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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2025

赤いひも nw+298-0217

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引っ越したのは、大学を卒業してすぐの春だった。

駅から近い、小さな二階建てのマンション。築年数は古かったが、社会人一年目の私には身の丈に合っていた。契約も問題なく済み、荷物を運び入れた夜は、ようやく自分の生活が始まるのだと少しだけ誇らしかった。

入居して三日目、不動産会社から連絡が来た。

「確認していただきたいことがありまして」

曖昧な言い方だった。部屋に不備でもあったのかと事務所へ向かうと、担当者は落ち着かない様子で封をされたダンボール箱を指差した。

「内装業者が最終確認に入った際、照明のカバーの中に、これが入っていたそうです」

箱の中には、赤い紐が詰め込まれていた。

一本ではない。ぎっしりと。指ほどの太さの布製で、中に綿のようなものが入っている。和風の質感で、下駄の花緒に似ていた。長さは腕より少し短い。触れると、妙にやわらかい。

照明カバーの中だけではないという。ドアノブに絡み、押し入れの隅に落ち、台所の棚の奥にもあったらしい。合計で二箱分。

「お心当たりは」

首を振るしかなかった。入居時の立ち会いで、部屋は空だった。少なくとも、目に見える範囲には何もなかった。

不動産会社は「処分しておきます」と言った。私はその言葉に甘えた。実物はもう見たくなかった。

それから部屋で妙なことが起きたわけではない。音も匂いも異変もない。仕事から戻れば静かな部屋が待っている。ただ、ふと視界の端に赤いものが入るたび、心臓が跳ねた。ポストのチラシ、コンビニの看板、洗濯物のタグ。どれも紐ではないのに、紐に見えた。

数週間後、何気なくネット掲示板を眺めていたときだった。

「内覧時、照明カバーの中に赤い紐が詰まっていた」

書き込みの日付を見て、指が止まった。

私が入居する三日前。

物件の住所は伏せられていたが、間取りが同じだった。二階建て、駅近、築古。投稿者は不動産会社のバイトで、担当者も大家も心当たりがなかったと書いている。

形状、太さ、長さまで一致していた。

その投稿の最後に、こうあった。

「確認したら、数が増えた気がする」

意味がわからなかった。増えるとは何が。処分したのではなかったのか。

その晩、帰宅して靴を脱いだとき、違和感があった。

右の靴紐が、赤かった。

私は黒いスニーカーしか持っていない。紐も黒のはずだった。照明の下で見直すと、確かに黒い。だが視線を逸らすと、一瞬だけ赤く見える。

洗濯機の底に、見覚えのない短い布片が落ちていた。触れるとやわらかい。指ほどの太さ。中に綿のような感触。長さは、腕より少し短い。

私はそれを捨てなかった。ゴミ袋に入れようとすると、どこから持ってきたのか思い出せなくなるからだ。

掲示板を再び開いた。例の投稿は消えていた。代わりに新しい書き込みがあった。

「赤い紐の件、また出ました。確認した人のところに行くらしいです」

投稿日時は、ついさっき。

私は誰にも話していない。住所も書いていない。掲示板に書き込んだ覚えもない。

画面の下に、自分のIPらしき数字が並んでいるのに気づいた。

眠りに落ちる直前、天井の照明がわずかに揺れた。

カバーの内側に、なにかが詰まっている影が見えた気がした。黒いはずの空間に、柔らかくうねる線が何本も。

翌朝、布団の縁に細い跡が残っていた。指でなぞると、消える。だが目を閉じると、数が増えている。

私はあの部屋を出た。

それでも、紐は減らない。

確認するたびに、一本増える。

今も、これを書きながら、机の端に赤いものが見えている。

視線を向けると消える。

だから、見ないようにしている。

もしあなたが、似たような投稿を見つけたら。

どうか、確認しないでほしい。

[出典:21 :本当にあった怖い名無し:2008/12/14(日) 03:08:45 ID:ECYn0D9zO]

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