「 kowainetの記事 」 一覧

視界の端の白 rw+3,182

あの子が死んだ。心臓発作、十三歳だった。 朝ごはんを食べて、窓辺で丸くなって、そのままだった。毛並みはつややかで、まだ温かかった。けれど、触れた瞬間にわかった。これは、もう戻らない温度だと。 泣きなが ...

私を覚えているのは誰か ncw+173

私は自分のことを、自分で説明できない。 記憶というものは、私の中では粗末な布切れに似ている。少し力をかけるだけで縫い目が裂け、縫い留められていたはずの中身が、音もなく零れ落ちていく。 小学校の記憶は、 ...

抑揚のない声 nc+

同僚の話。 私は特別養護老人ホームで働いている。認知症や身体機能の低下で日常生活に介助が必要な高齢者が暮らす施設だ。入所型なので職員は二十四時間常駐し、勤務は完全なシフト制になる。早番、遅番、夜勤。生 ...

返事を待つ包丁 rw+6,815

専門学校に入った春、ぼくは大阪の古い安アパートで暮らしていた。 壁は薄く、隣の咳払いまで聞こえる。油の匂いが染みついたコンビニ飯と、湿った畳の臭い。新生活は期待よりも先に、孤独をよこした。誰とも目を合 ...

帳簿の合わない部屋 rw+2,947

帰ったはずの男の声が、まだ部屋に残っている気がする。 「それは見えているんじゃない。帳簿が合っていないだけです」 あの一言を最後に、彼は二度と来なくなった。 それまでは、天井の角にいた。 押し入れの上 ...

乗りますか~倉敷堀、空舟の影 #3,748

岡山・倉敷──あの街で、俺は見てはいけないものを見たのかもしれない。 コロナ禍真っ只中の、空気まで死んだようなある平日の午後だった。仕事で倉敷の美観地区の辺りを歩いていた。アイビースクエアの横を抜けて ...

テクノロジー犯罪被害者の悲痛な叫び(集団ストーカーの恐怖)#13,218

【ゆっくり怪談】テクノロジー犯罪被害者の悲痛な叫び(集団ストーカーの恐怖) 今月の頭に、高校時代の友人から突然メールをもらったのですが、それがとても妙な内容で……正直とても怖かったので、書き込みます。 ...

呼んだのはどちらか nw+374

平成が始まった翌日、塾へ向かう夕暮れの新宿で、私は一人の幼子を見た。 二歳ほどの男の子だった。母親に手を引かれ、こちらを見上げていた。 その黒い瞳だけが妙に澄んでいた。 私は胸の奥が熱くなり、勝手に名 ...

天井にいたもの nc+

私には十も歳下の弟がいる。 弟は、ときどきおかしなものを見ていた。 中学二年の頃の話だ。その頃、弟は双子の妹と一緒に保育園に通っていた。妹はよくいる少しませた女の子で、口も達者で要領もよかった。一方、 ...

戻してはいけない波形 rw+5,978

以前勤めていた病院の話だ。 救急の夜勤。深夜一時を回ったころ、サイレンが処置室のガラスを震わせた。搬送されたのは六十代後半の男性。名札のないジャージ姿で裸足。到着時には心停止。瞳孔は開きかけ、体温は低 ...

役に立たない存在 rw+5.042

私は数年前まで、ある一家に飼われていた。 今でもこの言い回し以外に、あの期間を説明できる言葉が見つからない。監禁でも誘拐でもない。洗脳とも少し違う。あれは生活だった。私が私である必要のない、完成された ...

真ん中に立つ人間 rw+3,583

あの町の名前は、いまも口にしないことにしている。 発端は、知人から聞いた「境界線」の話だった。物理的な線ではない。こちら側とあちら側を分ける、意識の裏に貼りついた薄膜のようなものだと言う。見えないが、 ...

