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運命の赤い糸の人 r+3227

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あなたは「運命」という言葉を信じるだろうか。
誰かと赤い糸で結ばれているとしたら、それは本当にあるのだろうか。

初めてその夢を見たのは、中学一年か二年の頃だった。記憶の中の夢の舞台は、ガラスで囲まれたテラスのような場所。低いテーブルを囲み、一人の女性と会話をしていた。彼女は二十歳くらいに見える。特別な美人ではないが、どこか温かみを感じさせる普通の女性だった。当時、好きな女子やグラビアアイドルと恋愛する夢をよく見ていたが、この夢はただ女性と穏やかに話しているだけのものだった。声も音もなく、ただ映像だけが続く主観的な夢だった。

目が覚めてから「なんだったのだろう」と少し考えたが、すぐに中学生活の中に紛れてしまった。その夢を再び見たのは中学三年生の頃だ。今度は女性と一緒に道を歩いているような場面だった。目覚めた時、以前見た夢の女性だと気づいた。「あの女性だ」と心の中で思ったのを覚えている。それ以降、大学に入るまでの間に年に一、二回ほど、その女性の夢を見ることがあった。夢の内容はどれも普通の日常の一コマのようなもので、不思議なことや奇妙な出来事は何一つ起こらなかった。夢を見た後も「久しぶりに見たな」という程度の感想で、日常に埋もれていった。

大学に進学すると友人ができ、サークルに入った。そのサークルのたまり場は校舎の一階の廊下脇に設置されたテーブルとベンチで、誰かしらがいつも集まり、自然と談笑が始まるような場所だった。ある日、いつものようにそこにいると、突然目の前の女性に気づいて心臓が止まりそうになった。夢で見たあの女性だったのだ。同じ学年のサークルメンバーで、最近入会したばかりのグループの一人だった。

「どうして夢に出てきた女性がここにいるんだ?」と混乱しつつも、周囲に悟られないよう取り繕った。一人暮らしのアパートに戻り、一人考えた。デジャヴに違いない。夢に出てきた女性とは別人で、たまたま似た雰囲気の女性だから記憶が結びついているだけだと自分に言い聞かせた。夢の中の風景とサークルのたまり場が一致しているようにも思えたが、夢の記憶は曖昧なものだから、きっと後付けでそう錯覚しているだけだと結論付けた。

数か月後、学園祭が始まった。その間に彼女を含む女性グループと僕たちの友人グループはますます仲良くなっていた。学園祭ではスイーツの屋台を出すことになり、準備中、物資を運ぶ役目で彼女と二人きりになった。会話をしながら廊下を歩いていると、ふと以前見た夢を思い出した。「この先の教室の扉から人が飛び出してきて、彼女がぶつかりそうになる。でもギリギリで大丈夫だったはず……」。記憶が鮮明によみがえった。

そして、まさにその通りの展開が起きた。驚きと動揺で心臓がドキドキし、全身に汗が滲んだ。この偶然はただのデジャヴなのか、それとも夢が現実を予見していたのか。答えはわからなかった。

学園祭は無事に終わり、僕たちのサークルは学内で最も売り上げが高かった。その祝賀を兼ねた泊まりがけの宴会が開かれた。その夜、彼女に呼び出され、告白を受けた。僕は迷うことなく受け入れ、付き合いが始まった。それ以降も、夢で見た風景や出来事と現実が一致することが何度かあったが、彼女には一切話さなかった。奇妙な話をすれば、変に思われるかもしれないという不安があったからだ。

高校三年生の夏に見た夢が最後だった。その夢には卒業後の追いコンのような場面が描かれていた。それ以降、彼女との夢は現れなかった。それは二人の別れを暗示しているのではないかという不安が頭をよぎったが、僕は彼女を深く愛していた。分かれたくない一心で遠距離恋愛を続けた。

就職先が決まり、社会人としての生活が始まった。僕の勤務地は東京の実家近く、一方、彼女の就職先は東京から特急で二時間ほど離れた彼女の地元だった。少し距離があるが、僕たちはその事実を受け入れ、会える頻度が減ってもお互いを大切にしようと約束した。

ところが、研修が終わり配属先が決まると、事態は一変した。僕の勤務地は東北エリアの営業所になったのだ。彼女との距離がさらに広がることに落胆しながらその事実を彼女に伝えると、彼女は「毎週末必ず行くから大丈夫」と笑顔で応えてくれた。その言葉に救われ、僕も「なんとかやっていける」と希望を持った。

彼女は本当に毎週末、僕のもとを訪れてくれた。仕事で疲れているはずなのに、その献身には感謝しかなかった。そんな遠距離の恋愛が一年半ほど続いた頃、僕に海外転勤の辞令が下った。行き先はアメリカで、期間は約二年。さすがに毎週末会いに来るのは不可能だ。僕たちの関係が終わるのではないかという不安が胸を締め付けた。しかし、それだけは絶対に避けたいと思った。

悩んだ末、僕は決心した。彼女にプロポーズをしようと。ある日、食事を終えたタイミングで、緊張で震える声で言葉を紡いだ。

「来年の頭からアメリカに転勤することになった。もし君が良ければ、妻としてついてきてほしい」

彼女は一瞬驚いたようだったが、やがて涙を浮かべながらこう答えた。

「ビザの申請、急がなきゃね」

その言葉が彼女なりの「イエス」だと理解するまでに少し時間がかかった。プロポーズを受け入れてもらえたことを実感した時、僕は胸が熱くなり、彼女の前で少し泣いてしまった。

渡米まで時間がなかったこともあり、まずは婚姻届けを出して籍を入れ、渡米後に生活が落ち着いてから結婚式を挙げることにした。渡米生活は慣れないことばかりだったが、彼女がそばにいてくれたおかげで乗り越えられた。

それから十数年が経ち、僕たちは結婚して十三回目の記念日を迎える。ふと、学生時代に見たあの夢のことを思い出す。あの夢は本当に予知夢だったのだろうか。記憶が都合よく改変された結果だったのだろうか。その答えは今もわからない。

ただ、僕は運命の人を信じるようになった。彼女も、僕と初めて会った時に「この人とずっと一緒にいるかもしれない」と漠然と思ったという。僕たちの出会いや共に歩んできた道が偶然だったのか、それともどこかで決められていたものだったのか、その真実を知る術はない。

だが、一つだけ確信していることがある。ジグソーパズルのピースがぴたりとハマったように、彼女といる時間には何の違和感もない。これからも彼女を一生大切にしていこうと、改めて心に誓っている。

(了)

[出典:139 :本当にあった怖い名無し:2015/11/09(月) 15:56:40.56 ID:nLZmspUZ0.net]

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