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蜘蛛とおばあさん【ゆっくり朗読】800

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近所に一人暮らしのおばあさんがいる。

310 :3-1@\(^o^)/:2016/05/10(火) 11:27:40.92 ID:my1MCSdO0.net

これは、おばあさんの娘さんから聞いたお話。

ご主人を亡くして以来、20年以上一人暮らしをしているおばあさんは、今年90才を超えた。90才というと、実子にも孫がいる年代だ。

子供たちは比較的近距離に住んでいるが、毎日通うには困難な距離だ。
兄弟が三人いるので、一日おきに交代でおばあさんの様子を見にくる。
長年の畑仕事のおかげで足腰が丈夫だから、おばあさんは一人暮らしにも困らない。
だが最近、少しばかり忘れっぽくなった。

子供たちは、おばあさんが火の不始末で火事でも起こさないか、あるいは、悪質な訪問販売に金銭をだまし取られないか、そんなことを気にしていた。

ある時、みんな都合が悪くて、一週間ほどおばあさんの様子を見に行けないことがあった。
一週間ぶりに長女が尋ねたとき、おばあさんはコタツに座ってうつむき、何かブツブツ言っていた。

「そうか、そうかお前は元気だねぇ。気を付けるんだよ。またおいで」

下を向いて、そう誰かに話しかけていたのだ。
長女が青ざめたのは言うまでもない。
一週間誰も来なかったせいで、一気にボケてしまったのではないか、そう思ったのだ。
だが、おばあさんの頭はしっかりしていた。
訪れた長女を見ると、おばあさんはお茶を入れに台所に立った。
急須と湯呑を持って戻ってきたおばあさんは、いたずらっ子のような顔で長女に言ったという。

「あたしがボケたと思ったんだろう。ボケたりしていないよ。最近友達ができてね。毎日遊びに来てくれるんだよ」

数日前、おばあさんは一匹の蜘蛛を助けたのだそうだ。
台所にいたハエトリグモ。体長一センチにも満たない、巣を張ることもない蜘蛛だ。
蜘蛛が台所のシンクに落っこちて、とても困っていたのだと言う。
右往左往する蜘蛛の様子を、おばあさんは面白く観察していたのだが、そのうち気の毒になって、そっと手を差し出した。
すると蜘蛛は、逃げることもなくおばあさんの手に飛び移ってきた。
そうして、しばらくおばあさんの顔をじっと眺めていたのだと言う。
その様子を見たおばあさんは、蜘蛛が自分に懐いたのだと感じた。
こんな小さな蜘蛛でも助けてくれた人間の事がわかるのだと、感心したのだそうだ。
窓を開けて外に逃がしてやったのだが、
どういうワケか、次の日からおばあさんがコタツで休んでいると、人懐こくやってくるようになった。
最初は違う蜘蛛だと思ったが、
何気なく話しかけると、まるで言葉が判るようにおばあさんをじっと見つめ、
しばらく話をすると、チョコチョコどこかへ去っていく。
その様子がとても可愛く、蜘蛛が来るのが楽しみなのだと言った。
娘さんは密かに、やはりボケたのではないかと疑った。
蜘蛛を話し相手にするなんて、なんだか哀れにも思えた。
そんな心情を悟ったように、おばあさんがこう続けた。

「昨日はね、うっかりセールスマンを家にあげてしまって、売り込みを断りきれないでいた所を、あの蜘蛛が助けてくれたんだよ。契約書にサインしろといって書類を広げた所へ、あの蜘蛛がやって来て、書類の上を這いまわったんだ。
そのセールスマンは蜘蛛が大嫌いだったみたいで、逃げるように帰って行ったよ。あの蜘蛛は賢いんだ。昔話のようだけど、蜘蛛の恩返しって、本当にあるもんだね」

「にわかに信じられない話ですけど、今日もおばあさんの所を訪ねたら、小さな蜘蛛とおばあさんが、楽しそうに話をしていたんです。おばあさんにとっては、蜘蛛でも大切な友達なんですね」

娘さんは苦笑いしながらそう語った。

蜘蛛とおばあさんの不思議なお話。

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