【最新学説Ver.】『明智光秀と天海僧正は同一人物説』を裏付ける圧倒的な根拠!知られざる謎の生涯とその秘密 #4,729

【最新学説Ver.】『明智光秀と天海僧正は同一人物説』を裏付ける圧倒的な根拠!知られざる謎の生涯とその秘密【ゆっくり朗読】 明智光秀:知られざる謎の生涯とその秘密 出典【あの人の人生を知ろう~明智光秀 ...

□□は最初から一人だった nw+417

大学二年の春、ひとり暮らしを始めた。 街の中心から少し外れた、古びた鉄筋コンクリートのマンション。共用廊下には雨水の黒い筋が残り、夜になると蛍光灯は半分しか点かない。窓からは線路が見える。終電後もしば ...

八つ坂トンネル nc+

『自殺者を引き寄せる』と噂されるトンネルがある。 八つ坂トンネル。県境の山奥、いくつもの坂を越えた先に掘られた旧道のトンネルで、今は新道が通り、ほとんど使われていない。 崖があるわけでも、首を吊るのに ...

叫ばされた校舎 rw+8,461

あれは事実だったのかどうか。今でも、判断がつかない。 もう何十年も前のことだ。それなのに、あの朝の湿気と、教室に満ちていたざわつきだけは、皮膚の内側に貼りついたまま離れない。 昭和五十九年。大阪の千里 ...

足りない rw+4,026

あれは、小学四年の夏休みだった。 十五年経った今でも、はっきり覚えている。 本当にあった。 少なくとも、俺の中では。 当時、山中という同級生とよく一緒にいた。 クラス替えで隣の席になってからだ。ゲーム ...

見るだけで、つながる rw+5,260

あれは五年前の夏だった。 俺はまだ中学生で、日が暮れるまで裏山でエアガンを撃ち合っていた。弾が切れれば、寺の石段に座ってペットボトルの水を回し飲みする。あの頃の世界は、汗と火薬の匂いだけでできていた。 ...

視線の往復 rw+2,462

放課後の公園に、スーツ姿の男が立っていた。 小学校六年の春先。桜は半分散り、砂場の縁に花びらが溜まっていた。ドッジボールをしていた俺たちは、誰かの「お前に似てる」という声でいっせいに振り向いた。 入口 ...

花だけが新しい rw+174

山に入って三日目、ようやく最初の目的地にたどり着いた。 古地図にだけ記され、国土地理院の地形図ではただの雑木林とされている場所だ。実際、道など存在しなかった。高巻きしながら枝を払い、沢を跨ぎ、獣道すら ...

分類できないもの rw+2,061

泊まったホテルの名前は、もう思い出せない。 いや、思い出せないのではなく、意識的に引き出さないようにしている。 場所は東北だったはずだ。学会での発表があり、大学から派遣され、前泊が必要になった。地方都 ...

分からない部屋 nc+

⇒関連話:二人分の影 二十歳の夏、八つ坂トンネルで「見える人」と名乗る女性に出会った。 それから数週間後、あの出来事とは直接関係ないはずの飲み会が、なぜか自分の部屋で開かれることになった。 大学近くの ...

裂け目の夜道 nc+913

あの日のことは、どうしても頭の隅から離れてくれない。 五年前の十二月、残業が珍しく長引いて、終電でようやく帰ることになった夜のことだ。 当時の住まいは、最寄り駅から徒歩二十五分もかかる古びたアパート。 ...

鏡の数が増える家 rw+8,150

あの夏のことを、私は正確には思い出せない。 思い出せないというより、思い出そうとすると、記憶の方が私を拒む。 小学五年生の夏休み、私は母方の祖父母が住む山間の集落に預けられていた。五十人に満たない人間 ...

心臓部は誰のものか rw+3,144

ああ、五十年も前の話だ。 小学生だった俺は、川崎の工場地帯のど真ん中に住んでいた。金属と油の臭いが空気に溶け、運河は濁った緑色に沈んでいた。目の奥がひりつくのが当たり前の時代だった。 放課後は駄菓子屋 ...

