夜中に友達の運転で山道ドライブしてたら、道の端に白いもんが見えた。
友達も「なんだあれ?」って言いながら、ちょっと先で車止めたわけ。振り返って見たら、白い服着た女がいた。裸足で、服も髪もぐちゃぐちゃ。明らかに普通じゃなかった。
「やばい、やばい!」って俺は友達に「早く車出せ」って言ったんだけど、友達はバックミラー見て動かない。女はフラフラとこっちに近づいてくる。やっぱり幽霊じゃね?薄っすら後ろの景色が透けてるんだよ。友達は急に車降りて走り出した。何してんのかと思ったら、その女抱えて戻ってきた。
「やっぱり人間か?」と思ったけど、やっぱ透けてるんだよな。友達の手が女の背中越しに見えるんだ。その先のことは怖すぎて覚えてない。女を車に入れた時、ガソリンの匂いがしたことだけ覚えてる。
結果的に、その女は生きてる人間だった。麓に降りてから救急車と警察呼んで、朝まで事情聴取で大変だった。女性はショックで声が出なくなってた。
ファミレスで一息ついて、友達に「女が透けて見えた」って話したら、友達も同じだった。「幽霊だと思わなかったのか?」って聞いたら、「幽霊見たことないから、今日に限ってあんなにハッキリ見えるわけない」って言うんだ。でも透けてる生きてる人間も見たことないだろ?って言ったら、友達は「暗かったから光の加減だと思った。車に乗せた時もちょっと透けてたけど」って言ったんだ。
友達曰く、「人は辛いことやショックなことがあると、存在が薄くなるんじゃないか」ってさ。あの夜、山道で出会った透ける女の姿は、今でも頭から離れない。