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短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

待っていた女 r+7662

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大学時代に体験した話

ずっと心の中に溜めていたけど、ようやく決着がついたので、吐き出すつもりで書いてみる。
幽霊の話じゃない。人間――しかも「狂った人間」が一番怖いという話だ。

大学1年の秋頃。友達と飲んだ帰り、終電の一本前くらいの電車で最寄り駅に着いた。駅から家までは徒歩15分。毎日のように通る道の途中には、小さな神社がある。地元民しか知らない、ひっそりとした神社だ。

その日は人通りもまばらで、何気なく神社の中に目を向けた。正面に本堂、右側には小さな雑木林が広がる。昼間なら向こう側の道路が見えるほどの狭い林だ。

一瞬のことだったが、雑木林の中で“何か”が動いたのが見えた。真っ白な服を着た人影が、木に向かって何かを振りかぶるような動作をしている。性別は分からなかったが、すぐにピンときた。

丑の刻参り――呪いの藁人形だ。

詳しい知識はなかったが、丑の刻参りには「誰にも見られてはいけない」という条件がある。もし見られたら「呪いが跳ね返り、見た人間を殺さなければならない」という俗説も知っていた。
その瞬間、背筋が凍った。何より怖かったのは、その人が誰かを心底呪っているという“怨念”を見てしまったことだ。

何事もなかったかのように神社を通り過ぎ、100メートルほど歩いた交差点で何気なく後ろを振り返る。すると、神社の影から白装束の“それ”が顔だけ出して、こちらをじっと見ていた。
「見られた」と悟られた――そう直感した。

女だった。長い髪が揺れている。
冷や汗が止まらない。だが走ればかえって気づかれそうで、歩幅を変えずに進み続けた。しかし、後ろを振り返るたびに、彼女は一定の距離を保ちながら、こちらを尾行している。電柱やゴミ箱の影に隠れつつも、その動きは見え見えで、余計に不気味だった。

逃げ切れないかもしれない――そう思った瞬間、彼女が姿を消した。
しかし気づく。「分岐道を使って先回りされる!」
合流点に着いたとき、彼女はすでに5メートル先に迫っていた。
「ああああああ!!」
彼女は叫びながら、右手に小さなハンマーを握り、こちらに向かってきた。

恐怖で我を忘れ、全力で走った。幸いにも、家の前にあるローソンに逃げ込んだ。
彼女は道路の向こうで仁王立ちし、こちらを凝視していたが、警察を呼ぶとサイレンの音を聞いて逃げ去った。

後日、彼女は別件で捕まり、精神病院に収容されたらしい。
これで終わった――はずだった。

それから2年後。大学3年の秋、事件は再び起きた。

夜のバイト帰り、最寄り駅の改札を出た瞬間、見覚えのある女性が目の前にいた。ドラえもんのシャツに汚れたスカート。目がどこかイっていて、こちらをジロジロ見てくる。

「気持ち悪いな」と思いながらも、目が合った。女はにやりと笑い、「あの時の返しに来たよ」と言う。意味が分からず、振り切ろうとしたが腕を掴まれた。
そのままベンチに座らされ、女は淡々と話しかけてきた。

名前や年齢を聞かれ、適当に答えてあしらおうとしたが、女は急に低い声で言った。

「待て。殺すぞ」

次の瞬間、彼女はポケットから小さな包丁を取り出した。腕を掴まれたまま、恐怖と怒りが入り混じる。

「やれるもんならやってみろ、クソババア!」
強引に腕を振りほどき、逃げた。

だが、女は「殺してやる!」と叫び、駅の階段を駆け下りてきた。
「あの女だ――白装束のあの時の女だ!」
すぐに交番へ駆け込むと、彼女は警官にも切りかかったが、取り押さえられた。

事件後、彼女は精神病院ではなく更生施設に送られた。

そして数年後、彼女は施設内で自ら命を絶ったと聞いた。

今となっては、彼女も何か辛い過去や絶望を抱えていたのかもしれない――と少しだけ思う。でも、それでも怖かった。心の底からの悪意が、自分だけをターゲットに向けられるという恐怖は、言葉にできないほどのものだった。

人間の狂気ほど恐ろしいものはない。
この話は、そういうことだ。

(了)

[出典:613: 2015/09/10(木) 22:59:40.98 ID:k16fs3vw0.net]

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