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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

真夜中の訪問者【ゆっくり朗読】6900

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私は父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。

133 本当にあった怖い名無し 04/08/13 13:34 ID:bXM6S1P+

現在は結婚して、家は出ていますが、私がまだ母と暮らしていた、十七歳の頃の話です。

夜中の三時ぐらいに、ピーーと玄関のチャイムが鳴りました。

丁度その日は母と夜中までおしゃべりをしていて、二人とも起きていました。

「こんな遅くに誰だろね」なんて話しつつ、私が「はい」とインターフォンをとりました。

そうすると女性の声で、「あの…あの…突然すみません……今晩、あの…泊めて頂けませんか」と。

声の感じでは四十代ぐらい。

その妙におどおどしていた感じが気になって、

「え?泊めてくださいって母の知り合いの方ですか?」と聞き返しました。

すると相手は、

「いえ…全然違うんです…あの…私近所のマンションに住んでまして、あの…私会社をクビになって…あの…もう住む所がなくて…だから泊めて頂きたいと……」

話がよく理解できなかった私は、

「母の知り合いではないんですね?でも泊めるのは……」と、おろおろしてしまいました。

そこで見かねた母が「私が変わるから」といって、インターフォンで話はじめました。

私は一体なんなんなんだろ?と思って、玄関の窓越しに相手を見に行きました。

私が玄関の窓越しにみたその女性は、明らかに変な人でした。

まず、顔はもうどうみても五十代なのに金髪の長髪。

白い帽子をかぶっていて、明るい緑のブラウスに、赤地に白の水玉のふわっとしたスカート。

右手には、たくさんの物が入った紙袋を持っていました。

その様子をみて、これは変な人だ!と察知した私は、まだインターフォンで話している母に、

「ちょっとママ!玄関に来てる人、絶対変!怖いからもうやめよう!相手にしないで『駄目です』っていって断ろう!」と、まくし立てました。

そしたら母は、「ははははは」と笑って、「なんかこの雨の中、傘もなく歩いてきたんだって。怖いなら、傘だけでも貸して帰ってもらおう」と言うじゃありませんか。

その日は、確かに雨がざんざん振りでした。

私はもう、その人の外見をみてるので泣きたくなって、こういう事にだけは度胸がある母をうらみました。

私は怖くなったので、玄関から離れた奥のリビングで、玄関の様子を伺っていました。

母が玄関を開けて話している声が聞こえてきて、しばらくすると、

「家には入れられません!帰ってください!」

母の怒鳴り声が聞こえました。

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私は普段、母の怒鳴り声なんか聞いたこともなかったので、それだけでかなりビビッてしまい、その時点で涙目になっていました。

玄関ではガチャガチャガチャガチャ!!と、チェーンの付いた扉を無理やり開けようとする女性と、閉めようとする母が出す音が大きく響き渡り、十七歳の私を泣かせるだけの迫力がありました。

でも、その押し問答の最中も聞こえてくるのは母の声だけ。相手の声はしません。

やっとバタン!と玄関が閉まる音がして、母がふぅふぅ言いながら部屋に帰ってきました。

「あの人、やっぱりマリコの言うとおりだね。頭おかしいみたい。怖かったでしょう、ごめんね」

「なんかされたの?大丈夫?」

母はまた笑って、「いやいや、全然大丈夫。今日はもう寝なさい」と。

しかし、この話をしている最中に、また玄関のチャイムがピーーピーーピーーピーーと物凄い勢いで鳴り始め、今度は玄関のドアが、ドンドンドンドン!!と叩かれました。

私のビビり具合はMAXに達して、「警察に電話しようよ!」と泣き始めました。

母は「あとしばらく続くようなら警察を呼ぼう。あなたはもう寝なさいって。大丈夫だから」と言い、寝る準備を始めました。

私は怖くてなかなか寝付けず、しばらく玄関の音に耳をすませていました。

玄関の音は三十分ぐらいで止みましたが、それ以来しばらくは、夜中のお客さんは怖くて怖くて仕方ありませんでした。

その夜の出来事から五年後、私は一人暮らしを始める事になりました。

明日から新しい部屋で暮らす事になった晩に、母と話をしていて、

「そういえば、あんな事があったね~。私怖くて怖くて、めっちゃ泣いた記憶がある(笑」

すると母が、「う~ん、あれだけで怖がってるようじゃ大丈夫かしらね、一人暮らし」と言うので、

「あれだけで?」と聞いたら、母はこう話してくれました。

「私ね、あの時あなたが、物凄く怖がってたから言わなかったけど……
まずあの人ね、雨が降ってる中歩いてきたって言ったのに、全然雨に濡れてなかったのよ。で、左手にバットを持ってたの。しかも、あの人、男の人だったよ」

私が腰を抜かしたのは言うまでもありません。警察呼んでよママ………

「なんで警察呼ばないの~!」

「なんだか逆恨みされそうじゃない、家はもう知られてるし」

その次の日から一人暮らしをする事になった私ですが、怖くてしばらくは実家に帰っていました。

みなさんも、夜中の来客にはお気をつけください。

(了)

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