-
-
峠に残った靴音 nw+291-0108
2025/10/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あの夜の湿気を帯びた空気を思い出すたび、いまでも背中の皮膚がじっとりと汗ばむ。 季節は夏の終わりだった。蝉の声にひぐらしの鳴き声が混じり、昼と夜の境目が曖昧になり始める頃だ。 家は山に囲まれた集落にあ ...
-
-
楽しいはずの場所 rw+2,241-0121
2025/10/27 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
父の実家のある街は、不思議な場所だった。 山と海に挟まれているのに、どちらの匂いも色も、はっきりとは感じられない。潮の湿り気も、土の重さも、途中で途切れてしまう。田舎と呼ぶには人も車も多く、都会と呼ぶ ...
-
-
低音のないオルガン rw+2,513-0126
2025/10/27 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
家に、古いオルガンがあった。 母が私を産む前に、中古で手に入れたものだと聞かされていた。リビングの窓際、テレビ台と本棚の間に押し込まれるように置かれ、家族の誰も積極的に触ろうとはしなかった。木製の鍵盤 ...
-
-
母が抱いていたもの rw+2,225-0120
2025/10/27 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、母に起きた出来事を、私の視点から語る話です。 半年以上にわたって続いた出来事で、今も完全には終わっていません。終わったと思えない、というほうが正確かもしれません。 七月の初め、私は結婚を控え、 ...
-
-
八年目は終わらない nw+316-0215
2025/10/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
一九九七年六月二十六日。薄曇りで、アスファルトがぬめるような午後だった。 M町の繁華街。雑居ビルの壁面に設置された巨大スクリーンではJリーグ中継が流れ、実況がけたたましく響いていたはずなのに、俺の立っ ...
-
-
三十二才のきよみちゃん~ドラえもんの未来 rw+1,583
2025/10/26 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学校三年生の頃のことだ。 まだランドセルの匂いが新しく、放課後は遊ぶことと空想することだけで毎日が埋まっていた。 きよみちゃんという女の子がいた。いつも一緒にいた。家を行き来して、互いの家の匂いまで ...
-
-
赤に還る r+4,092
2025/10/26 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
坂本の話を、私の口から語らせてもらう。いや、正確には、あの日から私は坂本ではなくなった。 坂本という名を持つ人間は、もうとうにどこかへ消え失せた。残っているのは、赤に浸食された私の肉体と、まだ人間であ ...
-
-
見ていたのは、空だけではなかった rw+1,675-0126
2025/10/25 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学校二年から四年までのあいだ、私は週に二度、放課後になると姉と並んで、学校のすぐ裏手にあるそろばん塾へ通っていた。 校舎の裏に回ると、すぐに視界が開ける。その一角に、どう考えても場違いな墓地があった ...
-
-
一日先の印字 rw+3,042
2025/10/25 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
あの夜の匂いを、いまも思い出せる。 湿った床と油の混ざった、古い揚げ物のような匂いだ。あの工場で働いていたころの、秋の終わりの話になる。 地方の小さな惣菜工場だった。レシピはすべて本部指定、作るのは日 ...
-
-
幻肢の記憶 n+
2025/10/24 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あの夜の病室を思い出すと、今でも胸の奥にひやりとした重みが残る。 私は小さな診療所を営んでいる開業医だが、入院設備も僅かながら備えており、救急指定も受けている。病棟の夜はいつも不気味な静けさに満ちてい ...
-
-
二週間、満たされていた rw+5,399-0116
2025/10/24 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
地方の大学に進学したばかりの頃、あの頃の自分は完全に浮かれていた。 初めての一人暮らし。都会では考えられないほど近くにある山と川と海。何もかもが新しく、触れるものすべてが自分を歓迎しているように思えた ...
-
-
答えなかった旅行者 rw+4,475-0201
2025/10/24 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
初めて海外へ出たのは、二十代の終わりだった。 仕事にも生活にも行き詰まりを感じていて、気分転換のつもりで申し込んだ団体旅行だった。行き先は中国の杭州。湖と山に囲まれた古い街で、写真で見る限りは穏やかで ...
-
-
十二階の外にあったもの n+
2025/10/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは幻覚だったのか、それとも私の足が一歩だけ別の世界に踏み入ってしまったのか…… いまだに答えは出ていない。 三年前のことだ。当時の私は学生で、生活費を稼ぐために運送のアルバイトをしていた。社員の男 ...
