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廃墟の声、月下の刃 r+3515

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あたしの母方の先祖は、どうやら名高い僧侶だったらしい。話によれば、あるとき「七つ尾の猫又」と呼ばれる恐ろしい化け猫を退治したが、その際に「七代先まで祟る」という呪いをかけられたという。あたしはその六代目にあたる。

祟りを防ぐため、母方の家系では代々特別なお守りを持たせる習わしがある。そんな中、あたしの母方の祖父は昔鍛冶屋をやっていた職人で、初めての女孫であるあたしのために守り刀を作ってくれた。

といっても、それは人形に持たせるような小さなものだった。祖父はあたしをとても大切にしてくれたが、その愛情の方向性が少し独特で、雛人形の節句に「菖蒲様」の人形を送ってきたりした。

守り刀も、実際のところナイフに近いものだった。現在はペーパーナイフとして使っているが、驚くべきことにその素材は、先祖が合戦で使った刀を加工したものだという。

どうやらこの刀には「何かすごいもの」が宿っているらしく、あたしが持っている間は妙なものに遭遇することがほとんどなくなった。修学旅行で京都を訪れたときも、神社の宮司さんに「すごいのに守られてますね!」と驚かれたほどだ。

数年前のことだ。あたしは友人たちと夜中まで飲んでいた。集まったのは和也、丈史、美登利、そしてあたしの四人。話の流れで和也が「呪いのビデオでも見ようぜ」と言い出したが、深夜0時半を過ぎていて、地元のTSUTAYAは既に閉店していた。

すると丈史が突然、「ここら辺に心霊スポットがあるって聞いたぞ、行ってみようぜ!」と提案した。

あたしは「行くなら行くけど?」という感じだったが、美登利は非常に怖がりで渋っていた。それでも男二人が妙に乗り気だったため、美登利を説得し、四人で向かうことになった。

目的地は地元で有名な廃墟のホテル。元々火事で焼け落ち、使われなくなった建物だったが、特にいわくがあるわけでもない。ただ妙に「心霊スポット」として有名になっていた場所だ。

探索してみたが、特別な心霊現象は何も起こらず、美登利が涙目になっただけで終了。正直、最初から期待していなかったので拍子抜けした。

男二人は意外にも少しビビっていたようだが、何事もなく部屋に戻ることができた。しかしその夜、事件が起きた。

部屋で寝ていたところ、窓をコンコンと叩く音で目が覚めた。虫が当たっているのだろうと思い、そのまま寝直そうとしたが、丈史が突然「来るな!来るな!」と寝言を言い始めた。

さらに、美登利も「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けている。あたしは、「これはまさか」と思い始めた。

窓の叩く音はますます激しくなり、ついにドンドン!という大きな音になった。カーテンを開けると、そこには微妙に半泣きの様子のおっさんが立っていた。

驚きで二秒ほど見つめ合った後、あたしは「窓壊れるから叩かないでください。それと寝てるんで帰ってください」と告げた。すると、おっさんは神妙な顔でそのまま消えていった。

その瞬間、和也が叫びながら飛び起き、あたしにタックルしてきた。

和也は「あの窓のおっさん、お前が部屋に入れようとしているように見えた」と言うが、あたしは追い払ったつもりだった。

翌朝、丈史と美登利は「お祓いに行こう!」と顔面蒼白で訴えてきた。

近くの神社に行くと、神主さんに守り刀を見せたところ、「その刀には神様クラスの力があるから、悪霊は近寄れない」と言われた。さらに、窓の外のおっさんは廃墟に住み着いていたもので、強すぎる力に圧倒され、「来ないでくれ」と言いに来たのだろうという。

呪いについても聞いてみたが、神主さんは「詳細はわからない。ただ、その守り刀がある限り、他の悪霊は新たに取り憑くことはない」と話してくれた。どうやら、この先も安泰らしい。

丈史と美登利はその夜、「なんで来た~」とおっさんに追いかけられる夢を見たらしい。あたしの守り刀の力のせいで、ちょっとした騒動が起きた夜の出来事だった。

(了)

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