俺の友人水谷が同人の絵描きさんしてまして、俺は水谷のアパートへたまに遊びに行ってた。
2008/02/28(木) 22:40:13 ID:OTMA2iT+0
まあ、俺が行った時は水谷の為に買い物行って何か買ってきてあげたりして、後はゴロゴロしてるって感じなんだけどね。
で、ある日の事。久しぶりに俺は別の友人吉池と共に、水谷のアパートへ行ったんだ。
んで、水谷と俺達は雑談したんだけど、水谷が妙な事を言った。
「なんか夜に一人で部屋に居ると、俺の他に誰か居るみたいな感じがするんだ」
まあ、俺達は水谷がイラスト描くのに没頭し過ぎて疲れてるんだと思って、少し休んだほうがいいよ、って言って終わらせた。
で、それからまた三、四日ぐらいしてからかな？また、俺と吉池は水谷のアパートへ行った。でも、ちょっと変なんだよね。
水谷の奴、トイレに篭ってる。
ってか立て篭もってる。なんだ、どうした？って感じで水谷に話しかける俺達。
すると水谷は
「本当に八代と吉池なんだな？本当だな？」
とか言って、やっとトイレから出てきた。
トイレから出てきた水谷は、やたらと怯えている。
なんだよ、どうした？って聞いても、暫くは口も利けない感じだった。
そして、俺達に「ここを出よう、早く！」とまくし立てる。
俺達は意味も分からず、取り敢えず車で近くのファミレスへ。
ファミレスで水谷から聞いた話は以下のようなもんだった。
前の日の晩、水谷は張り切って絵（色系）を描いてた。
したら、何だか台所で人の気配がする。
『ああ、またか……』とか思いつつも『疲れてて、そんな気がするだけだ』と考えて、絵描きを続行した。
したら突然、台所と部屋を仕切ってる引き戸が、凄い勢いで開いた。
引き戸に背を向けて作業してた水谷は固まった。
後ろを振り向きたいが動けない。
どうしよう……とか考えてたら、突然後ろからヌゥ！という感じで、引き戸を開けた奴が自分の顔を覗き込んで来た。
ソイツは息が掛かるぐらい顔を近づけて、パソコン画面と水谷の間に顔を出し、水谷を見つめた。
いや、見つめるって言い方が正しいかどうか……
ソイツは目が無かった。
目がある部分はポッカリと空洞になっていて、顔も紫色って言うか、腐ってたそうだ。
その時点で、水谷はやっと体の自由を取り戻して、ダッシュで玄関から脱出しようとしたそうだ。
だが、何故か玄関の扉が開かない。
残る脱出口である窓は部屋にあるが、その部屋には例のヤツが居る。
ソイツは玄関の扉を開けようと焦ってる水谷を、部屋の中からずっと見てた。
いよいよヤバイ。そう思った水谷はトイレへ逃げ込んだ。
トイレなら鍵が付いてるって事で、逃げ場にトイレを選択したとの事。
水谷がトイレに入って鍵を掛けると同時に、凄い勢いでトイレのドアをガンガン乱打された。
そこで、水谷は気絶した。
で、次に水谷が気付いたのは、俺達が来た時なんだそうだが、まあ当然俺達だってそんな話を全部信用する気にはなれなかった。
んで「絶対それは疲れから来てるんだって、暫く絵を描くの休んだらどうなんだ？」って言ったんだけど、水谷は「絶対見た、あれは幻覚なんかじゃない」って言い張る。
まあ、その幽霊が実在してるかしてないかは別として、生活道具その他を部屋に置きっ放しな訳だし、部屋に戻らない訳にはいかない。
その日は吉池の家に水谷を泊まらせる事にして（水谷が、夜に帰るのを頑なに拒否した）、明るくなってから水谷のアパートに行こうって事で解散した。
そして次の日。
俺・水谷・吉池の三人は水谷のアパートへ乗り込んだ。
俺と吉池は何もいねーじゃん、と水谷を元気付けようとしたんだが、水谷は怖がるばかり。
こんな部屋もう居られない、解約して退出する！の一点張り。
幸い、水谷の親戚だかが近くに居るとの事で、水谷はそこへ避難する事になった。
俺達三人は口数も少なく、手早く衣類だのパソコンだの原稿だの（ここで原稿を忘れないところ、流石は水谷）を整理した。
