短編 洒落にならない怖い話

怪奇珠算塾【ゆっくり朗読】3800

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俺が小学生だった頃、近所の小さなそろばん塾に通ってた。

398 :クリスマス特別企画 :2001/09/26 17:46

俺は、毎年、クリスマスの日の塾を楽しみにしてた。

クリスマスの日だけは授業をあまりやらずに、先生が8ミリフィルムの映画を子供たちのためにかけてくれるからだ。

アニメが主体で、「がんばれタブチ君」とか、ディズニー映画、チャップリンの映画などを見せてもらう。

それが終わったら先生がお菓子をみんなに分けてくれる。毎年、すごく楽しかった。

しかし、俺が小学六年だったその年はいつもと様子が違っていた。

十畳ぐらいのスペースの小さな教室で生徒は十三人くらいいただろうか。

先生が映写機に8ミリをセットすると、教室の照明を全部消し、映写が始まる。

シャーーッという機械の音。手製のスクリーンに光が映る。

ところがいつまでたってもお目当ての『がんばれタブチ君』が始まらない。

「あれ?おかしいなぁ。ちょっと待っててくれよ」

と先生が言って、何か道具を取りにいくのか教室を出て行った。

まだ回りっぱなしの映写機は、真っ白な画面からしばらくすると突然、何かを映し出した。

……女の子。

俺らと同年代くらいの女の子が元気いっぱいに公園らしきところで遊んでいる。

俺らもよ~く知っているその女の子。

そう、先生の娘さんだ。趣味の8ミリカメラで撮ってあげたものだろう。

俺たちは急に怖くなった。

なぜならその女の子は一年程前に病気で亡くなっているからだ。

いつもはバカ騒ぎばかりしている俺たち生徒は、一言もしゃべらず、なにかスクリーンから目をそらすようにうつむいている。

三分くらいたっただろうか。

ようやくフィルムが終わって、映写機が自動的に止まった。

レンズからの光も消えて、教室内はまた、真っ暗に。

一番前の席に座っていた生徒が暗闇に耐えられなくなったのか、

席を立って、「スイッチどこかな?」と照明のスイッチを探し始め、こちらを振り返ったその時!

後ろの席のほうに指をさして、泣き声とも叫び声ともつかない声を出しながら、教室を走り去った。

堰を切ったように教室の全員が無言で出口に向かって走り出した。

集団ヒステリーってやつだと今になって思い込むようにしてるが、

それでも未だに腑に落ちないのは、あの時、最後に教室を出た仲のいい友達は、

塾の出口でものすごい力で先生に腕をつかまれて「逃げるんじゃない」と、すごい形相で言われたらしい。

それをきっかけに俺は塾はやめましたが、その塾自体はまだ営業中。

(了)

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