怪談とかじゃなくて、リアルな話だ。
前に何かのCMに出ていた、山を掃除する人――アルピニストの誰かがテレビで話していたことなんだが……。
エベレストみたいな本格的な登山になると、道中にはさまざまな危険が待ち構えている。滑落、雪崩、クレバス――命取りになるものばかりだが、中でも滑落に関しては、まれにだが助かってしまう人がいるらしい。
山を登っている最中、ふと下を見下ろすと、遠く離れた谷底で助けを求めて手を振る人の姿が見えることがあるそうだ。
だが、そこは絶壁の谷底。ヘリコプターはもちろん、人が降りていくなんて到底不可能な場所だ。
そういう時、どうするのか。
答えは……
見なかったことにする。
助けを求めて手を振っている人がいる。叫んでいる声が聞こえるかもしれない。でも、どうにもできないのだ。だから「気づかなかった」ことにするしかない。
生きている人間が目の前にいて、その姿が見えているのに、見殺しにするしかない。
必死で手を振ろうが、どれだけ大声で叫ぼうが、登山者たちにとっては、それはもう“死人”でしかない。
そう考えたら、ものすごく怖くなったな、俺は……
[575 :あなたのうしろに名無しさんが…:04/06/08 04:28 ID:Xv918j41]