私が社会人になってからの話なんだが……
とりあえずかなりの恐怖だったので書き込みしたい……
オカ板に書き込みでいいのかわからないが、宗教は怖いって話。
登場人物
・うっちゃん:私
・みっちゃん:高校の時の元親友
・徳子:高校の時の同級生
ある日、実家に一本の電話がかかってきた。
それは高校の時の親友で、卒業間近で仲たがいをしてしまった友達だった。
母がその電話を受け、元親友は私に連絡を取りたいとの伝言で、携帯電話の番号を教えてくれていたのだった。
私は当時営業をやっていて、携帯も普通に持っていたのだが、仲のいい友達以外には教える事もなく、仕事は仕事用の携帯を会社から渡されていた。
『なつかしいけど、何の用だろう?』
いきなりの電話に不信感を覚え、私は実家の電話から元親友に電話をした。
「うっちゃん!久しぶりやねぇ!」
『あぁ、みっちゃん本当久しぶりやね、どうしたん?』
元親友は他愛のない会話のあと、自分が今度結婚するので、ぜひ私と会って話がしたい、との事だった。
そこでなつかしさも手伝って、元親友に会う約束をしたのだった。
そこまでは、よかった、そこまでは……
待ち合わせは地元のファミレスで、時間は夜19時から、仕事が終わってからの待ち合わせで、お茶(ドリンクバー)をしながら話そうという事になった。
待ち合わせ時間、ほどなくして私の車の隣に元親友みっちゃんの車がきた。
駐車場のはしっこに車を止めていたのだが、車種は言っていないはずなのに偶然だな、と思っていたのだが……
「うっちゃん、久しぶりだねぇ!」
『あぁ、みっちゃん……変わったねぇ……』
車から出て、交わした挨拶がそれだったのは無理もない。
高校時代はとても地味でオタ系の彼女だったのに、無理してやっているとしか思えないばっちりメイクに、ヤバい水商売にでもなったかのような派手な色のツーピースで、のしのし歩いてきたのだ。
高校の時から家計を支えるために(母子家庭、妹あり)コンビニで深夜のバイトをしていた彼女は、文系部員には見えない体格だった(ぶっちゃけガタいがよく身長も私より高かった)
まぁ、少々キツめの服装もメイクも、彼女の現状を物語る事にはならなかったのだが、その場はナニゲに流し、ファミレスに入って話をする事にした。
ドリンクバーにケーキ、他愛のない話。
出てくるのはなつかしい同級生の話題。
そして、
「私ねぇ、結婚するんよ。」
『おめでとう!どこで知り合ったの?相手どんな人なん?』
「あのね、ネットで知り合った人なんよ。」
『へ、へぇ、そうなんだぁ。』
「時代はそういう時代なんよ?うっちゃんもいい人おるんやろ?」
『あー、まぁねぇ(苦笑)』
若干驚きながらも話を続ける事にした。
その当時はまだネットで出会い、というと出会い系サイトも、お見合い系もそんなに浸透していなかったし、高校時代の彼女の性格からして、そういった形で恋愛を進めるとは到底思えなかったのだ。
そして、お決まりの彼の話やら、家庭環境やら。
「今ねぇ、実家から離れて暮らしてるんよ。もうすぐ彼の所にお嫁に行くけど、その前に一人暮らしで花嫁修行ってとこかなぁ。遠距離恋愛だけど、彼とはすごく気が合うし、もっぱらメールと電話が多いけどね。」
『そうか、寂しくない?』
「うん、私には支えてくれる人がいるっ、て思ったら平気やよ?」
『幸せなんやねぇ。』
「あぁ、そうそう、うっちゃんに会わせたい人がいて、もうすぐここに来るんよ」
『ん?だれだれ?』
「あぁ、来た来た」
と、そこに登場したのは高校時代、周りじゅうから嫌われていた徳子だった。
私はかなりびっくりしたのだが、徳子とみっちゃんは示し合わせていたので自然に私の前に陣取った。
「うっちゃん、久しぶり!卒業以来やねぇ」
「今徳子ちゃんの話しとったんよ、そしたら来てくれたんだよぅ」
『あ、あぁ。久しぶり、やねぇ』
びっくりするのも無理はない。徳子は私も大嫌いだったし、みっちゃんも徳子の事は嫌いだったのだ。
それと言うのも、この徳子、高校時代には同級生からは鼻つまみもので悪い噂も耐えないやつだった。
その噂、というのは、ほぼ事実で、クラスメートの財布から札を抜いたり、人の男を寝取ったりするやつだったのである。
そのくせ、教師には受けがよく、所属部活の部長だったりした。
私もみっちゃんも、徳子が窃盗(と言っても過言でない)をしていた時に被害にあい、ほぼ黒状態なのに、担任教師の擁護の元、事件はうやむやに片付けられたのだった。
その徳子というのが、また体格がいいやつだったのだが、いきなり目の前に自分より一回りガタいのいい女が二人、ファミレスのソファ席に座ると恐怖もひとしおだった(いやマジで)
私もみっちゃんも嫌っていた人物なのに、なぜ二人はこんなに仲が良いの?という疑問はそのまま口をついて出た。
私『二人とも、仲良かったっけ?(苦笑)』
みっちゃん「ここ最近かなぁ?」
徳子「そうやねぇ、最近だねぇ」
????