-
-
神の視点 r+3,516
2025/10/23 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
伊勢の内宮へと向かう参道を歩いていた。 まだ若く、何に祈るという明確な理由もなく、ただ連れに勧められるままについて行っただけの参拝だった。空気は澄み、木々の梢から漏れる光が砂利道をちらちらと照らしてい ...
-
-
禁じられた部屋の十分間 r+2,503
2025/10/23 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学生の頃、地元の大学がやっていた少年サッカー倶楽部に入っていたことがある。 自慢できるほどの腕前ではなく、昔も今も下手の横好きといったところだ。けれど、あの時の夏合宿で経験した出来事だけは、いまだに ...
-
-
油の床の誓約 r+2285
2025/10/23 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
大阪で万国博覧会が盛大に催された年のことを、いまでも鮮やかに思い出せる。 あの頃の私は典型的なヒッピーで、東京からヒッチハイクで関西へ入り込み、外国人でごった返す夜の繁華街をひやかし半分で歩き回ってい ...
-
-
余った糸 nw+256-0210
2025/10/22 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
「ちょっと、君の手を貸してくれないかな?」 運転席から差し出されたその手は、ひどく温かかった。冬でもないのに、掌だけが体温を持っているような、不自然な熱だった。初対面の相手に触れられること自体が気持ち ...
-
-
山で顔を盗まれる話 rw+1,994-0215
2025/10/22 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
彼は昔、中国の山奥まで漢方薬の買い付けに入っていたことがある。 年齢も、顔つきも、話し方も、どこにでもいる穏やかな男だった。だが、酒が進むと、ときおり山の話をする。そのときだけ声の奥に、乾いた音が混じ ...
-
-
壷の中の水底 n+
2025/10/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの壷の重さを思い出すと、腕の奥にひやりとした感触がよみがえる。 ずっと昔、私が中学生だった頃、夏の終わりに起きた出来事だ。 私の実家は郊外の古い一軒家で、建て増しと補修を繰り返してきたせいで ...
-
-
【泣ける!!感動名作心霊物語】ショートケーキの約束 #7,822-0120
2025/10/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 定番・名作怖い話
★人気ベスト300俺の妹は、俺が十七の時に死んだ。 今からもう八年も前のことになる。 まだ六歳だった。末っ子で、上も下も男ばっかりの兄弟の中に生まれた唯一の女の子。俺も兄貴も弟も、全員が可愛がった。ちっちゃくて病弱で、 ...
-
-
中に入っているもの r+2,158-0118
2025/10/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
大学三年の夏、あの夜のことは今もはっきり思い出せる。 当時、駅前の飲食店でアルバイトをしていて、閉店作業が終わると決まって終電はなかった。寮までは自転車で十分ほど。深夜の道を走るのは疲れているはずなの ...
-
-
西葛西と南砂町のあいだ rw+3,761-0120
2025/10/21 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
釣りだと思われても構わない。 ただ、あの時に見たものを、このまま胸の奥に溜め込んでおくのが耐えられなくなった。それだけだ。 その日も、いつもと同じ時間に東西線に乗っていた。 夕方五時前。仕事が終わり、 ...
-
-
つかまえた赤 nc+
2025/10/20 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
先週の金曜、夕方のことだった。 職場を出て、コンビニの駐車場で煙草に火を点けたそのとき、ポケットの中で携帯が震えた。警察署からの電話。一瞬、心臓が跳ねた。事故?違反?それとも誰か……いや、俺には思い当 ...
-
-
三度目を待たない rw+2,600-0217
2025/10/20 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
あれは、夏の終わりの夜だった。 湿気が肌に貼りついて、息を吸うたびに肺の奥までぬるい空気が入り込んでくる。昼間の熱を抱えたアスファルトが、足の裏からじわじわと体温を奪っていくような、逃げ場のない夜だっ ...
-
-
動く跡 rw+2,740
2025/10/19 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
二階の奥の部屋に、ひとつだけ残っていた。 不動産営業をしていた頃の話だ。売却理由は借金。珍しくもない。築十数年の二階建てで、外壁も床もまだ使える。軽く手を入れれば十分に売れる。同行した業者も同じ見立て ...
