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田和山遺跡の謎 r+1319

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これは、島根県松江市にある田和山遺跡にまつわる奇妙な話だ。

1997年、市立病院の移転候補地として選ばれた田和山丘陵。その調査中、頂上を囲むように掘られた三重の環濠が発見された。これがただの遺跡ではないと、調査員たちはすぐに気付いた。遺跡保存を求める声が高まる一方、市側は開発の必要性を主張し、争いは裁判にまで発展する。その中で、奇妙な出来事が次々と起きた。

まず最初に亡くなったのは市長だった。ある朝、自宅で倒れたまま冷たくなっているところを家族が発見した。享年67歳。特に持病があったわけでもなく、前日まで元気に会議をこなしていたという。次に命を落としたのは、開発推進派の市議三人だ。彼らはそれぞれ別々の場所で突然の心臓発作に襲われた。一人は車を運転中、一人は自宅の庭で草むしり中、そしてもう一人は宴席の最中に倒れた。最後に建設会社の会長が亡くなった。これもまた突然だった。

5人全員が高齢ではあったが、いずれも健康に問題がないと言われていた。これだけの不幸がわずか2ヶ月の間に集中したことから、地元では「田和山の祟り」とささやかれるようになる。週刊誌やテレビもこの話題を取り上げ、遺跡の謎は全国的に注目されることとなった。

裁判が続く中で、遺跡の考古学的調査も並行して進められた。その結果、この地が極めて特異な性質を持つ遺跡であることが明らかになった。三重の環濠に囲まれた狭い頂上には、高床式の建物跡が発見された。その構造は出雲大社の原型とも言われる。しかし、ここは日常的に人が住む場所ではないことも分かってきた。竪穴式住居の跡は環濠の外に集中しており、頂上部分は何か特別な目的で使われていたと考えられる。

さらに、丘陵部分からは三千個以上の石つぶてや銅剣型の石剣が出土した。だが、石つぶてには使用の痕跡がなく、石剣もすぐに折れてしまうような作りだった。これらは儀式用のものだと推測された。そして、「宗教的な模擬戦闘の場」「重要なものを守るための施設」「古代の貴人の産屋」など、様々な説が議論されることとなる。

一方で、地元には古くから伝わる奇妙な伝承がある。「垣に守られた山には入ってはならない。たちまちに死ぬ」というものだ。この伝承と、今回の一連の急死事件が重ね合わされ、田和山は次第に恐怖の象徴となっていった。

やがて市側も方針を転換し、田和山遺跡は保存されることが決定された。しかし、そこで発掘作業を担当していた大学の調査員たちの間でも異変が囁かれるようになる。作業中に奇妙な感覚に襲われる者が続出したのだ。「誰かに見られているような気がする」「背後から冷たい風が吹いてくる」「耳元で低い声が聞こえる」など、説明のつかない現象が報告された。

ある日、一人の調査員が遺跡の中心部で意識を失った。仲間たちが駆け寄ったとき、彼は苦しげに何かを呟いていた。「あれを戻せ…そこに置くな…」と。その手には、出土したばかりの石剣が握られていたという。

それ以来、調査は縮小され、慎重な手法が取られるようになった。そして現在、田和山遺跡は訪れる人々に開放されているが、丘陵の頂上部分だけは立ち入りが制限されている。理由は「安全管理のため」とされているが、地元住民の間ではあの伝承が語り継がれている。

垣に守られた山には、いまだに何かが眠っているのかもしれない。誰もその正体を知ることはできないが、ひとつだけ確かなのは、その山を穢した者には決して安らぎが訪れないということだ。

(了)

[出典:303 :本当にあった怖い名無し:2013/09/21(土) 02:13:11.06 ID:36jc2Kqt0]

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