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離れていない rw+3,989-0109

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盆休みの時期になると、どうしても思い出してしまう。

高校の同級生五人で集まるのは、実に五年ぶりだった。全員、地元を出て別々の場所で暮らしている。集まれば昔の延長みたいな空気で、くだらない話しかしない。それが心地よくて、今年の盆休みも自然と集まる流れになった。

墓参りだけは済ませた。あとは完全にノープランだった。県内を適当に回って、景色のいい道を走って、腹が減ったら何か食って帰る。それだけのつもりだった。昔から、そういう一日が一番楽だったから。

言い出したのは、後部座席にいたあいつだった。

「滝不動、行ってみね?」

車内の空気が一瞬だけ止まった。滝不動。地元じゃ知らないやつのほうが少ない場所だ。幽霊が出るとかより、関わったあとにおかしくなる人間が出る、そういう噂ばかりが残っている場所。検索すれば、体験談はいくらでも転がっている。

正直、嫌だった。でも誰もはっきり反対しなかった。笑いながら賛成するやつもいた。五年ぶりに集まった空気の中で、水を差すのが怖かったんだと思う。

現地に着いたのは、夕暮れに差し込む前だった。住宅街を抜け、坂を登る。途中に火葬場があって、その奥に滝不動の敷地がある。祠と幟と、鬱蒼とした木々。それだけだ。観光地でも何でもない。車一台がやっと通れる細い道が、奥へと続いている。

白い車で行くと、帰りに赤黒い手形がつく。そんな噂があった。よりにもよって、俺のインプレッサと、もう一台のスカイラインが白だった。嫌な予感はしていた。でも、誰も何も言わなかった。

車を降りて、適当に写真を撮った。スマホを回して、意味のないポーズを取って、笑った。笑い声がやけに軽くて、地面に落ちずに浮いている気がした。風はなかった。木も、幟も、動いていなかった。

煙草が吸いたくなって、俺だけ先に車へ戻った。エンジンをかけ、窓を少し開けて、煙を吐いた。そのときだった。

一本だけ、幟が揺れていた。

風に煽られるみたいに、パタパタと。ほかの幟は一切動いていない。煙は真上に立ち上っている。なのに、その一本だけが、俺の車の正面で揺れていた。

目を離せなかった。揺れ方が、風じゃなかった。誰かが、布を掴んで振っているみたいだった。

「……帰るぞ」

声が震えていた。叫ぶように仲間を呼び、全員を車に押し込んだ。三人がインプレッサ、残り二人がスカイライン。とにかく離れたかった。サイドブレーキに手を伸ばした、その瞬間。

左手を、強く掴まれた。

後部座席の誰かだと思った。反射的に怒鳴った。

「ふざけんな!」

返ってきた声は、泣きそうだった。

「俺じゃない!俺じゃないって!」

車内の全員が、同時に沈黙した。誰も動いていない。誰の手も、俺の左手に触れていない。それが、感触だけでわかった。

無理やりブレーキを下ろし、アクセルを踏んだ。スカイラインは動かない。セルの音だけが、空気を削るみたいに響く。

「早くしろ!」

そのとき、車体が叩かれた。

ボムッ。ボムッ。ボムッ。

三回。規則的だった。雨でも風でもない。外には誰もいない。それでも、確かに何かがいた。叩かれた感触が、金属を通して身体に伝わってきた。

スカイラインがようやく動き出し、二台で一気に山を下った。街の明かりが見えたとき、全員が同時に息を吐いた。

コンビニの駐車場に停めて、誰も喋らなかった。スカイラインのやつが、途中で勝手にライトが点滅したり、マフラーの音が変わったりしていたと言った。触られていた感じがした、と。

スマホを確認した。写真はすべて、真っ赤だった。人も景色も消えて、赤いノイズだけが画面を埋めていた。最後の一枚だけ、隅に白い手のひらが写っていた。

それ以来、俺の左手はおかしい。力が入らない。感覚が鈍い。医者に行っても、原因はわからないと言われる。

たまに思う。あのとき、俺の手を掴んだものは、まだ離していないんじゃないかと。
盆の夜になると、左手だけが、少し重くなる気がする。

[出典:18 :名無しさん@おーぷん :2015/08/17(月)23:07:41 ID:C4I]

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