短編 ほんのり怖い話

壁の落書き#982

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このあいだちょうど小学校の同窓会があったんで、そのときに当然のごとく話題に上がった、俺たちのあいだでは有名な事件をひとつ。

330 :本当にあった怖い名無し:2009/07/31(金) 15:51:19 ID:DqOyCm7J0

俺が通っていた小学校はちょっと変わっていて、三階建ての校舎のうち、最上階の三階が一・二年の教室、二階が三・四年の教室で、一番下の一階が五・六年の教室になってる。

別の学校に通ってた従兄弟にこの話したらびっくりしてたんで、多分俺の学校が特殊なんだと思う。

校舎自体はコンクリート造りで、相当というほどでもないが、そこそこ年数がたってたらしく、廊下の壁とかは薄汚れていて、汚いなと子供ながらに思ってた記憶がある。

で、六年になるまで気がつかなかったんだが、一階の六年二組の教室の前の廊下だけ、壁が綺麗に塗りなおされてるのね。

下級生の時代に六年のフロアになんか怖くて行けないから、知らなくて当たり前なんだけども。

もともとのコンクリートの壁と似たような色のペンキで、隣りの六年一組との境目から六年三組の境界まできっちりと塗られてる。

そこだけ汚れてないからすぐわかる。

ある日、その塗りなおされた壁の右下に近い部分、六年三組寄りに、うすーく鉛筆で

『←ココ』

って書いてあるのに気がついた。

『←ココ』

と指された部分を見ても、まあ何の変化もない。

ただの壁だ。

その当時、学校では校舎の至るところに、

『左へ三歩進め』

『真っ直ぐ5歩進め』

『上を見ろ』

『右を向け』

などと書いて、その通りに進んでいく、という遊びが流行っていたので、

『←ココ』

もその類のものだろうと、気にも留めなかった。

二週間くらいしてからかな、友達の八木君が教室の外で俺を呼んでいる。

行ってみると、廊下の壁の『←ココ』の矢印の先に、青いシミが浮き出てたのよ。

五cmくらいの小さなシミだったけど、ちょうど矢印が指している先に出たもんだから、俺と八木君で「すげー、不思議だね」とか言ってた。

次の日、そのシミはいきなり倍くらいの大きさになってて、『←ココ』の文字の部分にまで広がってて、もうその文字は見えなくなっていた。

その代わりに、シミの形が人間の手のように見えた。

さすがに俺たち以外の生徒もそのシミに気がついて、形が形ってこともあって、瞬く間にクラス中に『呪いのシミ』として話題になった。

その話が先生の耳にも入ったらしく、その日の帰りのHRでは、

「何でもないただのシミだから、気にするな」

と、半ば強制的に家に帰されたわけ。

その週が空けて、次の月曜に教室に行くと、なんと、廊下の壁のシミがあった部分が丸々はがれ落ちてて、しかもそこを中心に、上下に細い亀裂と言うかヒビが入ってんの。

俺が教室に行くとすでに廊下で数人が騒いでたので、見たらそんな状態。

朝のHRで先生が来るまでは、俺のクラスと両隣のクラスの何人かも含めて大騒ぎで、

「絶対この壁のうしろに何かあるよ」

「死体が埋められてる」

なんていう話にもなって、クラスのお調子者桐原君が、カッターでその亀裂をガリガリやろうとしたところに、先生がきてものすごい勢いで怒られてた。

申し訳ないけど、俺はそのとき知らない振りしてた。

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その昼休みに、桐原君が懲りもせず「朝の続きやろうぜ」と言い出した。

壁を削る続きをやろうぜ、と言うわけだ。

俺は怒られるのが怖くて「やだ」といったんだけど、桐原君が「ここ見ろ」と言うので見たら、剥がれ落ちた中の壁から、色の違う部分が見えてる。

灰色の壁に、黒い太い線で横断歩道のような模様が描かれてるのが、はがれ落ちた部分から確認できた。

「これの続き見たいだろ?」桐原君が言う。

桐原君はカッターを持って、崩れた壁の部分をカリカリやり始めた。

面白いように塗装が剥がれていく。

すると、壁の中から『組』という文字が現れた。

さっき横断歩道のように見えた模様は、「組」の右側だったわけだ。

もうこの後に何かあることは間違いない。

クラスの男子の半分近くが一緒になって、壁の塗装を崩し始めた。

コンパスの針でつついたり、定規の角で削る者、彫刻刀を持ち出す奴までいた。

ちなみに俺は、崩すのを回りから見てただけね。

大抵こういう場合、壁のうしろに死体が埋まってただの、文字がびっしり書かれてただの、お札がいっぱい貼ってあっただのがよくあるパターンで、俺も当時すでに、怖い話としてそういった話をいくつか知っていた。

この壁の向こうにあるものも、まさにそういうものなのか?

そのドキドキと、先生に見つかったらどうするんだと言うドキドキで、心臓がきりきり締め上げられるような気がした。

昼休みが半分たたないうちに、壁の塗装はあっという間に崩れた。

中から出てきたのは、お化けでもなんでもない、子供たちが描いた絵だ。

『平成二年六年二組』

と書かれてる。

当時の卒業生が描いたものなんだろう。

三十人くらいの男子女子の似顔絵が、集合写真のように並んで描かれている。

ただし、異様なのが、その顔一つ一つ全てが赤いペンキでと塗られていたこと。

特に上の段の右から三番目の子は、どころか完全に赤く塗りつぶされ、その下に書いてあったはずの名前も、彫刻刀かなんかで削り取られていた。

俺たちは先生に怒られるだろうと覚悟を決めていたが、五時間目に先生が来るといきなり、

「よし、五時間目は体育館で自習だ。ランドセルに教科書とか全部入れて、五時間目が終わったらそのまま家に帰っていいぞ。掃除もしなくていい。教室に戻らずにそのまま帰れよ」

と、全く怒られなかった。

そして次の日に学校に行くと、一階の教室が全て立ち入り禁止になってた。

俺たちは急遽建てられたプレハブで、六年の残りの学校生活を送るハメになった。

この間十三年ぶりに小学校の同窓会があって、当然のごとくその事件が話題に上がった。

当時の担任も来ていたので、

「先生、あの事覚えてますよね?あれはなんだったんですか?」

ときいてみたが、

「いや、そんな事あったか?覚えてないなあ」

とか、超すっとぼけてた。

だが、俺たちは全員あの事件を覚えている。

(了)

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