短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

マイルドセブン【ゆっくり朗読】3163

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イベント関連の仕事で千葉のホテルに一週間ほど滞在しました。

普通のビジネスホテルで、滞在してニ日目の夜、タバコが切れたので、階に設置されてる自販機で買おうと部屋を出ました。

自販機の所まで来たのはよかったのですが、小銭がないことに気づき、フロントまで行って両替してもらおうかどうか考えていました。

通りかかったホテルの従業員に「何かお困りですか?」と話しかけられ、小銭がないことを話しました。

すると後ほどお部屋にお持ちしますので、お部屋でおまちくださいと言われました。

私は部屋番号と、タバコの銘柄を告げ、代金は部屋の料金に加算してくれるというので、そのまま戻りました。

部屋で一時間くらい待ったでしょうか……忘れたのかな?という思いと、夜も遅かったので寝てしまうか、とその日はそのまま寝ました。

翌朝、タバコは外で買えばいいので、さほど気にせず外出。ホテルの部屋に夕方くらいに戻り部屋に入り、しばらくして、あるものに気づきました。

机の上にタバコが置かれていました。

私はマイルドセブン(現メビウス)を吸っていて、置かれていたタバコもマイルドセブンなんですが……そのタバコが……古いんです。

私が小学生の頃、父親もマイルドセブンを吸っていたため、良く覚えていますが1980年代のパッケージのマイルドセブンが置かれていたんです。

mildseven

怖いというより薄気味悪く、すぐにフロントに電話をしたら従業員の方が三人ほど駆けつけてくれ、経緯を話しました。

話している内に、従業員が深夜にお客様が泊まる階をうろつくような事は基本的にないと言われ、まず持ち物など無くなっていないか確認して欲しいと言われたので確認し、特に異常がないと話しました。

それと部外者がイタズラで侵入した可能性などを考え、安全のため他の部屋を用意すると告げられ、泊まっていた部屋より四部屋ほど奥の部屋に移動しました。

置かれていたタバコを渡し、念のため警察にも連絡して調べるとの事で、後味が悪いながらもとりあえず考えないようにしました。

その後数日は何もなかったのですが、宿泊予定最終日の深夜、私が寝ていると、ドアを叩く音が聞こえました。

寝ぼけているかと思ったのですが、だんだん音が大きくなり、深夜に何事かとドアに近づくと音がやみ、覗き穴から外を見たのですが、誰もいません。

さすがにドア開けるのは怖かったので、恐る恐るベッドに戻りましたが、またドアがドンドン叩かれ、めちゃくちゃ怖いのでフロントに電話をしたら音がやみ、従業員が駆けつけてくれました。

外から声をかけられ、恐る恐るドアを開けると、表情がすぐれない従業員が一人立っていました。

その時に外側のドア部分を見たら、炭のような黒い汚れで手形が何か所もついていました。

ものすごく怖くなって、ホテルがまた部屋を用意するというのを振り切り、漫画喫茶に避難。

結局その後何も私の周りには起きてないので、あれは何だったのか今でもわからないです……

(了)

疫神と福神 [ 大島建彦 ]

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