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中編

終わりのない鬼ごっこ

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これは俺が小学校六年の時に、同じクラスの寛二との間に起こった出来事です。

2007/07/25(水) 18:58:57 ID:ixbWg1mQ0

コイツはいつも挙動不審でわけのわからない奴だった。

事業中はいつも寝ていて、給食だけ食べていつも帰っているだけという感じだった。

もちろんクラスでは馬鹿にされていたし、俺も馬鹿にしていた。

今にして思えば軽い知的障碍があったのかもしれない。

小学校の三年か四年の頃も一緒のクラスで、この寛二も含めて数人で鬼ごっこをやった事が一度あった。

チャイムが鳴った後にイスに座ったら終了と言うルールだった。

つまりチャイムが鳴った後に、鬼を残して全員が席についたら鬼が負けという事だ。

最初は俺がじゃんけんに負けて鬼になった。

寛二は一人だけトボトボ歩いていたのですぐに寛二にタッチした。

寛二は鬼になっても走らないでトボトボ歩いていた。

チャイムが鳴ってもそれは変わらなかった。

チャイムが鳴るとみんないっせいに教室に向かい自分の席に着いた。

寛二以外は全員自分の席についた。

「あいつ追いかけてこないからつまんねーな」

「あいつなんなんだよ」

などとみんなで寛二の文句をいっていた。

そしてまもなくして寛二は教室に入って来た。

そしてなぜか泣いているふうに見えた。

寛二はイスに座っている俺にまっすぐ向かってきた。

そしてあろうことか俺に殴りかかってきた。

どうやらイスから無理やり立たせようとしてきたのだった。

それとほぼ同時に担任が教室に入って来たので、そのまま喧嘩にもならないまま終わってしまった。

寛二のやった行動はクラスの全員みていたので寛二と遊ぶ奴はもちろん、話す奴もいなくなってしまった。

そして寛二の半径5メートル以内に近づかないゲームというのがクラスで流行りだした。

これは寛二と同じクラスの間中ずっと続いた。

……そういえば寛二が授業中に寝るようになったのもこの頃からだったような気がする。

小学校六年の七月くらいに席替えで寛二と同じ班になった。

これは狭い会議室を一緒に掃除する事を意味していた。

さすがに近づかないゲームは終わっていたが関わりたくなかった。

この会議室は先生が見ていない場所なので、だれも真面目に掃除をするものがいないところだった。

俺は手のひらの上にホウキを乗せてバランスをとって遊んでいた。

他のやつらも適当にホウキを振り回して時間を潰していた。

寛二だけが糞真面目に掃除していた。

掃除の終わりを告げるチャイムが鳴った。

みんなそれと同時にホウキを掃除箱に放り込んで、逃げるように会議室をでていった。

俺はほうきでバランスを取る遊びの途中だったので、バランスを崩して終わったらホウキをしまおうと思っていた。

俺はバランスを崩しゲームが終わった時、会議室に寛二と二人きりということに気づいたので、すぐにほうきをしまって教室から出ようと思った。

そして同時にしまったと思った。

寛二が掃除箱の前で仁王立ちしているのだ。

今思えばホウキをその辺にほっぽり出して教室から出ればよかったのだが。

俺はホウキが出ていると怒られると思ったので、寛二に「そこ邪魔だからどけよ……」と言った。

「あの時タッチされてない」

そういうと寛二は、猛ダッシュで俺から逃げていった。

教室に帰ってからも寛二は、追いかけてもいないのに俺から勝手に逃げ回っていた。

自分のイスに座ると寛二はニヤニヤして勝ち誇った顔で俺を見てきた。

あの時の続きをやっているのだろうか?

