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書かれていない戦国 r+2,443

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高校の三年、確か春先だったと思う。

その日は雨で、教室の窓は白く曇っていた。日本史の授業。午後イチの五時間目。
あの時間帯って、どうにも意識が沈む。俺はずっと、眠気と戦っていた。

黒板の前では歴史教師の〇〇が、例によって板書を殴り書いては即座に消している。
その人、無愛想な中年で、機嫌が悪い日はチョークを投げてきたりするから、みんな一応ノートは取るふりだけしてた。
俺も例に漏れず、ペンを握って半分夢の中で教科書を開いていた。

……次に意識が戻ったのは、ふっと頭が揺れた感覚だった。
瞬きするみたいに、ごく短い、数秒か数十秒程度の眠りだったんだろう。
ただ、俺のノートには、ヘロヘロの文字がびっしりと並んでいた。
半分寝ながら書いた、あの独特の字体。字というより、溶けかけた記号の群れ。

――あー、寝落ちてた。ヤバ。

そう思って、黒板とノートの内容を確認しようとして、そこで違和感を抱いた。

全然……違っていた。
黒板には「応仁の乱」「戦国大名の台頭」と書かれているのに、ノートにはそれとはまるで無関係な一文が、連なっている。
しかも、それが異様に整っていた。

「……〇〇の策により失脚した××だが、実際は△△によるものであった。
 だがこれは公にはされておらず、後世の今の世には××の策という、風評を信じられたものになっている――」

記憶にはない。夢でも見ていなかった。
そもそも、名前すら知らない人間の話が、俺のノートにこんな整った文体で書かれているはずがない。
俺は驚きのあまり、反射的にノートを閉じて、それから慌てて文字を消した。
文字の意味なんて理解しようともしなかった。理解したら、おかしくなりそうだったから。

いま思えば、写真でも撮っておけばよかったと思う。
でも当時はスマホの画質も大したことなかったし、何より「知らない誰かの手が俺の中を通った」ような気味の悪さが勝った。

その日はそれで終わった。
その後もとくに変わったことは起きず、俺もその出来事を忘れようとした。

……十年経って、ふと思い出したのは、たまたまネット掲示板で「授業中の不思議体験」スレッドを見つけたからだった。

読み進めていると、信じられない書き込みがあった。
ある人が、大学のゼミで「教科書と異なる歴史の草稿のような文章」が、自分のノートに勝手に現れたという。
しかもその文面が、俺があのとき見た記述とほとんど同じだった。

「××の策により失脚した〇〇だが、実際には△△によるものであり……」

人物名は多少違っていたが、構文、文調、結論の方向性までも一致していた。

怖くなって、そいつにレスをつけた。
詳しいことを聞こうと思って。そしたら、返信はなかった。
それどころか、次の日には書き込みごと消えていた。
スレッドのログを漁っても、その投稿の痕跡がまるで残っていなかった。

自分の記憶違いかとも思った。
でも、キャッシュにあったログのスクショは、まだスマホに残っている。

で、ここからがちょっとおかしい。
そのスクショを拡大してよく見ると、ある文字だけがほんのわずかに、ノイズが走っている。
ノイズというか、滲みというか……なんだか、掠れた筆跡みたいに見える。
それが、「△△」の部分だった。

俺のノートにも、その名前があった。覚えている。
けれど、どう頑張っても、読み取れなかった。
漢字にすら見えない、ぐちゃっとした模様。いや、模様というか、あれは「黒い塊」だった。

その夜、夢を見た。
夢というには生々しすぎる。暗い教室。俺の席だけスポットライトみたいに照らされてる。
そこに、背の高い男が立っていた。

制服じゃなかった。
着物のような、でも布の質感は現代的なナイロンのような……よくわからない服。
顔は、思い出せない。ずっとブレていた。

その男が、俺のノートを指さしていた。
そして、こう言った。

「思い出すな。これは、お前の時代のものではない」

目が覚めた時には、全身汗びっしょりだった。
夜中の三時。スマホを見たら、画面が点滅していた。
起動してもいないカメラアプリが、何度も自動で立ち上がっては閉じている。
保存フォルダを確認すると、真っ黒な画像が一枚だけ入っていた。

そのファイル名が――

「△△.jpg」

俺はスマホをリセットした。バックアップもとらず、何もかも消した。
怖かったというより、「知ってはいけないことに触れた」気がしたから。
ノートも、その後捨てた。まるで腐ったように、ページの隅が茶色く変色していたから。

おかしなことが、まだ続いている。
駅のホームで、電車を待っていたら、スーツ姿の男が近づいてきた。
目が合うと、その人はぼそっと言った。

「もう、書かないでください」

何を? と問い返す前に、男は歩き去ってしまった。

追いかけても、人混みに紛れて見失った。
けど、あの目……あの声……夢の中のあの男と、まったく同じだった。

俺はただの高校生だった。歴史にも詳しくない。
それなのに、なんでこんなことになったんだろう。
あの時、ノートに現れたあの文章。
きっと、誰かが「伝えようとした」のだ。俺の意志とは無関係に。

あれは……なんだったんだろうな。
そして、いまのこの時代が、ほんとうに「正史」なのか。

時々ふと思うんだ。
もし、あの時書かれていた通りの歴史が真実だったのだとしたら、
いま俺たちが生きてるこの世界も――

本当は「誤字」みたいなもんじゃないのかって。

[出典:429 :あなたのうしろに名無しさんが……:03/09/27 03:04]

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