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短編 凶悪殺人事件

未解決事件の慟哭【ゆっくり朗読】5693-0102

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これは私の友人の警察官から聞いた話です。

未だ謎の多い忌まわしい未解決殺人事件。

東京S区一家殺害事件。皆さんもニュース等でご存知かと思います。

現場の近所の方や、一度でも訪れた方ならご存知でしょうが、ここの一軒家の前の私道には必ずパトカーが最低一台常駐していました。

昼夜を問わず、管轄の警察官が二名、交代で不審者を近付かせぬよう、見張りをしていました。

私が話を聞いた友人は、その見張り勤務を数ヶ月間担当していたのですが、舞台となった殺害現場の一軒家は、実は取り壊されています。

通常、未解決事件の場合、証拠保全の為、出来うる限り犯行現場は当時の状況のまま残しておくのがベストなのでしょうが、今は更地になっています。

なぜ、取り壊されたのか。いえ、なぜ、取り壊わさなければならなかったのか……

モロだったそうです。しかも、強烈な。

友人いわく、

「信じるとか信じないの次元ではない。見た!または見た!、の一択しかない」

だそうです。

通常、警らレベルの警察官では一軒家の内部に立ち入る事は不可能だったらしく、私の友人は直接目撃した事はないみたいですが、刑事や鑑識と同行した先輩の話では、そこにいた一同全員が同時に目撃したケースが度々あったそうです。

その先輩いわく、現場は亡くなられた方の着ていた衣服や、シーツ、布団などは運び出されてはいますが、床や壁の血痕は殺害当時のまま。

玄関から一歩踏み入れただけで濃厚な血の匂いが立ち込め、それだけで胸がムカついて来て、その場に倒れそうになった。

そこから先は、何の変哲もない空間が、意思を持っているかのごとく絡み付いてくる感覚に襲われた、と話してくれたそうです。

そんな彼が担当していた期間、初日に上司から言われた“鉄の掟”。

「ノックがあっても振り向くな」

パトカーの中に何時間と待機しなければならない初日に上司からそう脅されたそうです。
ま、初日に彼は振り向いてしまったそうですが……

彼は勤務担当の数ヶ月間、毎日のようにパトカーをノックする音を聞き続けたそうです。

「ノックは決まって三回なんだ……」

「同時に何ヵ所かからノックをすることも……」

「車の中にいても、あの部屋の窓だけはどうしても見ることが出来なかった……」

「同期の何人かは、ここの担当から外れた後に退職してるんだ……」

事件が解決の日を迎える時まで、故人が成仏される事がないのは明らかでしょう。

彼もあまり多くを語りたがらず、話してくれたのは、ほんのごくわずかな部分だけでした。

最後に、無念の死を遂げたご家族三人のご冥福と、一日も早い事件の解決を願います。

(了)

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