そしてこれは、この日から毎日続いた。

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最初は呆れていたし相手にしていなかったが、まえに突然殴られたときやり返していなかった事などもあってか、凄くムカつくようになった。

しかし、タッチでもしようものならこの馬鹿と鬼ごっこをすることになると思ったのでこらえた。

相手にしなければ勝手に止めると思っていたが、寛二の行動はエスカレートしていった。

トイレに行くのにもイスに座ったまま引きずりながら行くようになったのだ。

そして勝ち誇った顔で俺を見てきた。

俺は寛二がムカついてしょうがなくなっていた。

そして俺はある事を思いついた。

終業式の日に俺がタッチして逃げれば、学校が始まるまであいつはずっと鬼になるのだから、もの凄く悔しがるに違いないと思ったのだ。

もちろん寛二は俺の住んでいるところを知らないし、教えてくれる友達もいない。

あいかわらず寛二は俺から逃げ回っていたが、タッチされた時の悔しがるさまが想像できて、逆に笑えるようになって来た。

そして、とうとう終業式の日がやってきた。

俺は寛二が運動靴に履き替える為に上履きを脱いだ時に、タッチして逃げるという作戦を立てていた。

終業式が終わり帰りの会も終わった。

俺は寛二を相手にしていないふりをしてそそくさと教室をでた。

寛二は学校で使う道具をこまめに持って帰っていなかったので、寛二の机だけ荷物が凄いことになっていた。

俺は逃げやすいように手ぶらで済むようにしていた。

俺は運動靴をはいて、隠れて寛二が来るのをワクワクしながら待った。

30分くらいして、パンパンのランドセルを背負った寛二が、荷物をひきずりながら歩いてきた。

寛二が上履きを脱いだ。

俺はその瞬間うしろから寛二の頭をおもいっきりはたいて、

「タッチー!」

と憎々しい声で言ってその場から全速力で逃げた。

寛二は想像以上のもの凄い反応をした。

「ををぉーおー」

ともの凄い大声で叫んだのだ。

俺は笑いながら走った。

必死で悔しがりながら走ってくる寛二を見てやろうとふり返った。

この時はあの大荷物じゃ走って追いかけてきてないかもしれねーつまんねーのなどと思っていた。

しかし寛二は靴下のまま、荷物もほっぽり出して俺を追いかけてきていた。

寛二の必死さに俺は大笑いしながら走った。

寛二は「殺す!」「呪う!」「待て!」をもの凄い声で叫んでいた。

最後のほうは喉が変になっているのに無理やり出しているような声だった。

俺は家に帰ってからも笑いが止まらなかった。

あーせいせいしたと心から思った。

夕方頃、家でテレビを見ていると、「をおうー」という人間とはおもえないような声が聞こえた。

寛二が殺すといっている声だと直感的に感じ冷や汗がでてきた。

あいつ、まだ探してるのかよ……

俺、みつかったらどうなるんだよ……と。

その日の夜、家に緊急電話連絡網が、回って来た。

……寛二が死んだからだ。

トラックにはねられたらしい。

後で知った事だが、信号を無視して道路に飛び出してきたらしい。

そして靴を履いておらず、足の裏と喉がズタズタだったそうだ。

そして、寛二が事故にあった時間は、丁度俺があの声を聞いた時間だった。

寛二が大荷物で教室から出てくるのが遅いせいか、俺が関っている事は誰にもバレなかった。

もしかしたら死ぬ直前まで、寛二は叫びながら走り続けていたのかもしれない……

あの不気味な声だけで終わればどんなに幸せだった事か……

その夜、寛二が死んだ日に聞いたあの声が聞こえてきた。

今度は追いかけられる番なのかもしれないと思った。

それからというもの、俺は毎日イスに座って過ごしている。

イスに座っていれば安全かもしれないと思っているからだ。

今はまるであの時の寛二のマネをしているような生活をしている。

イスに座って寝ている様など、授業中に寝ていた寛二そのものだ。

今では寛二のように他人が突然追いかけてくるようにおもえて近づくことができない。

また半径5メートル以内に近づけないゲームをやることになるとは、何と言う皮肉だろう。

(了)

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