121 :怖いお話ネット:2024/06/08(土) 14:45 ID:87fd69h
ある日、俺の飼っているミイ(アメリカンショートヘア)が突然姿を消した。ミイは先天的なてんかんを持った猫で、時折痙攣や異常なジャンプを繰り返し、壁に激突することもあった。だから、ミイを外に出すことはなく、台所の小窓から外を眺めるのが日課だった。
そのけさ未明、台所の方から「ギャッ!」というミイの悲鳴が聞こえた。慌てて駆けつけると、網戸が上に開いていた。ミイが自分で網戸を開けるとは考えにくい。外部から何者かによって引きずり出されたとしか思えなかった。純血種を狙った猫さらいがいることは薄々知っていたが、まさか家猫を狙うとは。
心配で心が押しつぶされそうだった。家族と手分けして町中を探し回ったが、何の手がかりも得られなかった。その夜、眠れぬまま朝を迎えた。
翌日の昼過ぎ、なんとミイがひょっこりと家に帰ってきた。汚れてはいたが、大きな怪我もなく無事だった。俺は安堵のあまり涙が出そうになった。
しかし、ミイの帰還と共に奇妙な話が広まり始めた。ミイが姿を消した日、近くの川で一体の遺体が発見されたというのだ。その男は以前から町内で猫をさらうという噂があった人物だった。だが、捕まることなくその悪事を続けていた。
遺体は膨れ上がり、見るも無惨な姿だったが、特に奇妙だったのは全身に無数のひっかき傷があったことだ。警察はその傷を調べた結果、猫の爪によるものだと断定した。俺のミイも、その日大きな戦いを経験したのかもしれない。奴はどこかに連れ去られたが、自力で逃げ出し、その男と壮絶な戦いを繰り広げたのだろう。そして男は川に落ち、命を落とした。
この事件を通じて、町中の人々は恐怖と安堵を同時に味わった。猫をさらう常習犯が消えたことに対しては、当然の報いだと感じる一方で、あの川で何が起きたのか、誰もが知りたくない真実を感じ取っていた。
ミイがさらわれたその日、俺の心は絶望で満たされていた。しかし、まもなくして猫は帰ってきた。やはり、あいつはただの猫ではなかったのかもしれない。恐怖とともに、この謎めいた出来事が心に深く刻まれることとなった。