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短編 r+ 怪談

巡回ビルメンテナンス r+1073

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これは、都内のビルを巡回点検していたあるメンテナンス会社の社員が体験した話だ。

彼の担当外のビルでの点検作業だった。夏休み期間中の交代勤務で、普段触れることのない設備の点検に従事することになった彼は、手順書を片手にそのビルへ向かった。エレベーターで最地下まで降り、そこから階段を使い、ビルの最下層へと到達する。フロアは薄暗く、人の気配もない。手順通り配電盤を見つけて明かりをつけると、無機質な空間が一気に照らされる。

作業自体は滞りなく進んだ。ただ、設備をチェックしているうちに気になることがあった。ビル全体の規模に比べて、設備が明らかにオーバースペックなのだ。消費電力も異常に高い。何か大型の実験装置でもあるのだろうか。疑問を抱きながらも、特に問題なく作業を終えた。

だが、作業終了の直前に目に入ったものがあった。壁の一角に、見慣れない小さなエレベーターの扉。最地下に行くには階段しかないはずだったが、どうやらこの扉は別のルートを隠しているようだった。扉に近づき、セキュリティカードをかざしてみると、無音で扉が開いた。その中は、明らかに人が乗れるサイズ。階数表示を見ると、地上階、彼がいたフロア、そしてさらにその下の階層まで続いている。

彼はその場で乗り込むことを一瞬考えたが、契約違反になる可能性を思い出し、思いとどまった。フロアの内線電話で警備室に連絡し、地上フロアへ戻った。その後、警備員とのやり取りで奇妙な会話があった。

「そういえば、先週まで担当されていた方、亡くなったそうですね。」

「Kさんですか?……いえ、今週から夏休みで来週には戻ってくるはずですが?」

「ええ、私もそう聞いてたんですけどね……間違いですかね?」

その会話が引っかかりつつも、彼はその場を後にした。しかし事務所に戻ると、衝撃の事実を聞かされた。Kさんが、昨日、自宅で急死したというのだ。健康診断でも問題なく、社内のサッカー部で活躍していた彼が、突然心不全で亡くなったという話に、誰もが困惑していた。

さらに不審なことが続いた。Kさんの死は会社内で公にはされず、彼の自宅のマンションは早々に売却され、家族は消息不明となった。そして1週間以内に、課長や一部の社員が異動となり、コンプライアンス教育と称して「契約外のエリアには立ち入るな」という指導が厳格化された。例のエレベーターを見つけたことが問題になったのではないかと一瞬考えたが、特に注意されることもなかった。

彼はKさんの後任として、そのビルを含む業務を引き継ぐことになった。そして1週間後、再びそのビルで点検作業を行った際、サインを求めると警備員がぽつりと呟いた。

「やはりKさん、亡くなられたようですね。真面目な方だったのに残念です。」

警備員の言葉に彼は動揺した。この警備員はKさんの死をどうやって知ったのだろうか?彼自身、Kさんの訃報を聞いたのは事務所に戻った後だった。ビルの薄暗い地下フロアと、セキュリティカードで開いたエレベーターの扉。その先にある階層の存在。そしてKさんの死が広まる前に、それを知っていたかのような警備員の言葉。

あのエレベーターの先に何があるのか、Kさんに何が起こったのかは、今でも誰も答えを知らない。

[出典:860 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/07/23(月) 14:52:39.19 ID:qVgAWq5Z0]

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