指しているのは誰か nw+494

正月になると、九州の奥の集落に一族が集まる。 山と藪に囲まれた古い家だ。舗装の剥げた坂を上がり、竹を押し分けるようにして辿り着く。縁側から差す年始の陽射しはやわらかいが、外気は骨に染みるほど冷たい。座 ...

二人分の影 nc+

⇒八つ坂トンネルの続き 八つ坂トンネルという心霊スポットがある。 地元では有名で、夜に近づくと戻れなくなるとか、人数が合わなくなるとか、そういう類の噂がいくつもある。 そこへ行った数日後、昼前に携帯が ...

ハカソヤ rw+8,038

母の故郷の話を、私は長いあいだ何も知らずにいた。 それを初めて聞かされたのは、大学進学が決まり、東京で暮らす準備をしていた頃だ。地方の静かな街で育った私にとって、東京は現実味のない異界だった。駅前にス ...

天安河原で見た二人 rw+3,132

宮崎に行ったのは、十年前の十一月だった。 大学の仲間五人で、夏休みをずらしての旅行だった。車を借り、ルートを決めたのは先輩の女だ。霊感だの波動だのを半分本気で語る人間だったが、面倒見はよく、誰も逆らわ ...

沖縄で拾った軍袋の話 rw+3,242

ヒッピーに憧れていた。 きっかけはビート・ジェネレーションの詩集と、場末の中古レコード店で見つけたジャニス・ジョプリンだった。あの時代の連中が見ていたという幻覚や、居場所のない魂の震えに、自分の輪郭を ...

一匹分の隙間 rw+1,956

午前三時。 目が覚めた理由がわからなかった。物音も、風も、雨もない。ただ、頭の奥がざわついていた。 縁側を見ると、五匹が並んでいた。 横一列。背筋を伸ばし、尾も揺らさず、カーテンの向こうを見ている。 ...

一番小さい電車 nw+541

大学一年の春になると、決まって思い出す出来事がある。 思い出す、というより、向こうから浮かび上がってくる感覚に近い。 あれを錯覚だと断定できれば、今も両親と同じ布団で眠ることに、ここまで神経を使わずに ...

高さの違う空気 nc+

ひんやりと湿った岩が、掌に吸いつく。 右手、右足。 指先が数ミリの突起を拾い、靴底が小さな窪みを確かめる。体重を預けると、岩は黙って受け止めてくれた。土と枯葉と苔の匂いが混ざり、肺の奥まで流れ込んでく ...

四足の祖母 rw+5,180

三歳の頃の記憶が、私のいちばん古い記憶だ。 木枯らしの吹く夕暮れ、公園のブランコにひとり座っていた。鉄の鎖が軋み、耳がちぎれそうに冷たい。手も足もかじかみ、呼吸をするたび喉が痛んだ。それでも帰らなかっ ...

白髪の門番 rw+2,247

広い家だった。 田舎の地主の家らしく、門が五つあり、敷地は竹林と畑と古い家屋の残骸で曖昧に広がっている。初めて来た人間は、どこからがうちの土地なのか分からない。 だから昔から、知らない人間が庭を歩いて ...

母にいない妹 nw+532

『そういえば叔母さんは元気?』 その一言を口にするたび、家の空気が変わる。 きっかけは、三歳か四歳の頃の記憶だ。夏の夜、母方の祖父母の家。縁側の奥で、母の妹と、その婚約者が並んでいた。蚊取り線香の煙が ...

咲いている場所 nc+

日中の陽だまりが、まだ斜面に残っていた。 藤の木が大きく枝を広げ、薄紫の花房がいくつも垂れ下がっている。風もないのに、花はわずかに揺れ、宙に浮いているように見えた。斜面はそのまま静かな淵へ落ち込み、水 ...

