呪詛(すそ)の祭文
811 :1/2:2007/12/09(日) 02:10:48 ID:Vtgz+6IP0
提婆王の妃は、激しい怨念を晴らすため、日夜、様々な呪法を試みていた。
そこに唐土じょもんが現れ、言う。
「お前の呪法は、人間が使ってはならぬものだ」
唐土じょもんは偉い人らしく、提婆王の妃は自分の身の上を打ち明ける。
曰く、自分の夫である提婆王は前の王である釈迦釈尊の弟である。
釈迦釈尊は王位にあった時、自分の嫁(王妃)が重病に倒れたことを嘆き、
世にも珍しい七十五の宝を集めることで重病平癒を祈ることにした。
そしてその七十五の宝を集めた者に、王位を譲ると。
夫である提婆王は見事にその大役を果たし、王位を得るはずだったのに、臣下の者が、
「本当に王妃の病が癒え、生まれた子が女だったら王位を譲るが、
もし男子が生まれ、7歳まで無事育ったら、その子に王位を継がせ、提婆王は行脚修行に出るというのはいかがか」という横槍を入れた。
釈迦釈尊はそれを受け入れた。
果たして、釈迦釈尊に息子の釈迦王が生まれ、すくすくと育った。
夫はマゲを落として無念のまま旅に出て行ってしまった。
そのため、今こうして甥である釈迦王に呪いをかけているという。
提婆王の妃は唐土じょもんに、呪いを成就させてくれと頼む。
呪いは人外の法であるとして拒んでいた唐土じょもんも、熱意にほだされ、たくさんの品物を積むならば、と承諾した。
見事、釈迦王は呪いが当たり、重病に患った。
釈迦王には八万四人の弟子がいたが誰の祈祷も役に立たず、
一番弟子のこうてい菩薩が占ったところ、唐土じょもんに聞くと良いという。
唐土じょもんは、「こりゃ提婆王の妃の呪いに当たったんじゃな」
父である釈迦釈尊は泣いて唐土じょもんに救いを請い、
唐土じょもんは提婆王の妃に要求したのと同じ品々を要求して、
「この子に罪はない、呪詛の一掃返しをしてやろう」
と言って呪いを払った。
すると呪詛返しによって提婆王の妃が重病になる。
提婆王の妃が唐土じょもんに訳を聞くと、
「こりゃ呪詛返しを食らったのじゃ」
「ならばその呪詛返しとやらを私にもしてください」
「ならん、人間がやってはいけんことだ」
「また、この前と同じ品々を積みます」
「おお、では」
ということで唐土じょもんは品々を受け取り、
日本、唐土、天竺の潮境にあるとろくの島の呪詛の御社に呪詛を封印した。
めでたしめでたし。
呪う呪う詐欺、酷すぎる。
仏教由来の名前とか、子供に数万の弟子とか、マゲを落とすとか、
日本、唐土、天竺の潮境とかはカオス過ぎてちょっと笑えるんだけど。
813 :呪詛の祭文:2007/12/09(日) 02:16:17 ID:Vtgz+6IP0
あんまりにグチャグチャしてるんで、簡易版も用意しました。
丑の刻参りが、洋子の日課だった。
夫の次郎は柔道の道場主の息子だが、次男坊であるがゆえに、雑用の冷や飯食らいだった。
だが昨年、今の道場主である義兄の一彦の嫁(義姉)が大病を患った。
一彦は「治療費を出してくれれば、道場を譲る」と言った。
夫はそれを信じ、大金を出し義姉は快復したのだが、
その後に待望の息子が生まれたとかで、道場を譲る話はフイになった。
夫は耐えかねて失踪した。
その日も丑の刻参りに精を出していると、仙人が通りかかった。
「こら、そんなの素人がやっちゃいかん」
洋子は呪いに詳しそうな仙人に自分の境遇を愚痴り、自分の代わりに呪ってくれと頼む。
「うーん、いけないことだから……でも100万積んでくれたら……」
洋子は100万を払い、呪いによって甥っ子は大病を患う。
弱った義兄の一彦は近所の霊能者なんかの助けを得て、
てんやわんやで呪いを放った仙人の下へたどり着く。
仙人は、
「こりゃ洋子さんの呪いですよ。この子に罪はないから、100万円でどうです」
仙人は100万を受け取り、呪いを取り除いた。
同じ頃、洋子の体調に異変が生じる。
仙人に助言を請うと、
「ああ、こりゃあマホカンタされたんだな」
「じゃあもう一度マホカンタしてください」
「駄目、マホカンタは人間がやっていいことじゃないの」
「100万出します」
「いいよ」
こんな問答をしておいて、仙人は呪いをホイミするだけで姿をくらました。
完