短編 洒落にならない怖い話

注連縄で囲われた廃神社【ゆっくり朗読】3757-0112

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俺の嫁が学生の頃の話。

オカルト研究サークルに入っていた嫁の友達郁子が、心霊スポットについての噂を仕入れてきた。

東北地方某県の山中に、周囲を注連縄で囲われている廃神社があり、それを一人でまたぐと帰ってこられなくなるという。

検証するべくメンバーである男子学生貫太が一人でその場所に向かったところ、はたして彼とは連絡が取れなくなった。

心配したサークルのメンバー一同は、皆で様子を見に行くことにした。

そしてそこで嫁と郁子が体験したのが次のようなもの。

嫁はそこそこ霊感があるものの御祓いとかはさっぱりなので、出発に際して霊感が強い先輩に同行してくれるよう頼んだ。

郁子の情報通りの場所には確かに注連縄で囲まれた神社らしきものがあり、貫太がここに来たであろうことも間違いないように思われた。

先輩はその神社を見るや苦い顔をして、「ここに入るのは怖い」と入るのを拒否した。

しかし仲間の様子が心配なメンバーとしては、ここで引き下がるわけにもいかない。

注連縄を超えて進もうとする彼らに、先輩が言い聞かせたことには、

「この注連縄の中には、強力な力が満ち溢れている。これに一度とらわれたら、自力で抜け出すのは難しいだろう。

この力に付け入る隙を与えないために、彼を連れ帰りこの注連縄を超えるまで、決して会話を途切れさせてはいけない。

大人数で入って会話には入れない者がいるのは危険だから、二人で入るのが一番だと思う」

その場にいたメンバー中、嫁と郁子が最年長の女性であり、おしゃべりなら男性より女性の方が得意だろうということで、二人がペアになって中に入ることにした。

話す内容は何でもよく、二人は趣味やスイーツやファッションなど、ありとあらゆる事を話しながら進んで行ったが、途切れさせてはいけない、という義務感や、心霊スポットのただ中にいるという緊張感から、精神的にかなり苦しかったそうだ。

鳥居をくぐり、拝殿のような所に辿り着いた嫁が戸を開くと、ぼんやりした暗闇の中、探していた貫太がこちらに背を向けて座り込んでいた。

嫁が目を凝らすと、彼をコの字に囲む古びた日本人形が多数見え、そして嫁と郁子の声に交じって、彼がぶつぶつと何か呟いているのが聞こえる。

二人に促されると、彼はぼんやりしながらも立ち上がり、のろのろと外へと歩き出した。

そろそろ話すネタも尽きてきた二人は焦り始め、郁子は貫太の腕を掴んで走り出し、嫁も後に続いた。

息を切らしながらも会話をつづけ、ようやく注連縄と応援する仲間たちの姿が見えてきた。

一足先に縄を跨いだ郁子は、話し続けなければならないという緊張から解放されたためか、ひとつ大きなため息をついた。

そして会話が途切れたその瞬間、嫁はまだ縄を潜っていなかった。

投げかけた言葉に返事がなかったその時、耳のすぐそばで何人もの人間が大声で怒鳴るような大騒音が、嫁の耳に飛び込んできた。

驚いて耳をふさいだが声は全く小さくならず、激しい頭痛と恐怖で頭がおかしくなりそうになって、思わずその場にしゃがみそうになったとき、先輩が目いっぱい手を伸ばして嫁の腕を掴み、強引に縄の外に引っ張り出してくれた。

縄を超えた瞬間、その声は嘘のように消え去ったという。

嫁は呆然としてあたりを見回したが、自分たち以外の人間の姿は見えず、そしてその場にいた誰も、嫁が耳にした声は聞いていないという。

貫太はしばらく呆然としていたが、帰りの車の中で徐々に自分を取り戻し、何があったのかを話してくれた。

といっても、あの縄を超えたとたんひどい耳鳴りと頭痛がして、その後気がついたら仲間に囲まれて神社の外にいた、ということしか覚えていなかったが。

嫁は持前の霊感のせいか分からないが、貫太には分からなかった声の内容が聞き取れたようで、なんでも

「帰さん」

「新参だ」

「ここにいろ」

というような事を言っていたらしい。

彼はその後先輩の勧めで、御祓い兼お勤めみたいな感じで、夏休みいっぱいどっかの寺で過ごしたという。

(了)

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