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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2025

赤いひも n+

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大学を卒業して新しい職場に通うため、春に引っ越しをした。

部屋は二階建ての小さなマンションの一室で、古さはあったが駅からも近く、社会人一年目の私には十分な環境に思えた。契約の手続きも滞りなく済み、荷物を運び込み、いよいよ新しい生活が始まるという期待で胸が高鳴っていた。

ところが入居して数日も経たないうちに、不動産会社から連絡が入った。用件は「確認してほしいことがある」という曖昧なもので、嫌な胸騒ぎを覚えながら事務所へ向かった。

担当者は妙に言い淀みながら説明した。数日前、業者が部屋に入って内装の確認をした際、奇妙なものを見つけたというのだ。天井の照明を覆うプラスチックカバーを外したところ、その中に赤い紐がぎっしり詰め込まれていたらしい。同じような紐は部屋のあちこちに散乱していて、ドアノブに絡みついているものまであったと聞かされた。

「こちらの心当たりはございますか」
そう尋ねられ、私は首を振るしかなかった。そんなものを置いた覚えなどないし、引っ越しの立ち会いで部屋が空っぽだったことは担当者も確認しているはずだ。

実際に見せられた紐は、指ほどの太さの布地で、中に綿のようなものが詰められていた。和風の質感で、下駄の花緒に近い。長さは腕より少し短い程度。一本だけでも不気味だというのに、それがダンボール二箱分もあったと聞かされ、背筋が冷たくなった。

私は霊感というものとは無縁だ。入居後も不気味な体験など一度もなく、むしろ仕事の疲れを癒す安らぎの空間として過ごしていた。それだけに、引っ越した後にそんな出来事が起きたという事実は気味が悪かった。まるで私が出て行くのを待っていたかのように。

しばらくその話を誰にもせずにいたが、妙な一致を見つけてしまった。ネット掲示板を眺めていたとき、偶然似たような体験談を目にしたのだ。そこには「新築マンションの内覧時に、赤い紐がカーテンレールからぶら下がっていた」と書かれていた。投稿者は不動産会社のバイトで、担当者や大家に確認しても誰も心当たりがなかったという。

読み進めるにつれ、心臓が嫌な鼓動を打ちはじめた。赤い紐の形状も、太さも、長さも、私が見せられたものと同じ。しかもその物件では、客が気味悪がって契約を取りやめたとあった。

私はその画面を閉じたあともしばらく放心していた。なぜ赤い紐が繰り返し現れるのか。誰が置いていくのか。なにを意味するのか。考えれば考えるほど、答えは遠ざかるばかりだ。

ひとつだけはっきりしていることがある。あの部屋を去ってからというもの、私は夢の中で赤い紐に追われるようになった。畳の上に散らばる紐、押し入れの奥から溢れる紐、腕に絡みついて離れない紐。目を覚ますたび、布団の縁に赤い跡が残っているような気がしてならない。

現実なのか夢の残滓なのか、もう区別がつかない。ただ、あの部屋にあったはずの紐が、少しずつこちらに近づいてきている気配だけがある。

[出典:21 :本当にあった怖い名無し:2008/12/14(日) 03:08:45 ID:ECYn0D9zO]

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