今から数年前、新卒で就職した会社から転職をしたときの話。
986: 本当にあった怖い名無し 2015/06/03(水) 20:15:31.27 ID:yyl5H+Hn0.net
新しく働くことになったA社は、社長の親戚が経営するB社と仲がよかった。
行事やイベントのときはAB社合同で行っていて、そのときに会ったのがB社に最近転職してきた華子(仮名)だった。
私と華子は出社時期も一緒、しかも名前もほぼ一緒。
華子は鈴木華子(すずきはなこ)
私は鈴木花子(すずきはなこ)
……みたいな感じで読み方は同じ。他にもびっくりするほど同じことが多い。
- 血液型同じ、同学年、しかも誕生日が一日違い
- 出身県同じ、生まれ育った地域もかなり近い(マイナーな地区なのに)
さらには、現在住んでいる最寄駅も同じだった。位置は正反対だけど、駅から徒歩五分は一致。お互いに背中を向けて同じくらいの距離を歩く感じ。
ここまで同じ人は珍しく、すぐに意気投合。
ちなみに見た目は、どうひいきめにみても華子の方が上です……
同学年で出身地が近いし現住所も近い、さらには転職したばかりとあって華子と意気投合。お互いの最寄駅で食事をすることになった。
驚くほどに気が合って、お互いに不思議な感じに。
とにかく華子と会って話をするのが楽しくて仕方がなかった。
それは華子も同じらしく、向こうから食事に誘ってきてくれた。
気付けば出会ってから十日で三回は個人的に会っていたほど。
三回目の食事……実質最後に会ったときの会話。
華子の家の最寄コンビニCの××っていうスイーツがおいしい!とおすすめしてきた。
お返しにというのは変だけど、私の家の最寄コンビニDの××っていうおつまみがおいしいとおすすめ。
お互いの住居から考えると、お互いの最寄コンビニが近いことになる。
偶然会ったらよろしくね~なんて言いあって、その話題は終了した。
ちなみに季節は冬。
最後に会ってから二日後の深夜二時くらいのこと。
私は華子がおすすめしていたコンビニCのスイーツが無性に食べたくなった。
とっても寒い日の夜だったので、いつもならば絶対に行かない。
でも本当に食べたくて食べたくて仕方がなかった。
『ここから駅まで五分、さらにコンビニCまで五分か……こんな寒い日に徒歩十分か~でも……ものすごく食べたい!』
と二十分くらいは葛藤していたと思う。
深夜二時半くらい、いきなりチャイムが鳴った。
ビクッとしながら室内のモニターを見ると華子の姿。
華子はラフな部屋着で下をうつむいている。
華子どうしたんだろう?と思ったけど、そもそも詳細な住所を教えていなかったことに気づく。
大まかな位置は言ってるけど、マンション名や部屋の番号は言っていない。
ポストに苗字も出していない。
違和感はあったけど、華子を無視することもできないのでドアを開けることにした。
モニター越しに声をかけたけど、華子は無言。
そしてドアを開けると、華子はとびかかってきた。
玄関先に私は倒れる。
寒くて冷たくなった手で思い切り私の首を締めながら、
「あんたがこうなるはずだった!」「許せない!」「返せ!早く返せ!!」
と言いながら震える手でグッと力をこめてくる。
良く見ると華子の顔は真っ青で、目は片目だけが真っ赤に充血している。
苦しさと驚きが一気に押し寄せてきて、逆に冷静になってしまった。
このまま死ぬのかなーと感じ、自然と目を閉じた。
すると急に首周りから華子の手の感触が消え、馬乗りにされているときの体重も感じなくなり、目を開けると華子はいなかった。
心配になりエレベーターや非常階段付近を見回したけど、華子はいない。
人の気配もない。
私は部屋に戻って華子の携帯を鳴らしてみた。
呼び出し音だけで出ない。
とりあえずメールで『どうしたの?私、何か悪いことをしたら謝るよ』と連絡したが返信なし。
その晩は華子の冷たい手の感覚が取れず、まったく眠れなかった。
ちなみにこれは土曜夜の話。
日曜になって連絡をしたら圏外になっていて、メールの返信も相変わらずなかった。
そして月曜日に出社したとき、朝礼で社長から衝撃的な話を聞く。
『B社の鈴木華子さんが土曜日深夜、交通事故で亡くなりました』と。
頭の中が真っ白になり、腰から身体が沈んで行くような感覚になる。
そのまま私は倒れてしまったらしい。
意識が戻ったのは会議室。
倒れて意識が朦朧としていたが、そばにいた社長に詳しい話を聞く。
事故に遭ったのは土曜日の深夜二時半ごろ。
場所は……と説明されると、コンビニDの近く。
私がコンビニCのスイーツを食べたくて仕方がなかったとき、華子もコンビニDのおつまみが食べたかったのではないか。
私はぐずぐずしていて出るのが遅れたけど、華子は私よりも早く出て事故に遭ったのでは……と。
考えすぎかもしれないが、本当は私が死ぬ運命だった。
でも華子がその運命を被ってしまった。
だから「(私の人生を)返せ!」と最期に私の前に現われたのではないか、と。
葬儀関係は身内で済ませるとのこと。
倒れてしまった私の顔は真っ青だったらしく、気分が落ち着いたらそのまま早退して構わないと言われたので、花を買って事故現場までいってみた。
そこにはたくさんの花が置いてあった。コンビニDのすぐ近くだ。
花を置いて手をあわせる。
涙が溢れ、頭がくらくらしてくる。もしかして自分のせいで……といった気持ちになり、その場で泣き崩れてしまった。
何度も「華子、ごめんね」と言った。
その日の夕方、電話がかかってきた。
発信主は通知不可能。こんなのは初めてだったし、いつもなら無視するんだけど、そのときは何も考えずに出てしまった。
すると向こうは超早口の、声が高めのおばさん。
正直、何を言っているのか分からなかったけど、一方的にこんなことを言っていた。
- あなたは気にする必要なんてないの(強調するように何度も言っていた)
- あの子も反省しているの、混乱していただけなの
- ときには思い出して、いつでも見守っている
といった内容。
どこの誰なのかを聞いても無視。
とにかく言いたいことを一方的に話されて、電話は切れた。
電話の不思議さや怖さよりも、華子のことなのだろう……と悟り号泣した。
あれから数年が経過した。
私は夫と知り合い、猛アプローチをされ、そのまま結婚。なんで私を選んだのか分からないほどの相手。
そして夫の仕事の都合でA社を退職し、妊娠が判明。
刺激はないけれど穏やかで幸せな日々を送っている。
今でもこれは華子の人生だったのでは……と思ってしまうときもある。
私の運命と入れ替わったのでは……?と。
なぜこれを書き込んだのかと言うと、子供が女の子だと分かり、そのときに夫が候補としてもってきた名前が「華(仮)」のつくものだったから。
二週間弱くらいのお付き合いだったけれど、華子は大切な友だちだった。
やはり私と華子の人生はどこかで繋がっていたのかもしれない。
名前はゆっくり考えていこうと思う。
(了)
[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1429018865/l50]