短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

奇妙な交通事故【ゆっくり朗読】3464

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小五のとき、通学路の交差点を渡っていたとき、右折車が横断中の俺めがけて突っ込んできた。

催眠術にかかったように体が動かず、突っ込んでくる車を呆然と見ていたら、あらぬ方向を見ているドライバーの顔まではっきり見えた。

後ろから突き飛ばされ、俺は難を逃れた。

が、俺を突き飛ばしてくれた大学生は車に跳ね飛ばされた。

泣きながら近所の家に駆け込んで、救急車と警察を呼んでもらい、自分は警察の事故処理係に出来る限り状況説明をした。

後日、家に警察から電話があり、大学生の入院先を教えられ、母親と見舞いに行って御礼を言った。

中学一年のとき、父親の仕事の都合で同県内の市外(というか、山の中)へと引っ越した俺は、そこで先生となっていた件の大学生と再会した。

お互いに驚き、再会を喜びつつ、三年間面倒を見てもらって、(なんせ田舎の分校なので、先生はずっと同じなのだ)俺は中学を卒業し、高校進学と供に市内に戻った。

地元の教育大学に進学した俺が、教育実習先の小学校へ向かう途中の交差点で、自分の前を渡っている小学生の女の子に、右折車が突っ込もうとしているのを見た。

次に、ドライバーが携帯電話で喋りながら運転しているのが見えた。

スローモーションみたいに流れる情景に、ウソだろ……と思いつつ、とっさに女の子を突き飛ばしたら、自分が跳ね飛ばされた。

コンクリートの地面に横たわって泣いてる女の子を見ながら、あのとき先生もこんな景色を見たのかな……とか考えつつ意識を失った。

入院先に俺が助けた女の子の親が見舞いにやって来た。

彼女の親は中学時代の恩師であり、俺の命の恩人そのヒトだった。

「これで借りは返せましたね」と俺が言うと、

「バカ……最初から、借りも貸しも無いよ」と先生は言った。

ベットの周りのカーテンを閉めて、俺たち二人、黙って泣いた。

(了)

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