これから書く話は、僕が二十五年間つきあっていた友達の話です。
彼は映画『シックス・センス』を地でいく人でした。
死んでいる人、いわゆる霊が見える人です。他にもちょっと変わったやつでしたが……
そんな彼も、去年病気で死んでしまいました。
彼が死ぬ前の日、夜に電話をかけてきて、『明日必ずきてくれないか』と言いだしたのです。
僕もちょうど暇だったけど、今日彼を見舞いに行って来たばっかりだったので、
「何だよ、今日会ったばっかりじゃないか」と言うと、
『明日はどうしてもきてほしいんだ』と何度も頼むので、
「わかった。会社が終わったらすぐいくから」と返事をし、彼も安心したようでした。
次の日、彼を見舞いにいくととても喜んでくれて、あのときは怖かったよなとか、馬鹿みたいな事もしたよねって、昔話ばかりしていました。
彼とは小学校時代からの付き合いで、クラスも別だったけど、初めて会ったとき「よぉ!」って彼がいきなり声をかけてきて、それにつられるように僕も「おお!」と返事をしたのを覚えています。
初めて会ったのに昔からの友達。そんな感覚だったのを覚えています。
そんな思いに耽っていると、彼が「俺、明日死ぬんだ」と言い出しました。
僕は「なに言ってんだよ。縁起でもない」と言うと、彼は、
「前から三十歳くらいで死ぬことはわかってたけど、やっとはっきりわかったんだ」
とても冗談とは思えない感じでした。
「馬鹿なこといってんなよ」と言うと、「大丈夫。君とはまた会えるから」と言い出しました。
彼の話によると、今彼と出う前、つまり前世からの付き合いで、互いにいつも親友としてつきあって、それは気の遠くなるような昔から何代も何代も続いているそうです。
僕も何となくそんな気になって、「ふーん、そうなんだ」と相づちを打つと、彼はいきなり笑い始めました。
ほんとに楽しそうに……
ちょっとムッときて、「何で笑うんだよ」と言うと、「君はいっつもそう言うんだよな」と言います。
彼にははっきりと前世の記憶があるようで、(もっとも二、三世代前くらいまでと言ってましたが)いつも彼が死ぬ間際に今みたいな事を話すと、僕は決まって「ふーん、そうなんだ」と言い出すそうで、それがいつもおかしいと言います。
また、彼には僕という存在がとても大事だとも言いました。
この世で正気を保つのに、僕の存在が必要だと言うのです。
彼は毎回物心が付くような頃から霊が見え始め、それらから話しかけられたり、ちょっかいをいろいろかけられて気が狂いそうになると、僕と会うそうです。
すると、今まで毎日と言うより一分ごとに見えていた霊やその他の物が減りだして、少なくても月一位の間で減るそうです。
「君は全く霊という存在を感じないだろ。って言うより、霊をはじいてるような感じだよ。それが俺にも作用してきて、あまり見なくなるんだよ。また今度会ったらよろしく頼むよ」
僕は「もう面会時間もとっくに過ぎてる!」って怒りにきた看護婦さんに、つまみ出されるように病院をあとにしました。
次の日の明け方、電話がかかってきて彼が死んだのを知りました。
でも、あまり悲しさを感じません。
なぜなら彼が別れ際に、
「僕は死ぬけど、今回はすぐに会えるそうだよ。それも君の血縁になってると思う。君の孫あたりになるんじゃないかな?今回は君もすぐ僕だって事がわかるよ」
と言っていたのです。
私は彼にまた会える日を楽しみにしています。
2003/06/07 01:09
(了)