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■消えた妹の正体

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何度も傍らに姿を現していた少女は、私の記憶の隅にいつも佇んでいた。

知人の家には、『妹』がいた。

当人も家族も存在を否定するにもかかわらず、誰もが彼に妹がいると認識していた。
不可解な出来事に戸惑いながらも、「お兄ちゃん」と呼びかける少女の存在は、ある種の事実として周囲に受け入れられていたのだ。

一見するとごく普通の女の子だった。薄ピンクのTシャツに、デニムのスカート。癖のある髪をポニーテールにして、ときに知人に寄り添っては甘える。しかし、実在の人物ではなく、多くの記憶に刻まれた幻想的な存在なのかもしれない。

かつてローマ帝国時代には、「ラーレス(Lares)」と呼ばれる守護霊が家族を見守る習慣があった。ギリシア神話に登場するプロテウス(Proteus)のように、ラーレスは肉体を持たず、しばしば子供の姿をとって人々の前に現れたと伝えられている。

その日、彼は私にひとつの事実を告げた。

「同窓会であの娘の写真を見せられたんだ。みんなが俺の妹だと言うんだけど、俺には妹なんていないはずなんだ。」

彼の言葉に私は動揺を隠せなかった。私自身も過去に、あの少女と出会っていたのだ。確かに彼に似た顔立ちで、寒そうに見えた薄着姿が今でも目に焼き付いている。

「寒くないのかな」と心配したものの、普通の子供とは違う存在であることを直感的に感じ取っていた。だが、その正体については言及を避けた。

時は経ち、彼の一家が引っ越した後、「妹」の存在は完全に消え去ったという。
しかし、集合写真に写っていた少女の姿は、誰もが知る謎の存在だった。一体あの子は何者なのか。家族以外の多くの人間に認識されていた理由は何なのか。

「お兄ちゃん」と呼びかける声は、実在の人物ゆえに発せられたものなのだろうか。それとも、異界からの使者による、ある種の啓示なのだろうか。

後日談

あれから10年が経過した。
私は当時の資料を改めて精査し、ついに「妹」の正体に辿り着いた。

彼の家系には、遠い祖先から代々受け継がれてきた呪いがあった。
300年前、魔女狩りの犠牲となった女性から、復讐の念が宿ったのだ。
呪いは家系の長男の前に現れ、妹の姿をとって家族に近づく。目的は家族の絆を乱し、最後には男子を呪いの受け渡しの担い手とすることだった。

私は地元の歴史に詳しい学者に事情を打ち明け、古文書の中から当時の出来事を読み解いた。あの「妹」は、魔女の怨念が具現化した存在だったのだ。

時を経てついに真相が判明したが、次なる被害者は誰になるのだろうか。この恐ろしい因習を断ち切る方法は、今だ見つからないままだ。

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