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米の配達 r+2575

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知り合いの米屋から聞いた話だ。

ある日の昼下がり、電話が鳴った。いつもの常連から、米の配達を頼まれたという。「夕方ごろで頼むわ」と言われたので、その時間に行くことにしたそうだ。その日は朝こそ暇だったが、夕方にかけて注文が立て込み、米屋は忙しく走り回っていた。

夕方、数件の配達を終えて、約束の常連の家に着くと、誰も出てこない。インターホンを鳴らし、ドアをノックしても反応がない。仕方なく、一度その家を離れ、他の配達先に向かうことにした。

夜もとっぷり暮れて、ようやくすべての配達を終えた米屋が、再び常連の家に戻ったときも、やはり応答がなかった。もしかして留守だろうかと訝しみながら、玄関ドアをそっと押してみると、鍵が開いているのに気づいた。普段なら戸締まりされているはずなのだが、この日はなぜか無防備に開いていた。

「玄関に置いていこう」と思い直し、米袋を抱えて中に一歩踏み込んだ瞬間、視界に飛び込んできたのは血の臭いと、玄関先にしゃがみ込んだ常連の姿だった。よく見ると、常連は何度も刃物で刺され、すでに息絶えている。異様な光景に、心臓が凍りついた。

米屋はすぐに警察を呼び、事情を説明したが、第一発見者として入念に取り調べを受ける羽目になった。何度も同じことを問われ、他の目撃情報も掘り下げられた。だがそのうちに、おかしな矛盾が見つかる。

常連の死亡推定時刻が、米屋が電話を受けた時間と噛み合わないのだ。その上、夕方に回覧板を回した近所の住人が「その時間帯は鍵がかかっていた」と証言していたため、米屋の話が疑わしいとされ、ますます深い追及を受けることになった。

数日後、犯人が見つかった。驚くべきことに、それは電話があった時間に嘘の証言をした隣人だったという。動機は些細な恨みだというが、ただ一つだけ、未だに誰も理解できないことがある。

それは、最初の米屋への電話のことだった。

隣人が犯行を終えた後に電話をかけたのか? それとも、殺害された常連自身が死の直前に米の配達を頼んだのか? だが、常連の死亡推定時刻をどう考えても説明がつかない。まるで、死者自身が助けを求めるかのように、あの世から電話をかけてきたかのような……そんな不気味な想像をせざるを得なかった。

それ以来、米屋は夜の配達が少し怖いと言っていた。

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