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不在の家族 r+4687

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これは、かつて配達の仕事をしていた友人から聞いた話だ。

個人宅への配達は、しばしば「奇妙な人々」との遭遇を意味する。その日も、いつもと変わらない配達先に向かった。平屋建ての一軒家。チャイムを鳴らすが応答がない。不在連絡票をポストに入れ、車に戻る途中で電話が鳴った。先ほどの家の住人だ。

「すぐ戻ってほしい」と言う声。
近くにいたため、車をUターンして家へ向かった。だが到着しても反応がない。再び電話をかけると、すぐ横の窓から着信音が響いた。振り向くと、ブラインドの隙間から覗く目と視線があった。

声をかけたが返事はなく、ブラインドがさっと閉じられるだけ。再び玄関を叩き、声をかけたが反応はない。仕方なく再度、不在連絡票を入れて戻ることにした。

その話を職場の先輩に愚痴ると、何食わぬ顔で言われた。
「あそこの家には裏にBOXがあるから、そこに置いてこい。」

再び家に向かったのは日が暮れてからだった。玄関には明かりが灯り、室内からは家族の談笑が漏れてくる。何気なく横の窓を覗くと、先ほどのブラインドは開いていて、中では5人ほどがリビングに集い、楽しげにテレビを見ている。

「やっと家の人が揃ってるな」と安堵しながら、玄関に向かう。しかし、またもや反応がない。チャイムを押し、声をかけ、ドアを叩いても、何も返ってこない。窓越しに家族を見たばかりなのに、まるで自分の存在だけが透明になったかのようだった。

不可解な状況に焦りながら、裏に回ろうとする。しかし、裏手に行くには室内から確実に見える位置を通らなければならない。それでも意を決して裏手に向かい、先輩に言われた通りに荷物をBOXに入れると、ふと背後で笑い声が聞こえた。

振り返ると、ブラインド越しに見えた家族の姿が消えていた。先ほどまでの談笑も、テレビの音も、家の中の気配そのものが突然消えたのだ。

慌てて先輩に電話をかけると、「早く置いて帰れ。深く考えるな」と吐き捨てるような声が返ってきた。

どうしてそんなに急かすのか。理由を尋ねても、先輩はそっけなく答えるだけだった。
「知らないよ。ただ俺も、前の担当にそう言われたからやってるだけだ。」

それ以来、その家への配達だけは、誰も喜んで引き受けることはなかったという。

(了)

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