コトリバコ【コンプリート・完全版/語り継がれる定番名作怖い話】#7,088

ナオキマンによる解説 【ゆっくり怪談】コトリバコ【コンプリート・完全版/語り継がれる定番名作怖い話】 この話は、霊感の強い友達の話。 912 小箱 2005/06/06(月) 12:57:48 ID: ...

接続済みの人生 rw+2,528

正直、最初は母親に無理やり連れて行かれたと言ったほうが近い。 自己啓発の集まりだと聞いた時点で帰りたかったが、親戚が最近通い始めたらしく、「若い人も来たほうがいい」と半ば強引に予定を押さえられた。場所 ...

救われたのはどちらか nw+454

あれは、先月の、まだ寒さが地面に残っている頃だった。 曇天の下、次男を連れて河原へ蕗の薹を探しに行った。春の匂いを拾うつもりが、足もとには枯れ草と小石ばかりが続く。袋は軽いまま、私たちは下流へ流される ...

底のない湯 nc+

子供の頃から風呂が苦手だった。 だから数日の山行で風呂に入れなくても、特に困ることはない。むしろそのほうが気楽だった。 だが山奥のその小屋には、風呂があった。 宿泊者のみ使用可、湯は貴重だから無駄にす ...

誰だと聞いてはいけない rcw+14,859

大きめの姿見がある家に住んでいる人は、一度だけ試してみてほしい。 ただし、絶対に継続はしないこと。 鏡の前に立ち、自分の目を見ながら、こう言う。 「お前は誰だ」 霊的な話ではない。 オカルトでも都市伝 ...

三月の隣人 rw+3,901

引っ越してきたのは、何年前だったか。 駅から徒歩五分、築二〇年のマンション。二LDKにしては家賃が安かった。付き合っていた彼女には小さな子どもがいて、三人で暮らすことを前提に選んだ部屋だった。 入居し ...

出前の青年 rw+2,831

俺が二十歳を少し過ぎたころの話だ。 近所の小さな和食屋で、毎晩のように出前をしている青年がいた。俺より三つほど下で、高校へは行かず、十五か十六の頃から住み込みで働いていた。人当たりがよく、配達先でも評 ...

三つ目の『ツ』 rw+2,275

三年前の夏だった。腕が日に焼けてひりつく感覚だけが、やけに鮮明に残っている。 就職したばかりで、毎日が薄い膜を一枚ずつ剥がされていくようだった。朝起きて電車に乗り、席に座り、定時までそこにいる。それだ ...

内鍵 ncrw+475

今年の黄金週間、家族は二泊三日の旅行に出た。俺ひとりを家に残して。 二階建ての家は、古びているくせに無駄に広い。もとは他人の家だったものを親父が安く買い取り、最低限の補修だけで住み始めた。柱や壁には、 ...

校庭の裏はそんなに広くなかった nc+

小五の頃、校庭の裏の草むらで変なものを見た。 校舎の死角になっていて、普段は誰も近づかない場所だ。草が伸び放題で、ボールが飛び込んだときくらいしか入らない。そこに、小枝を編んだ輪があった。円というより ...

言えなかった理由 rw+7,349

叔母は、生まれつき、見える人だった。 霊だとか、気配だとか、過去だとか。そういう輪郭の曖昧なものが、布の皺や汗の染みに引っかかって、浮かび上がるのだと言っていた。 若い頃は、それをひた隠しにしていたら ...

神社に戻った理由 rw+8,656

あれは平成八年、高三の秋口だった。 俺は北のほうの寒村に生まれ育った。町と呼ぶには心許ない集落で、夜になれば灯りはまばら、娯楽らしい娯楽もない。高校生の俺たちは、腐りかけた魚みたいに行き場を失い、気が ...

雨の日の空席 rw+2,854

雨の日だけ、俺は思い出から抜け落ちている。 自分が通っていた保育園で、昔の友達が働き始めた。久しぶりに会って酒を飲み、「あの頃の担任、まだいるよ」と聞かされた。軽い気持ちで飲み会を開いた。担任も来て、 ...

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