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短編 r+ 山にまつわる怖い話

名もない低き裏山 r+3493

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この話は、とある地方の小さな集落にある、名もない裏山で起きた出来事だ。

幼稚園や小学校の裏手にあるため、子供たちにとっては親しみ深い場所だった。山頂には児童公園があり、昼休みにはたくさんの子供たちが駆け上がる。けれど、その山には奇妙な歴史が絡みついていた。

山の中腹には古びた戦争の慰霊碑がぽつんと立ち、その周囲にお寺や神社が点在する。慰霊碑は戦争中に亡くなった者を弔うためのもので、名前のない死者のためのものだと聞いた。時折、自裁する者が出るという噂もあって、夕暮れ時にはなんとなく気味が悪い。


夏の夕方、日が沈みかける頃。その日、犬の散歩をしていた若者が山を登っていた。慰霊碑の近くに差しかかると、斜面の上、木々の間にぼんやりとした青白い光が浮かび上がった。まるで風に揺れる炎のように、ひゅるりと形を変えながら揺れている。

人が立ち入れない場所だ。見間違いかと思い、目を凝らす間もなくその炎はスッと消えた。体が一瞬にして冷たくなり、何かに見られているような気配が背中を撫でた。散歩中の犬も普段の「帰りたくない」態度を一変させて、山のふもとへ向かって一直線だった。


その数日後、同じ山を登ったのは彼の母親と兄だった。犬を連れて夕方の散歩に出かけた彼らも、慰霊碑の近くで異変を目撃した。目の前10メートルほどのところに、突如白い人影のような形が立ち上った。煙でできたようにぼんやりと揺れ、やがて形を崩して消えた。

人影が消えた瞬間、全身の毛穴が逆立つような感覚に襲われ、3人と1匹は声も出せず一気に山を駆け降りた。振り返ることすらできなかったという。


中学生になったある夏の夜。好奇心旺盛な10人ほどの友人たちが肝試しと称して山頂へ向かった。誰かが花火を買い、わざわざ蝋燭やバケツを持参する準備ぶりだ。

しかし、山に足を踏み入れた瞬間から空気が違っていた。生暖かい湿気と、ねっとりとした重さが体にまとわりつく。ところが、斜面からは不自然に冷たい風が吹き上がり、寒暖の境目が皮膚でわかるほどだった。

山頂に到着し、花火を始めようとしたが、どうしたことか火がまったくつかない。湿気のせいかと最初は笑っていたが、試しても試しても火は消え、次第に誰もが言葉を失った。そのとき、一番「見える」と噂されていた友人が突然バケツをひっくり返し、「今すぐ降りるぞ」とだけ言った。

異様な緊張感に押されるように、全員が山を駆け降りた。山頂の粘ついた空気が追いかけてくるようで、誰一人振り返らなかった。学校に戻って花火を試すと、さっきまでの嘘のように火がつき、花火は美しく夜空に咲いた。


後日、地元の古老がこう話してくれた。

「あの山にはいろんなものが溜まっとる。慰霊碑もあるし、昔は戦で死んだ者をそのまま埋めた場所だったらしい。夜や夕方には行かんほうがええ。誰かを連れて帰るかもしれんからな……」

それ以来、その山に肝試しで行く者はいなくなった。けれど今もなお、夕暮れ時に山を見上げると、どこかに青白い光が揺らめいていることがあるらしい。

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