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呪詛(すそ)の祭文 r+751

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提婆王の妃の怨念と呪詛

提婆王の妃は、深い怨念に取り憑かれていた。その怒りと無念を晴らすため、彼女は夜ごと数多の呪法に手を染めていた。そんなある日、不思議な存在である唐土じょもんが姿を現した。彼は呪術に精通する者らしいが、妃に向かって静かに告げた。

「お前の呪法は、人間が手を出してはならぬ禁忌のものだ」

その言葉に、妃は自らの境遇を語り始めた。彼女の夫である提婆王は、かつての王、釈迦釈尊の弟だったという。釈迦釈尊が王位にあった頃、彼の妃が重病に倒れたことがあった。妃の回復を願った釈迦釈尊は、世にも珍しい七十五の宝を集めた者に王位を譲ると宣言したのだ。

提婆王はその大役を見事に果たし、王位を得るはずだった。だが、臣下の一人が横槍を入れた。

「もし、王妃の病が癒え、生まれた子が女であれば王位を譲るべきです。しかし、男子が生まれ、無事に七歳まで育った場合、その子に王位を継がせ、提婆王には行脚修行に出てもらうのはどうでしょうか?」

釈迦釈尊はその提案を受け入れた。そして実際に男子が誕生した。釈迦王と名付けられたその子は健やかに成長し、提婆王は剃髪して修行の旅に出ることとなった。その結果、妃の心には無念が深く刻まれた。

「私は夫の甥である釈迦王に呪いをかけているのだ」

妃はそう語り、唐土じょもんに呪いを成就させてくれと懇願した。唐土じょもんは初めこそ呪術は人間の手に余るものだと断ったが、妃の熱意に折れ、「たくさんの品物を積むならば」と条件を提示した。妃は条件を飲み、ついに釈迦王に呪いがかけられた。

釈迦王は重病に倒れた。八万四人の弟子たちが祈祷を行ったが、誰の力も通じなかった。一番弟子であるこうてい菩薩が占ったところ、「唐土じょもんに相談するのが良い」という結果が出た。

唐土じょもんは釈迦王の父、釈迦釈尊から救いを求められた。彼は妃から受け取ったのと同じ品々を要求し、「この子に罪はない。呪詛を一掃返ししてやろう」と告げて呪いを払った。結果、呪詛返しが妃自身に降りかかり、彼女は重病となった。

妃が再び唐土じょもんを訪れ、訳を尋ねた。

「こりゃ呪詛返しを食らったのじゃ」

「ならば、その呪詛返しを私にもしてください」

「それはできん。人間がやってはいけないことだ」

だが妃がまたしても多くの品を積むと、唐土じょもんは承諾した。呪詛は日本、唐土、天竺の潮境にあるとろくの島の呪詛の御社に封じられた。こうして、呪詛の連鎖は終わりを迎えた。

簡易版:現代風の「呪詛と復讐」

洋子は毎夜、丑の刻参りを欠かさなかった。夫である次郎は柔道の道場主の次男であり、冷遇される日々を送っていた。だが昨年、道場主である義兄の一彦の妻が病に倒れた。一彦は「治療費を出してくれれば道場を譲る」と言った。次郎はそれを信じ、大金を工面して義姉の治療費を負担した。しかし、その後に義兄夫婦に息子が生まれたことで、約束は反故にされた。

絶望した次郎は失踪し、洋子の心には怨念が渦巻いた。そんな中、呪いに詳しい仙人が現れ、彼女は自らの不幸を訴えた。そして代わりに甥を呪ってくれるよう頼んだ。

「いけないことだから……でも100万積むなら」

仙人は洋子の依頼を引き受け、甥は重病に倒れた。一彦は近隣の霊能者に助けを求めたが効果はなく、ついには仙人にたどり着いた。仙人は冷たく言い放つ。

「こりゃ洋子さんの呪いですよ。この子には罪はないから、100万円で呪いを解こう」

仙人は再び金を受け取り、呪いを取り払った。同じ頃、洋子自身に異変が生じた。仙人に相談すると「ああ、こりゃ呪い返しを食らったんだな」と言う。洋子はさらに金を積み、もう一度呪詛を依頼するが、仙人は呪いを適当に封じて姿を消した。

唐土じょもんによって呪詛が封じられた後、妃はなおも呪いの代償として苦しみ続けた。しかし、彼女の執念は完全に消え去ることはなかった。呪いを封じた御社があるとろくの島には、呪いの気配を感じ取る者たちが集まるようになった。妃の物語は長く語り継がれ、恐怖と教訓の象徴となったのだ。

一方で、唐土じょもんは呪いの封印後、消息を絶った。その名を知る者も次第に減り、やがて誰も彼の存在を口にしなくなった。ただ、呪詛が封じられた島を訪れる者たちは、そこで奇妙な現象を目にすることがあるという。

一方、洋子は仙人に見放されたあとも、義兄一家への恨みを抱き続けていた。呪い返しを受けた身体は次第に弱り、日々の生活も困難になる。しかし、彼女の怨念は消えなかった。洋子は最後の力を振り絞り、自力で呪詛を再びかけようとした。

しかし、その過程で彼女は気づく。呪詛を繰り返すたび、自分の心が徐々に侵食されていることを。体だけでなく、精神も崩れていくような感覚だった。それでも洋子は止まらない。義兄一家への復讐心だけが彼女の原動力だった。

ある夜、洋子の家に再び仙人が現れる。彼は言った。

「もうやめなさい。お前自身がこの呪いの最終的な犠牲者になるだけだ」

だが洋子はそれを聞き入れず、最後に一言を残して消えていった。

「ならば、私が犠牲になろうともかまわない。それが私の選んだ道だ」

その後、洋子がどうなったかは誰も知らない。ただ、一部の人々は語る。彼女の家には不思議な霧が立ち込め、近づくことができなくなったと。

[出典:811 :1/2:2007/12/09(日) 02:10:48 ID:Vtgz+6IP0]

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