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さとしくん r+1294

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数年前の夏、保育士として四歳児クラスを担当していた時のことだ。

その出来事は八月頃に始まった。突然、私のクラスに“見えない子ども”が一人増えたのだ。それに気づいたきっかけは、クラスの子どもたちの反応だった。

ある日、いつものように製作の準備を整え、机と椅子を人数分用意して子どもたちを座らせた。だが、一人の子が悲しそうな顔で座ろうとしない。「みずきちゃん、どうしたの?」と尋ねると、「座る席がない」と答える。見れば席は確かに空いている。「ここ空いてるよ」と指差すと、彼女は「さとしくんが座ってるよ」と言った。

しかし、私のクラスに“さとしくん”という子はいない。他のクラスにも、同学年には存在しない。唯一心当たりがあるのは違う学年のクラスに一人いるが、その子はその時園庭でプール遊びをしていた。なんだか不気味に思いつつも、「誰も座ってないよ、みずきちゃんが座って大丈夫」と促したが、周囲の子どもたちまで「さとしくんが怒っちゃうよ!」と口々に訴えるのだ。

仕方なくもう一つ椅子を用意し、その場を収めた。そこから、“さとしくん”が存在するという前提の生活が始まった。子どもたちはまるで彼が本当にそこにいるかのように振る舞う。

室内の自由遊びでは、誰かが一人で遊んでいるように見えても「さとしくんと遊んでる」と言う。帰り際には誰もいない方向に手を振り、「バイバイ、さとしくん」と別れを告げる。夜に残業していると、階段を子どもが駆け上がるような音が聞こえることもあった。子どもたちのあまりの自然さに、私も次第に慣れてしまった。

給食の時間にはさらに困ることがあった。さとしくんの分を用意しないと、子どもたちが「さとしくん可哀想!」と怒るのだ。給食室に頼むわけにもいかないので、私の分を少し分けていた。実害は無かったが、どこか奇妙で不思議な日常だった。

しかし、その異様な生活はある日、突然終わりを迎える。八月の終わり頃、いつものようにさとしくんの席を用意していると、子どもたちが「せんせー、お椅子一つ多いよ!」と言い出した。「さとしくんの席だよ」と説明すると、「さとしくんって誰?」と返ってきた。

頭が混乱した。あれほど親しげにさとしくんと接していた子どもたちが、彼のことを全く覚えていないのだ。

約一ヶ月間、子どもたちが当たり前のように接していた“さとしくん”とは一体何だったのだろうか。実害はなかったものの、ほんのりとした恐怖を感じるひと夏の不可解な体験だった。

この話は後日、ある掲示板に投稿された。

投稿に対して、さまざまな反応が寄せられた。

「保育士一人の妄想だったのではないか?子どもへの影響を考えて休職を検討した方が良い」といった意見もあれば、「他の職員も子どもたちがさとしくんと遊んでいる様子を見ている以上、妄想や統合失調症のような話ではないと思う」といった反論もあった。

「子どもたちが帰った後の足音なども完全に消えたのか?」という質問に対しては、「頻度は低かったが、いつの間にか無くなった」と投稿者が答えていた。

不可解な現象だったが、真相は闇の中だ。

(了)

[出典:901 :本当にあった怖い名無し:2016/06/08(水) 19:21:09.17 ID:3o4sduaD0.net]

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