ある男が夜中の四時にテレビを見ていた。
402 名前:角焼もち:2006/12/13(水) 01:31:07.42 ID:/U7vpyPu0
どのチャンネルを回しても映るのは通販番組や試験電波。
男は暇をもてあます夜を過ごし、だか眠りに落ちることも拒んでいた。
しかたなく通販番組にチャンネルを合わせ、あまりに疑わしい商品を素晴らしいかのように語りつづけるタレントに含み笑いを浮かべる。
ハっ、こんなもの嘘に決まってる。いくらもらって誉めてんだ……
時間はゆっくりと流れ、男はイライラと番組を鑑賞していた。
見始めてからまだ三〇分しか経っていない、その事実にもイラついた。
いつまでこんなくだらない番組を続けるつもりだ……
男はいい加減に眠ろうかと思い、テレビの電源を切ろうとした。
リーン、リーン
同時にニュース速報の音がした。
なんだろう、なにか大事件でも起こったのだろうか。
男は不謹慎ながらもわくわくした表情で画面上部に浮かぶ《ニュース速報》の文字を直視した。
点滅する文字、そして文字が一斉に画面に現れた。
確実でないならば君の腰が砕けるほどのハンマーを持っているならば僕達はハンマーを持っているならば君の腰を砕くことも確実になるのならば君の言葉を砕くハンマーを持って君の所にいくのならば僕達は君のハンマーを持っているのならば君を燃やすように一万回の擦り付けを火を起こすことが可能だと君が言うのならば明日と今日の今日の今日は君の部屋に行きたいのなら地図を逆さの地図を血に染めた地図を血が流れてぽたぽた流れて君の手に集めて血が溢れるハンマーで君の腰を砕いてどろどろ流れて確実でないのならば君のハンマーを僕に集めて一万回集めて火を起こす地図を燃やすと君の家に行けないのならばぼたぼた流れて今日の今日に砕く確実なハンマーを地図に集めて腰を砕くのなら頭を砕くのなら目を砕砕くからからからぼたぼたとハンマーがを砕く頭を砕くのくのならハンマーを砕くのならぼたぼた流れて頭がぼたぼた流れて一万回集まって頭がどろどろ集まって行きたいのなら君の頭を砕いて僕達の仲間が集まって君の仲間が集まって今日に明日にハンマーで今日にハンマーで今ハンマーで君の家の地図がぼたぼた集まって向かっているハンマーが砕くから頭を砕くから足を砕くから目を砕くから君の頭をぼたぼたと血が燃やすようにぼたぼたと火をつけるためにハンマーが砕くから今日と今日地図に流れてぼたぼたハンマーが確実に確実でないのなら一万回の擦り付けを砕くのなら君の卵を砕くからからからぼたぼたとハンマーが確実に確実でないのなら火をつけるために確実にハンマーが君の頭を砕くから君の頭を砕く頭を砕くか頭を頭頭を砕く頭を砕く頭を砕く頭を砕く頭を砕頭を砕くかハンマーが砕くからからからぼたぼたとハンマーがぼたぼたと
文字が一斉に画面に現れた。男は唖然とした。
こんなニュース速報は見た事がない、いやこんなニュース速報はありえない。
テレビ局がミスでこんな文章を流すとも思えない。
ならばこれはなんだ。
文中に何度も出てくる「ハンマーで砕くから」というくだりが男をゾッとさせた。
しかも文字は普通のニュース速報と違い、いつまでも画面に残っている。
男は第六感からか危険な匂いを感じ取り、テレビの電源ボタンを押した。
テレビはあっけなくその画面を消した。
ドンドンドン!
突然、男の部屋の壁がみしみしと揺れた。
男はひっ、と壁から離れ腰を抜かしたようにその場にへたりこんだ。
テレビの裏の壁を誰かが叩いているのだ。ハンマーのようなもので。
ドンドンドン!
音のたびにミシミシと壁がうなりをあげて、チリチリと粉を舞い上げる。
「ハンマーを砕くのならぼたぼた流れて頭がぼたぼた流れて一万回集まって頭がどろどろ……」
誰かが呟く声が聞こえた。大勢が呟く声が聞こえた。
「誰だっ! 帰れ! 帰れ!!」
男は震え上がりながらも気丈な声で壁に向かって怒鳴る。が、声も音も止まない。
ミシミシ、ミシミシ
男の目の前で壁が盛り上がり、黒いシミのようなものが壁に広がる。いや、あれは人だ。
「ぎゃあぁっっっ!」
男は絶叫した。
黒いシミは人の形を取り、壁から抜け出し男に近づいた。その右手には大きなハンマーが握られていた。
ぶんっ、無慈悲にハンマーは男の頭に振り下ろされる。
男は首を肩へ折り曲げるように避けたが、ハンマーは肩に食い込みミシミシと骨が中で砕けるのが分かった。
衝撃で皮膚が引っ張られ首の筋にピキピキと鋭い痛みが走る。肩の皮膚が裂けてそこからおびただしい血が流れ出していくのが分かった。
無造作にハンマーは砕いた肩から持ち上げられる。
遠ざかる意識の中で男は自分の肩を見た。そこにはつぶれた肩がハンマーの形を作ったままびくびくと血を吐き出している。
男は見上げる。再びハンマーが振り下ろさ……を砕くのならぼたぼた流れて頭がぼたぼた。
(了)