きっかけが気になる事もさることながら、二人してケバい格好という所で、趣味かなんかか!?と心の中でツッコミをいれたのだが、それは唐突に始まった。
徳子「ねぇ、本題に入らせてもらうけど、うっちゃんは今の世の中どう思う?」
?????
あまりに唐突なために私の頭の中は『?』で一杯になった。
私『どう、って?』
みっちゃん「衆生は、どう荒んでいるか、って事だよ!」
…………!
し ゅ じ ょ う ?
徳子「あのね、今の世の中、信仰心が足りないんだよ、人間が死んだらどこにいくと思う?」
し ん こ う し ん ?
私『え、あ?ちょ、ま!?、え!?』
たたみかけるように二人の言葉が続く。
「今は六道の中の……」
「毎日ナニナニの方向に向かってお祈りして……」
「こういうツボとか……」
「毎日お経を、写経して……」
「この世の中を救済するには……」
「御開講様のおかげで……」
あまりの事にかなり凍りつく私。
ヒートアップする二人。
そして、手書きのパンフらしきものを見せ、さらに熱弁を振るう徳子。
その瞬間の私は、ものっすごい後悔と焦りとがごっちゃになって、泣きそうだった。
私『ごめん、みっちゃんの言ってる事わからない』
その瞬間、涙が出ていた。
徳子「最初から話そうか?」
私『いや、そういう意味じゃない。悪いけど今日はみっちゃんの結婚の祝い話をしにきただけで、二人の宗教観を聞きに来たわけじゃない。』
泣きながらぴしゃりと言い放ったのだが、徳子の方は意に介さないようで、
徳子「だからね、その結婚するのも、すべては御開講様のお導きのおかげで」
私『ごめん、もう、私は話をさせてもらったから帰る』
自分の分の代金をテーブルに置くと、バックをひっつかみ、立ち上がって出口に向かって歩き出した。その瞬間、徳子がバックをつかみ、
徳子「……帰さないよ?」
すごい形相でこちらをにらんだのだ。
私『手をどけて!』
私はかなり必死だったので、大きな声を出したのかもしれない。
店内はしんと静まり返り、後ろでみっちゃんが手早くお会計をしていたのが妙にシュールだった。
強引に店を出て、急いで車に向かう私のバックには徳子がしつこくくっついていた。
私『手をはなして!』
徳子「うっちゃんが私の話を聞いてくれるまで離さない!」
もう、もう、恐怖で一杯な私。日常生活において、必死になる事なんてそうそうないのだが、思いっきりバックを引っ張って徳子から離れた。
走って車に向かい、運転席に乗り込み、ドアを閉めようとした瞬間、徳子が体をドアの間に挟み、みっちゃんがドアをつかんで思いっきり開いた。
夜の駐車場で街灯の明かりが逆光になっていたのだが、二人の表情が妙にしっかり見えた。
血走った目。
そうとしかいい様がない……
徳子「話を聞いて!私たちと救済の話を聞いて!」
みっちゃん「うっちゃん!私のために、うっちゃんの救済のためでもあるんよ!」
もう、その場にいる事自体が恐怖でしかない。
強引に車内から引きずり出されようとした私だったが、かなり抵抗したので、ドアを閉めようとするところまで出来た。
私は涙が止まらなかったが、手の力は抜かず、必死にドアをしめようとした。
なおも叫ぶ二人。
「人間は今、全員救済されなくてはいけない」
「魂の穢れがあるから、このままだとダメになる」
「私の話を聞かないと地獄にいくよ!」
「一緒に救済しようよ!」
全ての言葉は二人から出ているのだが、遠くから聞こえてくる声にしかならない。
一瞬力を緩めて、ドアをあけさせ、その瞬間、力をいれてドアを引き戻し、やっとの思いでエンジンをかけた。
その時、みっちゃんがボンネットの上に体を投げ出し、車を発進できなくしたのだった。
一瞬ちゅうちょした私は、車をバックさせた。
(運のいい事に車止めがなく、駐車した場所の後ろの車がいなくなっていたので)
車が動き出した瞬間に、みっちゃんは器用に車から飛びのいてくれたのも助かった。
少し離れた後、バックミラーで二人を確認し、無事なのを確かめ、駐車場から一目散に離れた。
車を動かした私は、そのまま自宅に帰る気にならず、一時間ほどうろうろしたのだが、妙に気になり、実家に電話をしたところ、母からとんでもない報告があった。
二人が玄関で待っている、というのだ。
父も自宅にいるので、何かあってもすぐ対応できるのだが、私は一連の出来事を両親に話し、警察に電話する事にした。
ほどなく、巡回しにきたパトカーのおかげで二人は帰って、私は無事に帰宅できたのだが二人は母に私が帰るまで、部屋で待たせて欲しいと言っていたそうだ。
何が二人を宗教にのめり込ませたか、いきさつはわからない。
だが、人を狂気に走らせるって、すごい怖い事だと思った。
後日談
数日して、他の同級生から実家に電話が入った。
その子が言う事には、やはり似たような事をされたのだが、被害は同じ高校の同級生の半分近くにも及んでいるらしいのだった。
その後、二人はどうなったかは、知らない……
(了)