俺がまだ小学生の頃、四家族(二十人くらい)で河原へキャンプにいったときの話。
910: 本当にあった怖い名無し:2011/06/12(日) 22:45:36.56 ID:M7t/4hXxO
真夏とは言え河原遊びしてれば涼しくなり、バーベキューやら何やらして楽しく過ごしているうちにすっかり暗くなった。
夏の夜と言えば恒例の怪談が始まり、大人も子供も混じって笑ったり怖がったり、小学生の俺は肝冷やしまくりながら話を聞いていた。
夜もふけて来た頃、今までニコニコしながら聞いていた老沼さんがぽつりと話始めた。
怖いけど考えさせられる話、タイトルはそうだね~《言葉の力》ってところかなぁ。
ある中学に、クラスのリーダー格のいじめっこ押切と、目立たないいじめられっこ榎本ってのが居た。
オタク気持ち悪い、と言うだけで押切の標的になった榎本。
最初は押切と仲の良い数人での小学生並のイタズラ。
消しゴムちぎって投げたり上履き隠したりする程度だった。
ある日、押切たちのいじめにキレた榎本が押切を殴った。
しかしこれがマズかった。よろけた押切が女子にぶつかり転けた。
押切と女子の二人共手の骨を骨折。
この件から榎本は完全に孤立。イジメはヒートアップしていく地獄の日々が始まった。
肉体的にも精神的にも暴力、恐喝ありとあらゆるイジメを受けた。
榎本は人間の一番醜い部分を見た。
榎本は次第にやつれていく。
と言うより生気が抜けてきていた。半月程たったある日の授業中、いつものごとく後ろから何か飛んできたり、机の下から蹴られたりしていた。
榎本は突然立ち上がり奇声を上げこう言った。
「貴様等呪ってやるぅうぅぅヴ〇〆》~´;〇〃!!!」
とそのまま教室から出て行った。
クラス内は爆笑、誰も榎本の言葉をまともに受け止め無かった。
しかしその夜から異変が起こった。
押切は夢を見た。無数に道がある、その道を進む先が繋がって広場のようになってる。
そこに見覚えのある誰かがたっている。
そこで目が覚めた。
押切は変な夢、程度に考えてたがきにしなかった。いつもの学校。違うのは榎本が来てない位だった。
休み時間にクラスの数人が集まって夢の話をしているのが聞こえてくる。
「いっぱい道があって広場に誰か立ってるだけなんだよね~」
押切はちょっとビックリした。話を聞くとクラスで数人同じ夢を見たらしい。
なんだか気持ち悪いね~とか、俺達繋がってる?とか軽い気持ちで居た。
押切はその日も夢を見た。昨日と同じ夢。いやちょっと違う。
広場に立ってる「誰か」が榎本だったのが解る。
起きた押切はなんだか気持ち悪いなぁと学校へ行った。そして学校で夢の話をすると、同じ夢をみた人が居る。しかも昨日より増えてる変だ。
クラス中でも話題になり始め「榎本の呪いだ」と言い始める奴も出始めた。
押切は「んなわけねぇよ榎本なら夢の中だろうとボコボコにしてやんよ」と余裕ぶってみた。
しかし一週間経ってクラスの半数が同じ夢を見るようになった。
夢の中の榎本は徐々に近くに来ている。
さすがに気持ち悪くなった押切は数人の有志と共に榎本の自宅へ電話した。
電話に出たのは榎本の母親だった。
「押切と申しますが、榎本君最近学校来てないですけど具合でも悪いんですか?」
取り巻きが後ろでクスクス笑ってる。
「あぁ、あなたが押切君。榎本が仲良くして貰ってる見たいでありがとうね、あなたの話題ばかりよ。あなたなら言ってもいいかしら」
「えっ?何かあったんですか?」
気持ち悪かった。榎本は親に何と言っていたのか気になったが話を聞いた。
どうも一週間前から帰ってきてないらしく、捜索願いも出しているが見つからない。学校の友達に心配させないように行方不明なのを学校には伏せて貰っている……という事だ。
電話をかけた夜、押切は夢を見た。
遂に榎本が目の前に居る。何時もならこの辺で目が覚めるはずだったが様子が違う。
夢の中の榎本はゆっくり押切の首に手をかける。ギリギリ首が締まり苦しくなってくる。
夢の中なのに苦しい、体は動かない。
夢なら覚めろ夢なら覚めろ夢なら覚めろ夢なら……
意識が無くなった所で目が覚めた。
異常な夢と寝汗にビビったが「夢か」と安心した。
顔を洗いに洗面所へ行こうとした時、母親が変な事を言う。
「首……あざ?」
血の気か引くのが解る。鏡で確認するとうっすら首にアザがある。
胃からこみ上げる物を感じたが朝飯を詰め込み学校へ。
学校へ着きホームルームが終わると、全校集会が有るという事だった。
集会の内容は榎本が近くの山で自殺しているのが見つかった。
集会も終わりクラスに戻ると榎本の話題で持ちきりに。
ただ泣いてる奴、謝る奴、笑う奴……
押切がボソッと夢の話をした。
「俺、夢の中で榎本に首絞められた。みんなは?」
榎本を直接いじめた数人だけが首を絞められた人が居て、他の人の夢は有り得ない程首をガクガクさせ、涙涎鼻水を垂れ流しながら笑う榎本が居たという物だった。
遂にクラスは阿鼻叫喚と表現出来る状態になった。
先生が今日は榎本の葬式が有るので帰って準備をしなさい、榎本の親からクラスのみんなに来てほしいとの事。
そして夕方みんなで集まり誰もがビビっていた。
夢の話、遺書があってそこに名前がかかれてて、それを読んだ榎本の親に何かされるのではないか、そんな話をひそひそしながら葬式会場へ。
葬式会場で榎本の親は憔悴しきっている様子だった。
榎本の親は来てくれてありがとうねと涙を流しながら一人一人クラスの人に言って回っていた。正直押切は拍子抜けしていた。
しかし何かおかしい。
たまに小さくビクッとなる奴やヒッと声を出す奴がいる。
押切の前に榎本の親が来た。
泣きながらありがとうと感謝の言葉。
隣の奴に移る瞬間、榎本の親と目があった。
「見つけた」
囁きが聞こえた。
血の気が引きビクッと反応する。焦るとかそんなレベルじゃない。
しかしその後何もなくは普通に葬儀が進み、喪主の挨拶に。
「皆さん来ていただいてありがとう御座います。息子もよろこ……」
ここで語り部の老沼さんが話を止た。
集まってる家族の後ろに目線が移り、
「あ」
と一言。
全員が老沼さんの目線を追う。
振り返った人たちから「ヒッ」と声が漏れた所で
パシーン!……
老沼さんの方から綺麗に手を叩く音。
「話はここでおしまい」
拍子抜けだったが老沼さんは続けてこう言った。
「どうだった?俺の『あ』っていう一文字の言葉で、みんなが振り返って体をビックリさせたりする事が出来た。これが言葉の力だよ。まぁ色々前提が有ったから出来たけど、みんなも言葉は気を付けて使ってね」
と子ども達を諭すように言った。
話が終わり、老沼さん「はい拍手~(笑)」
場の空気がふと明るくなった。
そして解散、就寝。
でも一つ気になることがあった。
解散した後、老沼さんの表情が一瞬暗くなったというか、目が笑ってないと言うか……
(了)
闇の検証(第4巻)江戸・東京都市伝説 霊能者・寺尾玲子の新都市伝説