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石仏の記憶 r+2337

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これは、数年前に登山好きの同僚たちと出かけた山での話だ。

山道は緩やかで、四人ほどのグループで笑い声を交わしながら進んでいた。その途中、道の傍らに不意に現れたのは、風雨に削られた大きな岩。

表面には仏像が彫られていたが、線刻だけがかろうじて残り、目鼻立ちは朧気だった。その摩耗した姿は、時の流れを感じさせながらもどこか妙に生々しい気配を放っていた。

一瞬、何気なくその顔に目を向けると、胸の奥が重くなるような感覚に襲われた。目の錯覚か、彫られた顔が動き始めたように見えた。

まるで、記憶の底から湧き上がる後悔や憎しみが形を取るかのように。やがて、その表情は――死ぬまで和解できなかった父の顔へと変わっていった。

下山後、他の同僚も不気味な体験を話し始めた。一人は「仏像が死んだ友人に見えた」と告白し、別の同僚は「亡き母の微笑みを見た」と呟いた。

そしてもう一人は、かつて飼っていた愛犬の姿が重なったと言う。口々に語られる話は奇妙だったが、登山の疲れからくる幻想だろうと片付けられた。

だが、後日、似たような話を聞いて震えた。あの仏像を見たことがあるというその人は、こう語った。
「夕暮れ時、その仏像の顔が崩れていくように見えた。目は赤く光り、鬼のような形相になった。もうそれが仏か悪鬼か、判断のしようがなかった」と。

あの石仏は一体、何を映し出していたのだろう。

仏の慈悲か、悪鬼の戯れか――今でも答えは出ない。

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