-
-
ショッピングモールで世界がズレた話 rw+6,197-0210
2025/10/18 -中編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
先日、かつて出会った「元少年」と再会した。 その顔を見た瞬間、封をされたまま沈んでいた記憶が、一気に浮上した。書き留めなければならない、そう思わせるだけの重さを伴って。 五年ほど前のゴールデンウィーク ...
-
-
鎧の音が来る rw+4,467-0114
2025/10/18 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは私自身、いまだに現実だったと断言できない出来事だ。 夢だったと言われれば否定する材料もない。だが、あの音だけは、今も身体の奥に残っている。だから書き残す。 物心ついた頃から、私の家は落ち着く場所 ...
-
-
発見 rcw+2,711-0114
2025/10/18 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
突然だが、俺の話をさせてほしい。 小学校二年生のある日、母に激しく叱られた。理由は思い出せない。ただ耳に残っているのは「お前なんかうちの子じゃない」という言葉だ。叫び声のように投げつけられ、胸の奥が冷 ...
-
-
一度、受け入れられた nw+223-0114
2025/10/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あのとき見た深海の青を思い出すと、胸の奥が静かにざわつく。 それは恐怖ではない。だが、安らぎでもない。 もっと厄介な何かだ。 数年前の夏、私は趣味のスキンダイビングで沖に出ていた。酸素ボンベは ...
-
-
混ざる声 ncw+379-0114
2025/10/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
学生時代に一度だけ、口外すまいと固く決めた出来事がある。 だが年月を経ても胸の底に沈殿したまま、夜になると耳鳴りに紛れて浮かび上がってくる。黙っていれば腐るだけだと、最近になって思うようになった。だか ...
-
-
定刻通りに来ない駅 rw+2,732-0109
2025/10/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
京急大師線に乗っていた日のことだ。 あれが現実だったのか、それとも眠気に引きずられて見た夢だったのか、今でも自分では判断がつかない。判断できないまま、あの時間だけが記憶の底に沈まず残っている。 午前中 ...
-
-
魚屋の裏口 r+2,393
2025/10/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
平成の始め頃、俺はまだ小学一年生で、街の隅っこみたいなローカルな場所に住んでいた。 親父はスーパーの鮮魚店で働いていた。個人経営というには規模が大きくて、八百屋や肉屋なんかと一緒に、昔ながらの威勢のい ...
-
-
的場浩司のテンシンキアクリョウキョウ/聞いちゃいけない歴史的都市伝説 rw+5,277-0322
2025/10/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 都市伝説
そのノック、三回目だけ場所が違う これは、テレビ番組『やりすぎ都市伝説』で紹介されたエピソードをもとにした話だ。 奇妙な伝承の数々が語られる中でも、この話は特に不気味で、人々の記憶に焼き付いているらし ...
-
-
休日のオフィス r+2,405
2025/10/17 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
ここに書き込むのは初めてなんだけど、ずっと胸の奥に引っかかっていることがある。 誰にも話せない。けれど吐き出さないと、頭の中で腐っていきそうで、どうにもやりきれない。だからこれは俺の記録だ。読み終わっ ...
-
-
祖父のこと n+
2025/10/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の玄関に立ち尽くした影を思い出すと、心臓の奥がひやりと冷える。 私は祖父のことが人一倍好きだった。背が高く、腹の出た体格をしていながら、眼差しは穏やかで、滅多に多くを語らなかった。しかし黙 ...
-
-
聞こえる部屋 rw+474-0120
2025/10/16 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
平成の始め、高校一年の夏休みを前にして、父の会社が潰れた。 床が抜けた、という比喩は正確じゃない。音もなく、気づいたら立っている場所がなかった。担任に頭を下げ、夕方から弁当工場で働き始めた。昼は授業、 ...
-
-
天窓の向こう rw+2,302-0212
2025/10/16 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学生の頃、近所の英語塾に通っていた。 田舎町では少し浮いた存在だった。日英ハーフの先生が、自宅を改装して開いていた塾で、授業はすべて英語。先生は町の大人たちとは雰囲気が違い、髪も瞳も明るく、どこか遠 ...
-
-
いとこの子 nc+
2025/10/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、真夏の午後だった。 陽炎が立つような暑さのなか、畳の匂いと蝉の声に包まれた縁側で、俺はぼんやりと座っていた。足元には、幼い子どもが一人。いとこの子――まだ二歳かそこらの、小さな男の子だった。 ...
