短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

奇石収集【ゆっくり朗読】700

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大学生の頃、ファーストフード店でバイトしてた時の話

837 :本当にあった怖い名無し:2022/04/09(土) 03:02:08.56 ID:Rego1kZs0.net
先輩に、3か月勤務して3か月休む。それからまた3か月勤務して……ってのを繰り返してる人がいた。

バイトリーダーからは使いにくいって嫌がられてたけど店長の知り合いってことで雇われてた。

自分はその先輩と組まされることが多かったんだけど個人的な印象としてはちょっと暗いけど普通の人。

暇な時とか無言なのもあれかなと思ってちょくちょく話しかけてた。
それで休んでる時は何をしてるのか、ある日聞いてみた。

「旅行行ってるんだよ」

「海外旅行とかですか」

「いや、国内だけだね」

「観光名所めぐりとかですか」

「そういうのは全然興味なくて」

「適当に日本地図にダーツ投げてそこにいくとかですか」

「まぁ、近いかも」

「行ってからその土地のいいところを自分で探す的な?」

「うーん、どうなんだろ」

「……旅行先で何してるんですか」

「石を集めてるんだよね」

「パワーストーンとかですか。自分も集めてますよ」

「それとはちょっと違うかなぁ」

「原石収集とか、鉱物収集とかですか」

「うーん」

「もしかして奇石収集とかですか」

「あー、それに近いかも」

「渋いっすね」

自分はその頃、パワーストーン集めに凝ってた

それでその日、頼み込んでバイト終わりに先輩の奇石収集を見せてもらうことになった。
零時すぎ、掃除終わって徒歩で先輩のうちに向かった。
で、体に異変が起きた。
歩いているとやけに体がだるくなって特に頭が異常に重く感じた。
自分は風邪もほとんど引いたことがない超健康優良児でおおきな怪我や病気の経験も皆無。
だから自分の身に何が起こってるのか本当に分からなかった。

最初はゾンビみたいに前かがみになりながら歩いていたけどそれもつらくなって
結局赤ん坊のようにハイハイで歩いてた。
先輩はそれを見て心配そうに見てた。

自分は体の丈夫さだけは謎の自信を持っていたので
そんな状況になっても人に助けを求めるという選択肢が頭になかった。
今なら、馬鹿じゃないか、と分かるのだからパニック状態になってたのかも。

それでもどこかのコンビニの駐車場に着いたところで
「用事思い出したので止めておきます」とようやく言った。

先輩は「それがいいかも」と言って足早に去っていった。
最悪、コンビニに飛び込んで救急車よんでもらおうと思っていたら
先輩が去ると次第に回復して5分後には元通りの健康体に
先輩を追いかけようかと迷ったけどやっぱり止めた。

半年ほど過ぎたころ

先輩は来なくなってたけど自分含めて誰も気にしてなかった。
どっかに腰を据えて就職でもしたかなと思ってた。

ある日、店長に明日バイトしないかと言われて休日出勤かと思って了承すると
「朝の4時に店の前に来てくれ」と言われた。
時間通りに行くと店長の車に乗せられて15分ほど走って3階建てのマンションの前に着いた。
マンションの前には管理人らしきしかめっ面で腕を組んだお爺さんと困り顔のおばさんが立っていた。

店長に倣って二人に軽く会釈をして階段で3階に上がると角部屋のドアが開け放されていた。
部屋の中には黒いごみ袋が大量に置いてあった。

その一つ一つを店長と自分の大の男二人がかりで抱えて汗だくになりながら店長の車に詰めこんだ。

車が一杯になると海まで行きまた二人で抱え上げて砂浜まで運んでから袋を破って中のものを散乱した。

抱えて運んでいる最中にはすでに気づいていたけど中に入っていたのは手のひらサイズの無数の石だった。
トイレや風呂にまで置かれていたゴミ袋を全部運びだし、海からマンションへ戻ってくると、ずっと作業を見張っていたお爺さんはいなくなっておりおばさんだけになっていた。
おばさんは店長に封筒を渡すと深々と頭を下げた。

「あいつとは小学校からの腐れ縁だったけど今日でそれも最後だな。中学校でいじめにあってさ、
その頃から墓地の石を集め始めたんだよ。最初は近所の墓地を自転車で巡って集めてたみたいだけど
その内、休みの日には電車やバスに乗って見知らぬ墓地に行って手ごろな石を集めるようになってた。

まださぁ、それもどうかなって思うけど、石の一つ一つに付箋でもつけてどこどこの石何月何日収拾、
とでも書いて大切に保管しているなら、まだ分かるんだけどゴミ袋の中に無造作に放り入れて
一杯になったら口を結び次のごみ袋へってのを繰り返す意味が本当に分かんないんだよ……
結局、リサイクル業者も気味悪がってお金払うって言ってるのに持ってってくれないしさ、いい迷惑だよ」

そういうと、中を確認もしないで封筒をくれた。

家で確認したらバイトの3か月分の給料だった。

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