短編 怪談

目のない人#889

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最近『目のない人』をよく見かけるようになった。

583: 本当にあった怖い名無し:2010/05/11(火) 02:29:09 ID:heQnbitS0

普通の盲目者ではない。

眼のある位置に、やたら大きく、黒い空洞がある人だ。

街角の、何気ないところに立っていて、

少し離れた場所から俺をじっと見つめている。

俺からは、たいてい見え辛い距離にいるんだけど、

目の空洞はなぜか良く分かる。

多分俺はいつか失明するのだろうけど、仕方ない。

俺の家は、ぶっちゃけた話呪われているのだ。

話しづらいことだけども。

俺の父は幼少期、とある小さな山村で暮らしていた。

だが、祖父の兄のTという男が、隣人を殺したことで、

一族ごと村八分にあい、逃げ出すように引っ越した。

引越し先が、いま俺の住んでるこの家なんだけど。

殺人犯のTなんだけど、祖父が言うには

これがどうしようもない男だったらしい。

酒を飲んでは、見境無く女に手をだしていたそうだ。

放っておくと、人妻であろうが幼女であろうが

強姦する男だったのでまわりにいる良識ある誰か、

大抵は祖父だったのだが、Tを止めなければならなかった。

しかし、そうするとTは激怒し、暴れだしていた。

止めようとした人間に、ひどい暴行を加えていたそうだ。

Tは体がとにかく大きく、喧嘩の強い人間だったため、

一度激怒すると誰も止めることはできなかった。

隣家の家長のKが殺されたのは、Tを止めようとしたのが原因らしい。

奥さんをTに強姦されそうになり、堪えかねてTを殴ってしまった。

これがTの逆鱗に触れた。

Kを殴り倒してのしかかり、ひたすら殴り続けた。

Kの家族は、Tの怖さに震えるばかりで、何もできなかったそうだ。

Kは、動かなくなっても殴り続けられた。

顔は、文字通り潰れ、およそ二倍の大きさまで膨れ上がる。

顔中に紫色の痣が出来、

もはや誰の顔だか判別できないほど変形させられたそうであった。

Tは、最後に、何を思ったか、

ピクリとも動かないKの顔から、両眼球をえぐりだした。

そのまま、目玉を酒瓶に入れ、どこかに持っていってしまったそうだ。

その目玉は、帰る途中で酒瓶ごと、川に投げ捨てた、とTは言った。

そのまま目玉は行方知れずとなった。

俺の祖父一家は、お詫びの意味もこめ目玉を探したが、

結局見つからずじまいだった。

この一件のために、俺の一家はいわば目玉の呪いというものに受けたそうだ。

Tは、俺が生まれた頃に、酷い病気にかかった。

目玉が、両方腐り落ちてしまったそうだ。

原因は不明である。

Tはそのまま病死した。

その頃、祖父も目の病気に罹り右目を失明した。

ほどなくして左目の光も失ってしまった。

父は、現在進行形で目の悪い病気にかかっている。

治る見込みはなく、視力がどんどん弱まり失明していくだけらしい。

俺は、まだ目の病気をもっていない。

が、最初に言った目のない人は良く見かける。

いまだ危害を加えられたり、近くに寄ってこられたりはしていないが、

彼を見かける度に背筋が凍る。

弟も、目のない人を見かけたことがあるという。

父も、俺と同じ年のころ良く見かけたそうだ。

目のない人=Kなのかは、俺には良く分からない。

けどなんとなく実感している。

これが呪いって奴なんだな、と。

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