で、そろそろ作業も終了だなって感じになった時。
トイレのドアが、内側から「ドコッ！」って感じで殴られる音がした。
水谷、アパートからダッシュ逃亡。
俺と吉池、唖然。
マジか？今昼間だぞ？そう言いながらも俺と吉池も、荷物持って急いでアパートを出た。
トイレの中は、覗く気になれなかった。
後日談
まあ、アパートを出た俺達は、やっぱりファミレスに集合。
んで、いやー恐かったなー、何だろうな、ありゃー。とか言ってた。
まあ、ああいうのって大概、過去に部屋で死んだ人が住み着いちゃってる系なんだろうし、部屋から脱出したからもう大丈夫だろ、なんて語り合ってた。
でも、実はそうじゃなかった。
つまり、幽霊は部屋じゃなくて水谷に憑いてた。
何故ならそれから更に数日後、親戚の家で寝てた水谷の所に、例の幽霊が訪問しちゃったんだそうだ。
その時水谷は布団に寝てたんだけど、やっぱり部屋のドアを勢い良く開けて部屋に入ってきた。
で、水谷の枕元に立ってお辞儀するみたいな格好で水谷を覗き込んだ。
水谷はビビッて親戚の寝てる部屋へ逃亡。
だが、幽霊は変な声？を出しながら水谷を追跡して来た。
その結果、親戚も幽霊と接近遭遇。二人仲良く絶叫。
親戚にも、バッチリ見えちゃったんだね。
まあ、進退窮まった水谷は、こりゃもう御祓いしか無いって事になったんだけど、親戚の母親が良い人を知ってるってんで、紹介して貰ったんだそうだ。
で、祈祷師の貝塚さんの所に行った水谷は、貝塚さんに無茶苦茶怒られた。
怒られたって言っても、事情を話して怒られたんじゃなくて、貝塚さんと顔を合わせた瞬間に「何を連れてるんだ、あんたは！」って感じで、唐突に怒られた。
不条理極まりない。
でも、見える人ってのは見た瞬間に分かるって言うし、貝塚さんには何か見えたんだね。
んで、結局この幽霊はどっから来たかって言うと。
水谷は数週間前に某心霊スポットに、俺達とは別の友人と肝試しに行ったんだそうだ。
そこで、水谷に付いて来ちゃったらしい。
どうせ憑くならツンデレ系美少女とかでさ、「つ、憑いてなんかいないんだからね！」とか言われたら良かったんだろうけど（水谷、そういうの好きだしね）、憑いてたのは残念ながら《目が空洞なってて腐ってる男》
当然、水谷の萌えツボには全然ヒットしていない。問答無用で貝塚さんに御祓い依頼。
まあ、御祓いは何とか出来たらしいんだけど、この幽霊、中々厄介な相手だったそうだ。しかも、超怒ってたんだと。
何で怒ってたかって言うと、幽霊が怨んでる相手と水谷がソックリさんだったらしい。
なんでも幽霊は明治時代だかの人で、水谷のソックリさんに、かなり酷いやり方で殺されたらしい。
しかし、幾らソックリさんだって言っても、水谷は夜な夜な色絵描いて萌えてる奴な訳でさ、明治時代の人なら、明らかに違う奴だって分かりそうなもんだよね。
怒り狂ってて、そういう所にまで気付かなかったのかな？
で、これで凄いなって思ったのは、貝塚さんが、その幽霊は生きてる頃、ドコソコに住んでて、こんな仕事してた人だ……って事まで言っちゃってた事。
あまり詳しくは言えないんだけど、貝塚さんが言ったその場所ってのは、確かに存在してた。存在してた、って言い方になるのは、その場所の地名が既に変わってるから。
まあ明治時代の幽霊だから、当時の地名を言ったんだろうね。
そして、幽霊がしてた仕事ってのは、その地で結構流行ってたって事実もある。
何で俺がそこまで知ってるかっつーと、そこって水谷の父方の地元だからなんだ。
但し、水谷の父方の地元は、その心霊スポットから数百キロは離れている場所。
何でまた、そんな縁もゆかりも無い心霊スポットに、その幽霊が出たのかは謎。
もしかしたら殺された場所が、その心霊スポットなのかも知れないね。
取り敢えず、水谷も吉池も俺も親戚の人も、いまだに元気です。
ただ、水谷は二度と心霊スポット巡りには行きたくないって言ってます。
あと、夜は電気点けたままで寝るようになったそうです。
