石じじいの話です。
231 :本当にあった怖い名無し:2018/10/26(金) 22:27:50.61 ID:Apew5JJb0.net
自動車を八千円で手に入れたじじいは、いろいろな人を乗せてあげていました。
じじいは親切な人間でした。
わたしもよく乗せてもらいました。こわかったけど。
雨の中、車で走っていると、遍路巡礼姿のかなり年のいった老人が、道端の地蔵堂で休んでいたそうです。
雨が止みそうになかったので、声をかけて車に乗せてあげました。
その老人曰く、お四国を回って結願して自分の家に帰るところだ、と。
彼の言う自宅はそこから遠くはなかったので、家まで送っていこうかと尋ねると、是非お願いしたい、ということでした。
「お遍路さんには、歩いて回ることが大事なんじゃゆうて、車に乗せてもらうんを辞退される人もおるんで」
彼の家に着くと、家の人が出てきて礼を言い、じじいを家の中によび入れて、お茶と食べ物でもてなしてくれました。
久しぶりに帰ってきた老主人である、その老人に家の人々が関心を示さないのが奇異な感じでした。
帰ってきた老人は縁側に座って、そこの若主人(といっても中年)と話をしているようでした。
久しぶりの対面なのに声も聞こえないので、「ひそひそ話か?何か訳があるのか?」と思ったそうです。
話をしていた若主人が、縁側からお盆にのった湯のみとお菓子を持って、じじいのいる部屋に戻ってきたので、
「おとうさんは、えろう苦労なさったのう、部屋で休みよんなはるかな」と尋ねたところ、
その初老の男性は少し困ったような顔をして言いました。
父は、おそらく三十年以上前に死んでいる。
その主人が言うには、
父親は、家庭内の不和が原因で出奔した。
それから一年ほどたって、父は遍路の姿で戻ってきた。
しかし、家に入れて目を離したすきにいなくなった。
「またすぐに家出か!」と思い探したが姿はみえなかった。
捜索願を出しても、見つからなかった。
それから数年後に父親が再び帰ってきた。
またいなくならないように、今度は見張っていたがいつのまにかいなくなった。
それから、数年後にまた戻ってきた。
そこで、これは生きた人間ではないと覚悟して、それからは帰ってくる父親をただ迎えるだけとなった。
父はかならず雨の日に戻ってくる。
それに、普通に齢を重ねている。
出奔した時のままの姿ではなく、相応に加齢している。
その主人は不安そうに付け足したそうです。
これからもまた帰ってきて、それが続くと、父はどうなるのだろう?
不死なのであろうか?
と。
「供養しなさったか?」
「した。しかし、その効果(?)は無い」ということでした。
今読み返してみると、繰り返し「帰ってくる」この老人、本当に死んでいたのでしょうか?
同じような話は、海外のテレビシリーズ「One Step Beyond」(日本放映時のタイトル:世にも不思議な物語)の「If You See Sally」(サリーに会ったら)があります。かなり似ている。
話を聞いた当時、田舎の家々にはテレビは無かったので、じじいはその番組は知らなかったと思いますが。