-
-
帰路を示すもの rcw+6,158-0109
2025/10/15 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、祖母から幾度も聞かされた曽祖父の戦中の体験談である。 けれど私は、それを単なる戦争の記憶として聞いたことが一度もない。耳にするたび、話の底に沈んだ何かが、少しずつ形を変えてこちらを覗き返してく ...
-
-
家族の話をやめない人 rw+4,571-0119
2025/10/15 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
これは、俺の職場での話だ。 先輩のことを思い出すと、今でも喉の奥がひやりと冷える。尊敬できる人だ。仕事は正確で、無理をしない。派手さはないが、最後まで投げ出さない。その積み重ねで、社内外から信頼を集め ...
-
-
ドッペルゲンガーの食卓 r+2,458
2025/10/15 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
高校生の頃に体験した話をする。 今でもあれが何だったのか、うまく説明できない。 その日の放課後も、部活に入っていなかった俺はいつものように六時半ごろに家へ帰り着いた。門を開け、玄関を開けると、台所から ...
-
-
三か月ごとの石 rw+1,310
2025/10/14 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
大学生の頃、駅前のファーストフード店で深夜バイトをしていた。 油と洗剤の匂いにまみれた時間のなかで、ひとりだけ妙な働き方をする先輩がいた。三か月働いて三か月休む。それを何度も繰り返す。リーダーからは露 ...
-
-
赤い頭のスーツ男 n+
2025/10/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
友人の川崎が、煙草の火を三本目に移す頃、ぽつりとこんなことを言った。 「トマト、好きか?」 俺が答えるより早く、彼は続けた。「……火を通せば、まあ、大丈夫なんだ。でもな、生で食うのは、もう無理だ」 そ ...
-
-
十年越しの遅刻 r+3,459
2025/10/13 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
十二年ほど前から工事屋をやっている。 独立したての頃は右も左も分からず、人を集めるのに苦労した。そんな折、ある職人を呼んでいたのだが、そいつが当日になって姿を消した。朝、待っても来ない。電話をしても繋 ...
-
-
片づけてしまった夜 nw+393-0123
2025/10/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
その晩、私は一人で酒を飲んでいた。 仕事が一段落し、特別な理由もなく、ただ缶を開けただけだった。冬の終わりで、部屋は乾いていた。換気のつもりで、寝る前に少しだけ窓を開けていたのを覚えている。 風が入っ ...
-
-
取ってはいけない予約 rw+4,540-0120
2025/10/12 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
京都の三条にある飲み屋で聞いた話だ。 語ってくれたのは、三十代半ばの男だった。勤め先の同期会で幹事を任され、店の手配から連絡まで一手に引き受けたという。話し方は落ち着いていて、怪談を面白がって盛るよう ...
-
-
煙の向こうにいた人 r+4,549
2025/10/11 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
沖縄県俺の実家は沖縄の、とある海辺の町にある。 観光客が必ず足を運ぶ大きな水族館があって、その周囲は広大な公園として整備されている。地元の人間にとっては、遠足や家族の休日に必ず一度は訪れるような場所だ。 子 ...
-
-
赤い輪の記憶 r+2,935
2025/10/11 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
小学校一年の頃だった。 場所はモスクワ。父の仕事の都合で一家ごと移り住んでいたのだが、週末になると補習のような形で、現地の日本語学校へ通っていた。校舎は古く、夏でも薄暗い灰色の光が廊下に差し込んでいて ...
-
-
存在そのものが癇に障る rw+2,919-0211
2025/10/11 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
生まれてからずっと、ひとつだけ説明のつかない体質を背負っている。 自分では何もしていないのに、なぜか人を激怒させてしまう。 最初に異常に気づいたのは幼い頃だ。親戚が集まる席で、ただ黙って座っていただけ ...
-
-
戻ってきた側 rw+2,090-0217
2025/10/11 -短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚
昨日のことだ。 冬の夕暮れ、久しぶりに実家へ立ち寄った。玄関の引き戸を開けた瞬間、埃と灯油の匂いが混じった懐かしい空気がまとわりつく。両親は不在で、家の中は異様に静かだった。冷蔵庫の低いうなりと、壁掛 ...