短編 山にまつわる怖い話 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

山で出会った白い人【ゆっくり朗読】2700

更新日:

Sponsord Link

小学校のころ、母親の実家に遊びに行った時のこと。

そこは田んぼが延々と続いてる場所を抜けて、山の中にある典型的な田舎。

周囲の野山が祖母家の土地みたいな感じなので、いつも遊びにいくとその辺で遊んでた。

その日も母親と兄弟といっしょに遊びに行って、自分はひとりで裏の田んぼと小川(あぜ道にある堰みたいな)に遊びに出た。

いつもは時々様子を見に来る母親とか祖母が迎えに来るまで近くで遊ぶんだけど、その日はちょっと遠くまで行ってみようと思って山のほうに行った。

山の上には寺があるのを知ってたので、頂点は避けてぶらぶら脇道を上る。

すると、石段と土が混じった道の上に、なにか動物がいることに気が付いた。

びっくりして足を止めて伺うと、それは犬だった。毛がつるっとした大きな犬。

自分は犬が大の苦手で、正体がわかると恐怖のあまり動けなくなってしまった。

道の真ん中で、涎を垂らし舌をだして短く息を吐いてる犬がぐるぐるとまわっている。

怖かった。本当に怖かった。すごく怖かった。

動くと噛まれる、と思うと逃げられない。

足がすくんで動けずにじっとしていたんだけど、その内あることに気が付いた。

犬はこちらに気が付いてるのに、近寄って来ないのだ。

逃げられるかも、と思ってそろそろと下がろうとしたら、後ろになにか気配がする。

ぎょっとして思わず振り返ったら、知らない男の人がぬっと立っていた。

どこから来た、足音がしなかった、誰だこいつは、と色んなことに仰天して、パニックになり泣きそうになったら、その人はにこっと笑って「ゆうちゃんか」と聞く。

一瞬知り合いなのかと思ったけど、警戒して黙って様子を伺った。

やっぱり見覚えがない。

年のころはよくわからなかったけど、ずいぶん色の白い人だと思った。

手ぶらで、服装は白いシャツかなにかだったような気がする。よく覚えてない。

男の人は応えない自分にも気を悪くしたような様子もなく、にこにこしている。

その時また犬の事を思い出して、パッとまた正面を向いたら、犬はまだいる。

どうしていいのかわからなくなって半べそをかいたら、「おっかないのか」と、さらに男の人の声が降ってくる。

頷いて、後ろを見上げると、その人は犬を睨んでいた。

そして何だかよくわからないこと(多分犬に対する罵り言葉)を呟くと、「こっちさおいで」と自分の肩をやんわり押して歩くように促された。

犬が気になって歩きながら振り向くと、犬は同じところをぐるぐる回っていた。

何度か振り向いたけど、同じところをずっと、ぐるぐるぐるぐる、回っていた。

助けてもらったせいもあって、男の人に対する警戒は大分薄らいだ。

家まで送ってくれるというので、ついていくことにした。

いい人そうに見えたのと、「おがたなー」(大きくなったね)と言われたので、自分が知らないだけで、近所の人かもしれないと思ったのだった。

それでもちょっとは怖い気もしたのだけれど、体に触ってくるわけでもないし、しかもその人は、自分の学校の事や、家の様子なんかを聞いてきて、他愛のない話でも嬉しそうに聞いてくれたので、まんざら悪い気分でもなかった。

しかし、連れだって歩くうちにふと見覚えのない道を歩いていることに気が付いた。

自分は一本道をまっすぐ登って山に入って横道に入ったので、一回まがって下るだけでいいはず。

でも、山を下る時も、そのあとも道を曲がらず、いつの間にか全然知らない道を歩いている。

いつものあぜ道も田んぼも見えない。木陰のある山道ばかり。

「こっちでいいの?」と聞いたら、「いいんだよ」と言う。

不安になってあちこちを見ると、白やピンクの花が咲いている。夏なのに変だなと思った。

花の事を言うと、「ゆうちゃんはどの花が好きなのや?」と言われたので、「はなもも」と答えた。

小学校のクラスのテーマの植物で、世話をしたことがあったからね。

すると男の人は、「はなももはないがなー」と朗らかに笑っている。

そして、しばらく歩くと男の人は立ち止まって、「着いたよ」と道の前を指さした。

木立の蔭が途切れて、土が切れた向こうに、日に照らされたアスファルトが見えた。

手を振る男の人に礼を言って別れると、そこは家の裏の道だった。

そのあと家に戻って、母親と祖母にこれこれこういう人がいたという話をしたら、心当たりがないらしい。

近所にも親戚にもそんな人はいない、なんだろうってことになって、その後、しばらくそこでは危ないかもしれないからと、一人で出歩くことに制限が付いてしまった。

その男の人は、自分やうちの家族の事を知っているような口ぶりだったので不思議だった。

加えて、その後別の機会に連れだって歩いた道を探したんだけど、同じような道が見つからなくて、今見ても、山道から家の裏に出る道もないんだよね。

これはうろ覚えだから勘違いなのかもしれないけど。

だらだら書いた割に、要は知らない人に会って助けてもらったって、それだけなんだけど、その後同じ人に会わなかったのと、夏なのに花が咲いてたのが印象的で、ふと思い出したので投下。

お粗末ですみません。

188 :本当にあった怖い名無し:2015/03/30(月) 13:52:05.69 ID:PKm9ONEy0.net
思い出されるのが供養になる感じの、なんかいいお話。お疲れ様~

189 :本当にあった怖い名無し:2015/03/30(月) 14:47:11.98 ID:SuJRdWpo0.net
>>188
供養……やっぱり幽霊だったんだろうか。
でも自分、霊感とかないし、超常現象みたこともないのだよね。
人間ぽかったしなー、うーん、謎。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1425021857/]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 山にまつわる怖い話, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.