2008/03/01(土) 15:26:50 ID:uawPzDlH0
水谷に憑いた霊に関して補足です。俺も気になって、水谷に電話しちゃいました。
先日は謎って言ってた部分だけど、幽霊が殺された場所ってのが、その心霊スポットだったそうです。
言葉巧みに地元から遠く離れた場所に連れ出されて、騙まし討ちみたいな感じで殺されたと。あと、目が空洞なってたのは幽霊が殺される時に、目を傷付けられたからみたい。
それと、水谷も聞いたそうですよ。
何せ父方の地元出身の幽霊だって言うし、自分とソックリさんだって言うし。
けど、それは無いそうです。あと、幽霊が水谷を追っかけた時、何て喋ってたかは不明だそうです。
まあ言葉みたいな感じだったけど……との事。
で、水谷とは師弟関係みたいな人、二宮からさっき聞いた話をしますね。
彼が一人暮らし始めた、二年前の事。
若者の一人暮らしって言ったら最近はとてつもないバブリーなのも居るけど、二宮は万年金欠。
まあ、お金が入っても、同人関連に注ぎ込みまくってるんだからしょうがないよね。
で、そんな彼だから家賃すら値切って値切って、安いところに入った。
もう皆察しはついてると思うけど、まあ曰く付きの部屋に入っちゃったんだね。
けど、二宮はそんな事全く気にせず。だってさ、好きなだけ色絵描けるし、まあ水谷の弟子だし、部屋中に色同人誌撒き散らしておいても、誰も文句言わないし。
最初の頃は、妙な音とか声とかもチョコチョコしたらしいんだけど、二宮は何がなんでも色絵と色同人誌優先。
家賃払ってるのは俺だバカヤロー、って感じで頑張ってた。
まあ、そんな感じで約半年。夜な夜な色絵描いては自分を満足させてたのね。
けど。とうとう、ご対面しちゃいました。
ある晩やっぱ色絵描いてて、そのままダウン。
で、次に目を覚ましたのは夜中の一時だか二時だか、まあソレ位の時間ね。
「あー寝ちゃったかー」とか思いながら、何気なく部屋を見渡したら、居た居た、部屋の隅っこ。なんか突っ立ってる。
二宮が見て最初に思ったのが『く、首なげー』だったそうだ。
髪がボッサボサで首長くて目玉が若干飛び出てる。
で、なんか首が長過ぎるせいか、傾いちゃってる。
しかも、フルカラー。よくTVなんかで幽霊出没シーンなんかだと、なんか幽霊って青白いでしょ？けど、二宮が見たのは普通に色があったみたい。
んで、ソイツが二宮をガン見してる。まさに"こっち見んな"状態。
で、ここで二宮が取った行動なんだけど、そのまま寝ちゃったらしい。
二宮的には『今動いたらヤバイ』という自分の本能に従ったとの事。
でも、その場に居てもヤバイって気もするけどね。
まあ、取り敢えずその日は何事も無く朝を迎えた。
何事も無ければそれで良いんだけど、二宮の奴、そこで『俺は霊に勝った』とか思っちゃったんだそうだ。
んで、まあ優越感に浸ったままバイト行って、そこで調子こいて「俺、霊に勝っちゃったっすよ！しかもソイツ、首がヒョロヒョロしてて傾いてやんの」とか言っちゃった。
でも、そんな二宮に対して、幽霊はムカついたんだろうね。
それから数日後、また出ちゃった。今度出たのは風呂場。
しかも、二宮は洗髪中。スッポンポンだし風呂場だし、逃げ場無し。幽霊も中々の戦術家だね。
で、その幽霊、明らかに怒ったような顔して、二宮を見てたそうだ。
しかもさ、カクカクカクカク！って感じで、二宮に迫ってきた。
その時、傾いた首が小刻みに揺れてたのが滅茶苦茶恐かったそうだ。
当然、二宮ビビリまくり。悲鳴上げたら居なくなったそうだけど、流石の二宮も本格的にヤバイって思ったらしく、部屋から逃げる事にした。
でも、貧乏の悲しさ。引っ越すにしてもカネが無い。
だもんで、昼も夜も必死なってバイトしてカネ貯めて、眠い時はネット喫茶で過ごして何とか脱出。
今は無事に別の部屋で同人ライフを満喫しています。
まあ、幽霊を馬鹿にしちゃいけないって事だよね。
