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警備仲間からの相談 r+5341

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これは、俺が警備員のバイトをしていた頃の話だ。

休日、家でのんびりしていると、携帯が鳴った。画面には警備仲間の渡嘉敷の名前。普段あまりプライベートで連絡を取る相手ではない。相談があると言われ、俺は二つ返事で応じた。仕事現場での悩みだろうと思ったのだ。

指定された飲食店に行くと、渡嘉敷ともう一人、短髪にスーツ姿の男が待っていた。男の雰囲気は警察官のようだが、どこか違和感がある。さらに驚いたのは渡嘉敷の姿だ。普段ヘルメットを被っていた彼の頭は薄く、年齢を尋ねると俺より10歳も年上だという。お互いに「若いと思ってた」と驚きながら、奇妙な三人で雑談を始めた。

しかし、話が進むにつれスーツの男が「先祖」や「祈り」といった怪しいキーワードを持ち出した。話の流れは完全に新興宗教の勧誘だった。渡嘉敷も信者で、スーツは教団の関係者らしい。どうやら俺を信者に引き込むのが目的だったようだ。

スーツは、信仰のおかげで金運が上がったと熱弁し、渡嘉敷も「自信がついた」と満足そうに語る。正直なところ興味本位で、誘われるまま近くの教団施設に向かった。施設は無駄に広く、和風の食堂まで備わっていた。

そこで入信申込書を渡され、スーツに促されるまま適当に記入した。儀式らしきものは施設の二階で行われたが、三十畳ほどの和室に俺、渡嘉敷、スーツ、そして教団幹部らしき男の四人だけ。幹部の唱える題目を正座して聞き、他の二人に倣ってお辞儀を繰り返すだけだった。

儀式が終わると数珠や経本、謎の機関紙を渡され、俺はさっさと帰ることにした。だが、それからが本当の奇妙な始まりだった。翌日、渡嘉敷からしつこく電話がかかってくる。着信拒否にしても執拗にかかってくる。その頻度は毎日、何度もだ。

警備の現場でも渡嘉敷とは極力関わらず、やがて俺はそのバイトを辞めた。それ以降、渡嘉敷と会うこともなくなったが、二、三年後に突然、携帯が鳴った。番号は知らないが、俺は何も考えずに出てしまった。

「僕のこと、覚えてますか?」

受話器越しの声に鳥肌が立った。渡嘉敷だ。
懐かしさでも恐怖でもない、言いようのない感情が爆発し、俺はただ笑った。何年も俺に電話をかけ続けるなんて、正気とは思えなかった。笑いが止まらない俺に向こうが何か言う間もなく、電話は切れた。

不思議なことに、それ以降、渡嘉敷からの着信は一切なかった。あの笑いを最後に、彼は俺の世界から完全に消えたようだ。だが、今でも時々、夜中にふと目覚めると、あの携帯が鳴るような錯覚に囚われることがある。

気のせいだと思いたいが、その度に聞こえるのだ。「僕のこと、覚えてますか?」と。

(了)

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