまり連絡してこなくなり、店にも来なくなった。

塩事件以降なんもなかったので、気にせず過ごしていたある日、猫が外に出なくなった。
いつもはドアを開ければ散歩に行くのに。

15日からだったかな?細かい日時は忘れたが、開けても出なくなった。

「家は結界」というシゲオの言葉を思い出し、少し怖くなったが、塩事件や女の顔事件もあり、多少の事は平気だぜハハンなんて構えていた俺だが、怖いものは怖い。

とりあえずシゲオにメールを送っておいた。

送った直後くらいから家の外に人の気配を感じて怖かったので、なるべく窓は開けんようにして、カーテンを閉めたりして過ごしていた。

一人で部屋にいると、インターホンがなったりドアが叩かれたり、カーテン越しに黒い影が見えたりした。

それだけでガクブルだったわけだが、見えるのは常に一瞬だったし、シゲオから『マック奢ってくれるんならなんとかしてみる』と連絡が入ったのでほっとする。

その時期から妙な耳鳴りも始まっていた。

主に家の外で、押しつぶしたような妙な音が延々聞こえる。

数日後の仕事中、シゲオが店に来た。

来たには来たが、入ろうとしない。

うちの店は自動ドアじゃないので、押さないと入れないんだが、押そうともしない。

ただドアの前で俺の方を見て、口をあんぐり開けている。

視線を良く見ると、俺の後。

怖かったが、朝だし同じシフトの奴もいたので振り返る。

何もいない。

何だよ釣りかよ!とつっこんだのとほぼ同時に、カウンタで後を見ていても大丈夫なように設置してある鏡に、黒い影が見えてしまった。しかも俺の背後に。

一瞬だったが確かに人型?だった。

ヒイイ!何コレ何コレ!と焦りつつ、真面目におでんを仕込む店員の鑑な俺。

結局シゲオは店に入らず外で待っていて、俺が上がってマックに行こうと言っても、明らかに帰りたいオーラムンムンで、数メートル先を歩いている。

俺の背後の黒いのはそんなにヤバイものなのか!焦る俺と黙るシゲオ。

マックに着いて一番安いのを頼むが、シゲオは食べない。ジュースだけ時々飲むだけ。

俺の方を見ようともせずに考え込んでいる。

「何?なんかマズイもんついてんの?こないだのより?」
半信半疑で、ぶっちゃけ演技じゃねえの?今日って4月1日?なんてバカにしていたが、目が明らかにヤバイ。いっちゃってる。

俺としては、そのシゲオの方が洒落にならんくらい怖かった。

で、せっかくない金絞って奢ってやったんだからと、強引に進めて食わせた。

それがまずかった。シゲオがトイレに駆け込んだかと思うと、食ったものを全部もどしてきた。(食事中の方スマソ)
店員もびっくり俺もびっくり。

で、涙目で席について、俺にいきなり「家族で油とか売ってるやついる?」と聞いてくる。

油?ごま油とか?いやコンビニには売っているがな、母は化粧品売ってるが。

なんて返事をしながら、俺は妹がガソリンスタンドでアルバイトしている事を思い出してシゲオに言った。

途端に、耳鳴りが酷くなった。

今まで普通の耳鳴りレベルだったのが、耳元で楽器を鳴らされているような大音響。

正直、鼓膜が破れそうで、目が充血していくのが自分で分かった。

意識が飛びそうになるのと同時に、シゲオが俺の目の前で大きな音を立てて手を叩いた。

店員びっくり、俺もびっくり。同時に音が止んだ。

俺が耳を押さえて目の前が真っ白になっている間に、シゲオが店員に頼んだらしい水が、目の前にコップ3、4杯あった。

何かと訊ねるよりも早く、シゲオがその水をわざとこぼし、駆けつけてきた店員に「あ、すみません、大丈夫です」とか言っている。

何が大丈夫なものか。

俺のほうにこぼされた水は見事にズボンに直撃し、漏らしたかのようになってしまったではないか。

それでもシゲオは大丈夫大丈夫なんて言いながら、水を全部こぼしてしまった。

当然店員は嫌な顔をしたが、シゲオ全く気にしていない。

店を出て、耳鳴りがしない事に気付いた。あれはいなくなったらしい。

シゲオに事情を聞くと、口元を押さえながら、「間近で見るのは初めてだったよ」とか誤魔化しやがった。

ついでに、「妹さんに聞いてみ」という。

家に帰って、妹に最近職場で何か変わったことがなかったかと聞いた。

初めのうちは何もなかったと言っていたが、おそらく、忘れていたか話したくなかったんだと思う。

実際に事があったのは、9月の終わりか10月の初め頃だったらしいから。

しつこく訊ねると、妹の職場で売ったガソリンで焼身自殺をした人がいる、という事件があったらしい。

俺は、黒い影と、耳元で聞こえた潰れたような声の正体に気付いた。

ちなみに、ズボンはマックを出て数分もしないうちに乾いていた。

(完)

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