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短編 r+ カルト宗教

狂信者の勧誘 r+3617

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社会人になって間もない頃の話だ。あまりにも恐ろしく、忘れられない体験をここに記しておく。

テーマは「宗教の怖さ」。以下に登場人物を簡単に整理しておこう。

  • うっちゃん(私)
  • みっちゃん(高校時代の元親友)
  • 徳子(高校時代の同級生で、悪い噂が絶えなかった人物)

すべての始まりは、実家にかかってきた一本の電話だった。相手は、高校卒業間近に仲違いした元親友のみっちゃん。電話を受けた母から、「みっちゃんが連絡を取りたがっている」と携帯番号を伝えられた。

その時、営業職で忙しくしていた私は、親しい友人以外には連絡先を教えない主義だった。不審な気持ちを抱えつつも、実家の固定電話からみっちゃんに電話をかけた。

「うっちゃん! 久しぶり!」

突然の元気な声に戸惑いながらも、懐かしさが胸をよぎった。みっちゃんの話によると、「結婚するからぜひ会いたい」とのこと。疑念もあったが、久しぶりに旧友に会うのも悪くないと感じ、ファミレスで会う約束をすることにした。

約束の夜、指定されたファミレスの駐車場に到着すると、間もなく隣にみっちゃんの車が停まった。駐車場の端に停めていた私の車を特定した偶然に違和感を覚えながらも、懐かしい再会に胸を弾ませる。

しかし、車から降りてきたみっちゃんを見て驚愕した。高校時代の彼女は地味で控えめなオタク気質だったのに、派手なツーピースにけばいメイク。印象が激変していた。

「うっちゃん、変わったねぇ!」

その外見に戸惑いつつも、ファミレスに入り、会話を始めることにした。高校時代の思い出話や、懐かしい同級生たちの近況が話題に上る。しばらくして、みっちゃんが唐突に「うっちゃんに会わせたい人がいる」と切り出した。

ファミレスに現れたのは、徳子だった。

徳子は高校時代、同級生から嫌われていた人物だ。財布からお金を抜いたり、他人の恋人に手を出したりと、噂の範囲を超えたトラブルメーカーだった。そんな徳子が、みっちゃんと並んで座り、仲良さげに微笑む。

「二人とも、仲良かったっけ?」

私が問いかけると、二人は「最近仲良くなった」と笑顔で答えた。違和感は強まるばかりだ。そして、突然の問いかけ。

「うっちゃん、今の世の中どう思う?」

唐突すぎる話題に思考が追いつかない。そこから二人の話は信仰、六道、祈り、ツボ、写経といった宗教の話題に雪崩れ込む。

熱弁を振るう二人を前に、私は恐怖と嫌悪感を募らせていく。そしてついに、泣きながら席を立ち、帰る決意を固めた。

帰ろうとする私に、徳子がバッグをつかんで「帰さないよ」と凄む。その表情は血走り、常軌を逸していた。駐車場に向かう道中、彼女たちはしつこく付きまとい、私を車から引きずり出そうとする。

必死でドアを閉め、エンジンをかけるも、みっちゃんがボンネットに飛び乗る。なんとか車をバックさせ、その場から逃れることができた。

しかし、実家に電話を入れると、二人は既に玄関先で私を待ち伏せしていた。両親の助けを借り、警察を呼ぶことで事態は収束。幸い、被害はなかったが、その夜の恐怖は一生忘れられないものとなった。

後日談

その後、他の同級生からも被害の話を耳にした。同じように宗教勧誘を受けた人は少なくなく、数十人にも及んでいたという。二人がどうしてそのような行動に走ったのか、その背景を知ることはなかった。

人を狂わせる何か――宗教という名の力に触れた経験だった。

(了)

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