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短編 洒落にならない怖い話

丑の刻参りの女

更新日:

去年の夏の話です。友人の柿崎の家の近くに少し大きめの神社があって、そこで数人集まって肝試しすることになりました。

229 : 2005/06/08(水) 23:18:53 ID:dLwCgVBB0

私と神社の地理に詳しい柿崎とで脅かし役をすることになり、夜中の一時過ぎぐらいに他のメンバーより先に神社に行き、脅かしポイントである林の中で待機してました。

柿崎と話をしながら、十五分くらい待っていると遠くのほうにチラチラと明かりが見えました。

お、きたきた、思う存分脅かしてやろうと思って気合を入れたのですが、明かりが近づいて来るにしたがって、おかしいことに気づきました。

友人らはペアを組んでで来るはずなのに、どう見てもその人影は一人なのです。

もしかしたら誰かが男気を見せてやろうと一人で来たのかと思ったのですが、段々と近づいてくる人影は髪の長い女性でした。

集まった友人の中に女性はいません。

その人はアキラシャツにスラックスかチノパンのような格好で、懐中電灯よりも小さいペンライトを持ってました。

私と柿崎はさすがに時間が時間ですから、不審に思い顔を見合わせましたが、こちらが姿を見せたら相手も驚くと思うので、そのまま息を潜めて隠れてました。

すると女性は私たちがいる場所から五、六メートル離れた場所まで来ると鞄からなにかを取り出して樹に打ち付け始めました。

何をしてるのかすぐにわかりました。

いわゆる丑の刻参りです。

丑の刻参りと言ったら、白装束の格好のイメージがあったので、まさかこの女性がそのために来たとは思いませんでした。

樹にわら人形を打ちつける乾いた音と、女性が発する呟きが静かな境内によく響きました。

死ね、カッ、死ね、カッ、死ね、カッ、死ね……

汗がにじみ出ました。

とんでもないものを見てしまったと。

そしてあることに気づきました。

このままでは何も知らない友人がここに来てしまいます。

私はあわてて携帯のメールを打ちました。

なるべくディスプレイの光が漏れないようにしながら、ただ三文字、来るな、とだけ打って送りました。

そして、すぐにこの場を離れたかった私は、柿崎にジェスチャーで逃げるぞ、と伝えました。

柿崎も頷いたので腰を浮かしかけたとき、私の携帯が鳴りました。

あまりのできごとにすっかり失念していたのです。

来るな、とメールが来たら何事かと電話するのはあたりまえです。

場違いな着メロの音がとても大きく聞こえました。

女性が驚いてこっちを振りむいたのを最後に、私と柿崎は、死に物狂いで走って逃げました。

何百メートルか走った頃に、ようやく後ろを振り向きましたが、追いかけてくる気配はありませんでした。

結局そのまま柿崎の家に行き、友人達と合流して事情を話しました。

最初は冗談だろうと思っていた友人らも、私と柿崎の必死の顔を見て本気だと理解してくれ、肝試しを中止することになりました。

しかし、せっかくのイベントが中止になって、気持ちを持て余している雰囲気はどうしても感じられ、友人の一人が、夜が明けたら、もう一回神社に行ってわら人形を見てみよう、と言い出しました。

私と柿崎以外の友人はすぐさまそれに賛同しました。

私と柿崎もかなり渋りましたが、友人らの勢いに押されたのと、夜が明けてから多人数で、ということで結局了解しました。

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朝日が顔をだし、外が明るくなりはじめたころに私達は柿崎の家をでて、例の神社に向かいました。

私は数時間前の恐怖が忘れられず、腰が引け気味でしたが、身で体験してない友人達はずんずんと境内に入っていきます。

そして私は友人達に促されるまま、女性が釘を打ち付けていた樹に案内しました。

すると、どうでしょうか、たしかに樹に釘が刺さった穴が開いてるのですが、人形などはまったくありませんでした。

私と柿崎に見られたことで持ち帰ったのでしょうか。

それとも神社の人が片付けたのかもしれません。

拍子抜けの結果に、友人達は不服の声をあげましたが、私はほっとしていました。

その時です。

柿崎の顔色がおかしいのに気づきました。

真っ青な顔で一点を見つめています。

私達は自然とその視線の先を見ました。

その場所から見える神社脇の道路に、車が一台止まっており、その窓からあの女性が私たちのことをじっと見ていたのです。

私は悲鳴にならない声をあげ、友人達になんとか声を絞り出して、あの人、あの人、と言いました。

誰もがその場で固まってしまいました。

するとその車は動き出して、そのまま走り去ってしまいました。

私達が逃げ帰ったのは言うまでもありません。

これでこの話は終わりです。

あれからあの女性を見たことはありません。

でも未だに夢にみます。

夢の中でふと気づくと、女性が私を見つめているのです。

女性が私達を見ていると気づいたときの、あの恐怖は忘れられません。

(了)

 

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