ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 洒落にならない怖い話

拾っていない rw+3793

更新日:

Sponsord Link

Kは、あの夜のことを、いまでも「自分は正しい判断をした」と言う。

旧車での放浪は、もう何度目か分からないらしい。ルートは決めず、眠くなれば道の駅、風呂屋で仮眠。誰にも迷惑をかけない、金もかからない。だからあの夜も、いつもと同じ延長だった。

津軽街道に入ったのは四日目の夜だという。

山を巻く細い道。崖際にガードレールはなく、街灯もほとんどない。バックミラーに映るのは自分のライトだけだった。

左の路肩に、白いスニーカーが落ちていた。片方だけ。

Kは減速したが、停まらなかった。

何かを想像しかけて、やめた。考える必要はない。山道にはいろんなものが落ちている。

その少し先、車線の中央に女が立っていた。

二十代くらい。普通の服装。片足は裸足だった。

Kはブレーキを踏み、停車した。

「大丈夫ですか」と声をかけようとした瞬間、女が走ってきた。

フロントに突っ伏し、両手でボンネットを叩く。何度も、一定の間隔で。顔は無表情だった。

Kはロックを押した。

女は車体をなでるように移動し、運転席のドアを引いた。ガチャガチャと、何度も。

Kは窓越しに女の顔を見た。

助けを求めている顔ではなかった。怒ってもいなかった。ただ、楽しそうだった。

女は突然離れ、林へ入った。

Kは発進しようとしたが、女が戻ってきた。両手で大きな石を抱えていた。

笑っていた。

Kはアクセルを踏み込んだ。

バックミラーの中で、石を振りかぶる姿が小さくなる。

だが、最初のヘアピンを抜けた先に、また女がいた。

立っているだけだった。

Kは右車線に出て追い抜いた。

直線で下っているはずなのに、女はさらに先のトンネル出口に立っていた。

すれ違いざま、笑っていた。

Kはブレーキを踏んだ。

対向車線を大型トラックが走り抜けた。

トラックのライトが消えると、女はいなかった。

Kはそのまま山を下り、弘前の交番に入った。

事情を話したが、事故も破損もないなら対応は難しいと言われた。徘徊か、酔っていたのではないか、と。

「怪我人はいませんでしたか」とKは聞いた。

巡査は首を傾げた。

翌朝、車を確認した。

ボンネットに、細い指の跡がいくつも残っていた。

叩いたような跡ではない。

何かを確かめるように、何度もなぞった痕。

助手席の足元に、白いスニーカーがあった。

片方だけ。

Kは拾った覚えはないと言う。

ドアは開けていない。

山道で減速したのは、最初のあの靴のときだけだ。

その数日後、Kは津軽街道を調べた。

奇妙な書き込みが見つかった。

「夜の山道で、急ブレーキ踏まされた。女が飛び出してきた。助けようと停まったら消えた」

日付は、Kの前日だった。

さらに遡ると、同じ道での事故報告がいくつも出てくる。

正面衝突。崖下転落。単独事故。

原因はどれも、「急な回避操作」。

Kは、あのとき自分がブレーキを踏んだ場所を、地図で確かめた。

トンネル出口の少し先。

ちょうど、対向車のライトが視界を奪う角度だった。

もし女が立っていなければ。

もし、右にハンドルを切っていたら。

Kは言う。

「あれは助けてくれたのかもしれない」

そう言いながら、あのスニーカーをまだ捨てていない。

サイズは、Kの足にぴったりだ。

次にあの道を通るとき、もう片方が落ちているかもしれないから、と。

その話を聞いてから、俺は山道で落ちている靴を見ると、必ず減速するようになった。

拾わないように気をつけながら。

[出典:454:本当にあった怖い名無し 2016/11/07(月)23:47:45.87ID:WzjNEpLx0.net]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 洒落にならない怖い話
-

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.